「梨紗さん……」

「ひなた……貴女が表に出ているということは……」

「はい。千景さんは休息に入りました。」

「そう……」

「あの……フェイト（英華）さんは……」

「さっき、千景にも言ったけど、一命は取り留めたわ。ただ、デスガンが技を叩き込む時に注入した『毒』の詳細を分析しない限り、予断は許されないみたい……」

千景は自分と交代して休息に入ったことを報告した後、フェイトの容体について、そう尋ねてくるひなたに対し、梨紗は真剣な表情でそう答える。

「そうですか……」

「あぁ、梨紗さん。ここにいたのね。」

「？隣にいる子は誰かな？」

「ネフィーネさん。スカリエッティさん……」

そんななか、梨紗に気を遣って退室したネフィーネとスカリエッティがそう言いながらその場に現れる。

「え～と……」

「あ。ひなたははじめましてだね。この人達はネフィーネ・オリフィスさんとジェイル・スカリエッティさん。元は『Ｘマジンラー』の関係者だったんだけど、抜けて今はこの国で医者をやっていて、英華やノゾミ達を診てくれた人達よ。」

「そうでしたか……はじめまして。私は上里ひなた。神託を受ける巫女として英華さんや若葉ちゃん達、勇者をサポートしてきました。」

梨紗から二人について、紹介してもらった後、ひなたは恭しく頭を下げながらそう自己紹介する。

「あぁ、君が……」

「よろしくね。」

「それで、デスガンが英華に注入した『毒』について、何かわかったんですか？」

対するスカリエッティとネフィーネがそう言うなか、梨紗は改めてそう尋ねる。

「あぁ、そのことなんだが……」

「ちょっと厄介なことになるかもしれないわ。」

「！？厄介なこと……ですか……」

「ッ……一体どんなものだったんですか……？」

対する二人が言った『厄介なこと』という言葉にひなたが不安を覚えるなか、梨紗は冷静にそう尋ねる。

「ある意味、予想通りではあったが、ソロモンが作り出した新たなダークライダー、サマエルに変身したデスガンがフェイト君に注入した『毒』はただの毒なんかじゃなかった……」

「調べたところ、彼女の体内にはウイルスとナノマシンが混合して注入されたことがわかったわ……」

「！？ウイルスとナノマシン……」

「一体どういったウイルスとナノマシンだったんですか？」

「ウイルスはTウイルスと同系統のウイルスにオラクル細胞とソロモン因子が掛け合わされたもので適合しないものは急激な変異をもたらし、怪物に変える代物だったわ……不幸中の幸いと言えばいいのか、フェイト執務官は適合しているのか変異が緩やかだけど………」

「変異が緩やかって……英華さんならNSで自力で解毒できるんじゃ……」

フェイト（英華）に注入されたウイルスについて、そう説明するネフィーネに対し、ひなたは不安な表情を浮かべながらそう言う。

「残念ながら、そのNSはウイルスと一緒に注入されたナノマシンが発する特殊な力場によって抑制されているんだ。」

「！？」

「！？NSを抑制できる力場ですって！！？」

そんなひなたにすかさずそう説明するスカリエッティの言葉にひなたは驚愕の表情を浮かべ、梨紗も流石に動揺を隠せずにそう言う。

「君達はこれまでの『Ｘマジンラー』や『運命の断片達』との戦いでNSを幾度となく使ってきた……その時に取られていたデータからソロモンが独自に開発したのだろう……」

「バカな………！？」

ナノマシンが発する、NSを抑制する力場について、そう分析するスカリエッティの言葉に梨紗は思わずそう言う。

(でも、特１世界で存在が確認されてから優に半世紀は経っている………そう考えると、あり得ない話じゃない………！！)

「それと、このナノマシンは力場の他に宿主の脳内物質に干渉して『破壊衝動』を増幅させるプログラムも施されていることがわかったわ。」

が、すぐさま冷静になりながらそう考えるなか、ネフィーネは苦い表情を浮かべながらそう説明した。