蝕む闇

「少しは頭が冷えたかしら?ノゾミ。」

「(ビクッ!!)千景さん………」

その頃、そう言いながら部屋に入ってきた千景に対し、ノゾミはビクつきながら少し暗い表情でそう言う。

「……私……」

「今回の結果は貴女が招いたものよ。『護る』ためではなく、『復讐心』で戦うから周りが見えなくなってしまう……だから、大切なものを見落としてしまうのよ………」

「ッ………」

冷静にそう指摘する千景の言葉にノゾミは胸を締め付けられる。

あの時、千景に言われたようにノゾミは以前のように『護る』ためではなく、目の前で二人の同級生を『殺した』ノイズに対する怒りや憎悪に支配されて戦い、月音が変身したディリンクに至っては『ジニア動乱』の時にジニア側に立っていた『 破壊者』、ディケイドこと門矢士だと誤認し、『復讐心』に駆られる形で戦いを挑み、戦場を混乱させた。

その結果、学園に大きな被害をもたらし、フェイトも瀕死の重傷を負わせてしまった。

(ダメだ……私……何も変われてない……あの頃から何も………ッ!!)

『ジニア動乱』のなか、二度に渡る自身の暴走が原因で命を落とした二人の仮面ライダー……仮面ライダーハンドレッド、椿彰一とガンバライダー、神埼俊哉……

その二人の顔が頭をよぎったノゾミはそう思いながら、俯きながら自己嫌悪に陥る。

「……はぁ……」

「!?」

そんなノゾミに対し、千景はため息を吐きながら両手でノゾミの頬を挟んで持ち上げ、自分と目線を合わせる。

「ち、千景、さん……」

「そうやっていつまでも後ろばっかり見ていたら、また同じ過ちを繰り返すわよ。」

真剣な目でそう言った後、千景は手を離し、ドアの方へと向かう。

「……変わりなさい、ノゾミ。乃木さんに出来たんだから、貴女にも出来る筈よ……」

背中越しにそう言うと、千景は部屋を出ていった。

「……私は………」

廊下・・・

「くっ……」

部屋を出た後、千景はそう言いながら、壁にもたれかかるように座り込んでしまう。

(そろそろ限界みたいね……)

「ごめんなさい、上里さん。後はお願い……」

パァァァ・・・

千景はそう言いながら光に包まれる。

パキィィィンッ!!

次の瞬間、千景と入れ替わるようにひなたが勇華メモリを核に実体化し、千景は勇華メモリの中で休息に入る。

「お疲れ様です、千景さん。次の戦いが来る時までしっかり休んでいて下さい。」

交代した後、ひなたはそう言いながらスッと立ち上がり、梨紗の方へと向かった……
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