蝕む闇

「これは……ちょっとマズいかもしれないわね……」

「ネフィーネ。フェイト執務官の具合はどうだい?」

その頃、別室でサマエルデスガンの“マレフィックスプラッシュアウト”を受けて、瀕死の重態に陥っていたフェイトの治療を引き受けていたネフィーネが採取した血液の入った試験管を見ながら、神妙な表情でそう言うなか、スカリエッティがそう尋ねる。

「外傷は無事に縫合したし、一命は取り止めたけど……」

「けど、何だい?」

「……調べてみないとまだ何とも言えないけど、デスガンが変身した、元はソロモンが開発した新たなダークライダー、サマエルがライダーキックを決めると同時に注入した『毒』が厄介なものかもしれない……」

「!?毒か……」

「その毒ってどんなものなんですか?」

「「!?」」

そんななか、梨紗がそう言いながら入ってくる。

「梨紗さん……」

「フェイト執務官のお見舞い……って訳じゃなさそうだね。」

「………」

「……僕達は一旦席を外すよ。ちょうど今、一通りの治療は終わったところだ。」

「お気遣いありがとうございます。」

「今は医者だから言っておくが、あまり過激な真似はしないように頼むよ。彼女は今、肉体はともかく精神はかなり不安定だからね。」

「わかってます……」

「それじゃあね。」

そうしてスカリエッティとネフィーネは退室する。

「………」

二人が退室した後、梨紗は眠っている妹を一瞥してから近くのベッドで包帯を巻かれて眠っているノゾミの方へ歩み寄る。

パァァァ………

歩み寄った後、掌を翳した瞬間、ノゾミの身体から白銀が混ざった空色の光…NSの光が少しずつ掌に集まり、消えていく。

「……うっ……」

「お目覚めかしら?」

「……梨紗さん……?」

「ノゾミちゃん。今、『創世龍』の権限を以て貴女の『龍化』と『未来予知』は完全に剥奪、他の能力チカラにも制限を掛けたわ。」

「!?どうして……っ!!?」

「『どうして』?そんなこともわからないなら尚のこと。何の『覚悟』も持たずして何が『可能性』か!」

「ッ……覚悟なら持って」

「いいえ。今の貴女にはないわ。だから『どうして』なんて言える……わからないなら自分で答えを見つけなさい。それじゃあ……」

バタン

梨紗はそれだけ言うと、部屋から出ていってしまう。

「………やったんだよ………必死にやったんだよ!その結果が今なんだよ!!皆を失って、知り合った人達を護るために戦って、セッテやフェイトさんと喧嘩して、今はまた平和な日常が奪われている!!これ以上、私にどうしろっていうの!!?私はどうすれば良かったっていうの!!?わからない………私には、わからないよ………」

直後、ノゾミはそう言いながら、ベッドの上でうずくまりながら泣き始める。

『………』

その様子を、近くにいた半透明な『何か』は静かに見守っていた。
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