賢石の脅威

「「「阿号!!」」」

「くっ……」ガキキ…ッ!!

(さっきより重い……っ!?)

「くくく……こいつも受け止めるとはやるなぁ……」ガキキ…ッ!!

ジンガが振り下ろしたティルヴィングの重さにそう思いながら苦悶の表情を浮かべる阿号に対し、ジンガはそう言って称賛する。

「だが、魔導具鉄くずには用はねぇっ!!」

ドカァァァンッ!!

「ぐっ!?」

次の瞬間、ジンガはそう言いながら阿号を思いきり蹴り飛ばす。

ドカァァァンッ!!

蹴り飛ばされた阿号はそのまま近くの建物の壁を突き破り、瓦礫の下敷きになる。

「阿号!!」

「スピードだけでなくパワーも上がっている……っ!?」

「はあああああ……っ!!」

ズズズ……ッ!!

『!?』

瓦礫の下敷きになった阿号にアクアにとりが呼びかけ、メルヒェンアキがそう言うなか、ティルヴィングの鍔から赤黒い触手のようなものが現れ、ジンガの右腕を侵食し同化していく。

「ブッブッ」

「な、なにあれ……剣が侵食していく……」

「ハハハ……賢者の石いしにした人間の魂を喰わせて飼い慣らしちゃいるが、やっぱりこいつは血肉が喰いたくて仕方ねぇみてぇだな……」

その光景を見て、腕の中にいる兎が威嚇し、セレナが恐怖で震えるなか、ジンガはそう言いながら片膝を着いているカドゥケウスツキトへと歩み寄っていく。

「くっ……」

歩み寄ってくるジンガにカドゥケウスツキトはなんとか立ち上がろうとする。

が、斬り裂かれた箇所から血を流しすぎたのか、足に力が入らず、上手く立ち上がれない。

「ッ!アキは阿号をお願い!私はツキトをフォローする!!」

「うん!!」

アクアにとりはそう言いながらカドゥケウスツキトのフォローに向かおうとする。

「ジンガとティルヴィングの『食事』の邪魔はさせないわよ。」スッ

そんななか、アミリがそう言いながら、表紙に『悪魔の前に鎮座された台の上で腹部から血を流しながら横たわる女性』が描かれ、裏表紙には六芒星が描かれた黒い魔導書を取り出す。

「『本に宿りし、道連れを求めし魂よ。茨で肉を抉り、血を流しながら捕らえよ。』」

パァァァ……シュルルルルルルルッ!!

「「!?」」

アミリがそう詠唱しながら魔導書を開いた瞬間、開いたページが黒く輝き、そこから飛び出してきた漆黒の茨の蔦がアクアにとりメルヒェンアキに絡みつき、拘束する。

「あ……っ!?」

「しまった!?」

「フフフ……貴女達は後で私とこの『贄の書』が美味しく頂いてあげる……」

「くくく……安心しな、『奇跡の存在』……お仲間も後で俺とアミリが残さず喰ってやるからよ……」

「くっ……」

拘束した後、アミリが妖しい笑みを浮かべながらそう言うなか、ジンガはそう言いながら更に歩み寄っていく。

「エボルトさん、ここでじっとしてて下さいね。」

「ぷぅーっ……」

「ッ……」

そんななか、セレナはそう言いながら兎をギルドの玄関前に置き、胸元のアガートラームのペンダントを握りしめながら、カドゥケウスツキトへと歩み寄っていくジンガの方を見る。

が、足が恐怖で震え、目には涙が滲んでいる。

(戦わなきゃ……戦わなきゃいけないのに……っ!!)

自分を支配しようとする、FIS自分の居場所を滅茶苦茶にし、ナスターシャ教授を始めとする多くの者の命を奪ったジンガやソロモン達への恐怖心と葛藤しているなか、

「『頑張れッ!』」

「って言葉」

「ちゃんと受け止め」

「「「答えて行きたい」」」

「!?」

偶然にも、アルゲンマギアと戦っているマリア、調、切歌の三人の歌声がセレナに届く。

「キ・ズ・ナ!旋律にして」

「「「歌に束ね ぶち抜け空へ」」」

「マリア姉さん……暁さん……月読さん……!!」

聞こえてくる三人の力強い歌声にセレナの心が温かくなっていく。

「「「涙しても 拭いながら
前にだけは進める」」」

「ッ!!」ゴシゴシッ!!

滲んでいた涙をセレナはゴシゴシと拭う。

「「「傷だらけで 壊れそうでも
『頑張れッ!』が支えてる」」」

(ありがとう……)

Seilienセイレーン coffinコフィン airget-lamhアガートラム tronトローン

パァァァ……

今一度、立ち上がる力を届けてくれた三人に感謝しながら再び詠った瞬間、セレナが白い光に包まれた。
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