賢石の脅威

『ささめゆき』・・・

「賢者の石……?」

「なんだ?それは……」

時を遡り、アルゲンマギアが撃破される少し前、ジンガの胸元で妖しく光る赤い宝石…『賢者の石』を見て、動揺と嫌悪の感情を露にしながらそう言うカドゥケウスツキトに対し、アクアにとりと阿号は首を傾げながらそう尋ねる。

「ッ……生きたまま抽出した人間の魂を凝縮させた高エネルギー体……」

「本当なら『等価交換』を必要とする錬金術を等価交換なしで行使することを可能にする、錬金術の集大成にして禁忌の“力”だよ……」

「あぁ、そういえば、悠姫も『ムンドゥス』でこいつを錬成しようとしたんだっけな……」

「まぁ、他でもない貴方に邪魔されたみたいだけどね……奇跡の存在……」

そんな二人にカドゥケウスツキトメルヒェンアキがそう説明するなか、ジンガとアミリは嗤いながらそう言う。

「……何人だ……?」

「あ?」

「おまえらはそいつを創るのに、何人を犠牲にした……!?」

そんななか、カドゥケウスツキトはこみ上がる怒りをなんとか抑えながらそう尋ねる。

「確か……俺とアミリ、二人合わせて3億2700万くらいか……」

「なにせ大国の国民全員だから、それくらいかしらね。フフフ……」

「ッ!貴様らあああぁぁぁっ!!」

「ツキト!?」

ドンッ!!

対するジンガとアミリから出た答えを聞いたカドゥケウスツキトは次の瞬間、激昂しながら向かっていく。

「はあああぁぁぁーーーっ!!」

向かっていった後、カドゥケウスツキトはジンガに殴りかかる。

「くくく………」

「!?」

ガッ!!

が、ジンガは先程まで使っていた魔戒剣とは違う、暗い金の鞘に収まった剣でカドゥケウスツキトの拳をいなし、

「ハッ!!」

ズバァァァンッ!!

「ぐはっ!?」

すぐさま抜剣して斬りつけながら吹き飛ばす。

「くっ……」

吹き飛ばされた後、カドゥケウスツキトはなんとか体制を立て直しながら、斬りつけられた箇所を押さえながら着地する。

ポタ……ポタ……ッ!!

押さえている箇所の装甲は斬り裂かれ、そこから血が流れ出る。

「くくく……なかなかの切れ味だなぁ……」

「くっ……なんだ?その剣は……」

先程、振るった剣の切れ味にご満悦なジンガに対し、カドゥケウスツキトはジンガの手にある、黒い柄の先に目のようにも見える赤い珠、鋭い爪を持つ竜のものにも似た鍔、

ドックンッ!……ドックンッ!!

漆黒の刀身に脈打つ血管のように発光する赤い線が入った剣を睨み付けながらそう尋ねる。

(あの剣から『賢者の石』と同じくらいヤバい何かを感じる……!!)

「くくく……こいつは『ティルヴィング』。元はFISで保管されていた魔剣だ……」

「!?ティルヴィング!!?」

「?アキ?」

「何か知っているのか?」

『ティルヴィング』という名に反応するメルヒェンアキに対し、アクアにとりと阿号は首を傾げながらそう尋ねる。

「……『三つの願いを叶える』と云われている魔剣だよ……『一度抜けば必ず人間を殺さなければならない』、『三つの願いが叶えば持ち主は命を落とす』っていう呪いがあるけど……」

「「!?」」

「くくく……そいつは『ムンドゥス』のティルヴィングの話だな……俺がFISで頂いてきたこいつはそんな生易しいもんじゃねぇ……」

キュアアアアアッ!ドックンッ!……ドックンッ!!

対するメルヒェンアキからの説明にジンガが笑い飛ばしながらそう言うなか、ティルヴィングの珠が女性の悲鳴のような音と妖しい光を発し、刀身も脈打ちながら一回り大きくなる。

「「「「!?」」」」

ティルヴィングの異様な変化にカドゥケウスツキト達が戦慄するも束の間、ジンガは先程までより速いスピードで向かってくる。

「なっ!?」

(速い!?)

「はあああぁぁぁーーーっ!!」

先程よりも上がっているジンガのスピードに驚愕するカドゥケウスツキトに対し、ジンガはティルヴィングで斬りかかってくる。

「ツキトッ!!」

ガキィィィンッ!!

そんなカドゥケウスツキトを庇うべく、間に割って入った阿号が両腕から出現させた剣をクロスして、ジンガのティルヴィングを受け止める。

ドカァァァンッ!!

『!?』

が、その瞬間、阿号を中心に半径数メートルのクレーターが発生した。
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