VALZ編

昨日、森の中・・・

ブロロロッ!!・・・キィッ!!

「ふぅ……」

「暗くなってきたね……」

時を遡って昨日の夕暮れ時、姫矢市に向かう道中の森の中にて、走らせていたバイク形態のヒメを停車させながら一息吐く勝利に対し、後ろに乗っていたノエルはそう言う。

「今日はここで野宿だな。」

勝利はそう言いながらヒメに乗せていた荷物を下ろし、メーターの下にあるボタンを押そうとする。

「………」

「?勝利?」

「どうしたんですか?」

が、メーターを押そうとした手を止め、何かを察したかのような雰囲気で固まる勝利にノエルとバイク形態のヒメはそう尋ねる。

「……それで隠れたつもりかよ。」

ガサガサッ!!

「「!?」」

対する勝利がそう言った瞬間、近くの茂みの中に潜んでいた『それら』は堂々と現れ、瞬く間に二人と一機を包囲する。

それらは耳元に特徴的なモジュールと、『X』が描かれた仮面と胸当てを着け、身体には赤黒いラインが入ったアンドロイドのような姿をしていた。

「トリロバイトマギア……か……?」スッ

かつて、『ReBUILD』との戦いで交戦したことのある戦闘員マギア、トリロバイトマギアに酷似したアンドロイドに首を傾げながら、勝利は二本のライダーカプセルを構える。

「『トリロバイトマギアクロス』……この次元とは別次元に存在するとある組織が強化改良を施したマギアだ………」

「誰だ!?」

「『次代の王』、ヴァルツを受け継ぎし者、椿勝利とジニアの娘………漸く会えたな………」

そんななか、影野がそう言いながらトリロバイトマギアXの間から現れる。

「俺は影野連葉。『ReBUILD』でダーカー因子の研究をしていた後、ジニアに追放された者だ。」

「!?『ReBUILD』の………!?」

「おまえが所持している黄色のハルシオンコアと、赤のハルシオンコアの依代よりしろであるジニアの娘を渡してもらおうか。」

「ッ………」

名指しで自分を引き渡すよう要求してきた影野の言葉にノエルは身体を強張らせる。

「ふざけるな……『ジニア動乱』が終わって、ノエルは細やかだけど平穏な幸せを手に入れたんだ……!!」

『リヒト!!』

『ドゥンケル!!』

そんなノエルの様子を見て、勝利はそう言いながら取り出した二本のライダーカプセル、リヒトカプセルとドゥンケルカプセルを起動し、左手首に装着したカプセルホルダーに装填し、エクスライザーで読み込む。

パァァァ・・・

その瞬間、勝利の右隣に白い人影が、左隣に黒い人影が現れる。

「変身!!」

『デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!!』

パアアアァァァッ!!

勝利がエクスライザーを天に掲げながら、そう言いながらトリガーを引いた瞬間、二つの影は勝利に重なり、装甲を形成していく。

『光と闇のマリアージュ!今こそ立ち上がれ最強のライダー!!』

パキィィィンッ!!

次の瞬間、勝利は漆黒の鎧に所々、走った黄色と赤のラインに燃え上がるような複眼……昭和ライダーの一人である仮面ライダーBLACKを彷彿とさせるライダー……仮面ライダーヴァルツベーシックへと変身した。
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