5.夜半の月
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山田先生の実技に土井先生が同行するときは、事務室で作業をしたり、くノ一教室で授業を見学したりと、なんだかんだ充実した毎日を過ごしていた。
「今夜は満月ですね」
夜、見回りをしていると土井先生が声をかけてくれた。
上を見上げれば丸い月が輝いている。
「もうお月見の時期過ぎちゃいましたね」
そう言葉を返すと、山田先生が手に何かを持ってやって来た。
「おや、雪下君は見回りかね?ちょっと部屋に寄ってお月見でもどうですかな?」
山田先生が手にしていたのはお饅頭だった。
実習で金楽寺に行ったら和尚さんから貰ったのだそうだ。
「では少しだけお邪魔しますね」
山田先生たちの部屋から月を眺める。
お茶を入れ、月を眺めながら一杯を嗜む。
ここが忍術学園でなかったら、湯呑みは酒瓶に姿を変えていただろう。
どこかから虫の音が聞こえてきた。
「雪下君、足の具合はもう大丈夫なのか?」
「ええ、ほとんど大丈夫です。明日新野先生に確認してもらいます」
「この数日ですっかりは組の生徒に懐かれてしまいましたね」
「アイツら、雪下君がいなくなったらまた授業中に寝てしまうんじゃないか?」
「ほんとですよ。雪下さんが見学するようになってから、授業態度が違いますから」
「そんなことないですよ。普段の日常に戻っても、お手伝いが必要な時は仰ってくださいね。教員補助でもあるんですから」
「ええ、頼りにしてますよ」と山田先生が頷いたところで、山本シナ先生が老婆姿で現れた。
「こんばんは。まぁ、私もお饅頭をいただいていいのかしら?」
「山本先生、どうしたんです?」と土井先生が尋ねる。
「実はですね、明日くノ一教室で紅葉狩りに出かけるんです。せっかくなので、雪下さんも連れて行きたいですけど、土井先生と山田先生の許可をいただきたくて」
「そんな許可だなんて」
「そうですよ。雪下君はどうしたいかね?」
突然の誘いに驚きつつ、私は少し戸惑いながらも、山本先生に「私も行きたいです」と返した。
「良かったわ。明日新野先生に診察してもらってから、紅葉狩りに出かけましょう」
山本先生の朗らかな笑顔と、楽しそうな紅葉狩りの計画に、心が浮き足立つのを感じていた。
山本先生が去った後、土井先生がちらりと私に視線を向けた。
「紅葉狩り、楽しそうですね」
「はい…せっかくなので楽しんできます」
紅葉狩り、その言葉の響に胸を弾ませた私は、秋風の吹く音と虫の音に耳を傾けながら、残りのお饅頭を頬張っていた。
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