8.想い、あふれ
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期末テスト当日、土井先生の代わりに、は組の帰りの挨拶のため教室に向かった。
テストを終えた休み時間の校舎は、すっかり生徒たちの賑やかな声に包まれていた。
教室の戸を開くと、プリントを纏める土井先生の姿がある。彼の視線が私を捉え、口を開いた時だった。
「詩織さん!今度僕と剣術の稽古に付き合ってください!」
「詩織さん!今度僕の好きな料理をメニューにして!」
「怪我はもう大丈夫なんですか!?」
「詩織さん!本の貸出期限、そろそろですよ」
金吾君や乱太郎君たちの声が遮る。
みんなは私の前に集まり、色々と質問などをしている。
「こおら、お前たち!ちゃんと席につけ」
「え〜詩織さんとまだ話した〜い!」
「詩織さん、上級生の授業ばっかりだもん!」
生徒たちから大ブーイングを浴びた彼は、大声で叫んだ。
「お前たち!詩織さんも忙しいんだぞ!!」
土井先生は慌てて言葉を紡いだ。
「あ!すみません、つい名前で呼んでしまって・・・・・・特に他意はなくてですね・・・・・・」
土井先生の言葉がこだまする。
特に他意はなくて。
それは土井先生が私に対して、何も・・・・・・
「詩織さん、どうして泣いてるの?」
しんベヱ君に言われ、涙が頬を伝っていたことに気付く。
どうにか涙を止めようとすればするほど、溢れてくるばかり。そんな私を、心配そうに見つめていた皆が一斉に口を開いた。
「「「土井先生が詩織さんを泣かせた〜!!」」」
その言葉に、せめて子どもたちの前では立派な大人でいたいと見えが張り、声を震わせながら言葉を紡いだ。
「あ、ごめんなさい・・・・・・あの、大丈夫です・・・・・・みんなごめんね?また今度、お話しようね?土井先生、すみません」
それだけ言って教室を抜けた。
廊下を走って、階段を駆け下りて、走って、走って、事務室の奥間に入って襖をパシャリと、閉めた。
つらい。
何がこんなにつらいんだろう。
でも、
土井先生のそばにいるとつらいのだ。
土井先生のことを考えると、胸の奥がキュッと締め付けられるのだ。
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