記憶の欠片
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もう、彼の隣は私ではなかった。
記憶の欠片
私はトラックに轢かれて死んでしまったのだけれど、
行き着いた先は尺魂界という、謂わばあの世なのだと雛森さんから教えて貰った。
そのなかの、流魂街にいるのだという。
日番谷くんと雛森さんは、瀞霊廷に住んでいてここにはお婆ちゃんの様子を見にやってくるらしい。
護廷十三隊、という死神として瀞霊廷を護る仕事をしているのだと教えてくれた。
二人は、幼い頃この家で暮らしていたのだという。
現世とここでは時間の流れが違うらしい。
そして、大抵は現世の記憶などないと。
「あなたも霊力があるみたいだから、護廷に入らない?」
「え・・・・・・?」
「やめておけ、雛森」
背後から会話を聞いていた日番谷くんが冷たく突き刺すように言う。
「シロちゃん! そんなこと言わないの!」
「うるせえ、それに日番谷隊長だ」
二人の会話から仲の良さが会ったばかりの私にもよく分かった。
日番谷くんは私のことを覚えていない。
悲しいのにホッとしている自分がいる。
あの日してしまった自分の愚行を、長い間胸の奥に隠してきた。
罪の意識に苛まれていたけれど、もう気にしなくても・・・・・・
「・・・・・・」
「どうしたの?涙が流れてるよ?シロちゃん怖いよね?ごめんね」
「おい雛森、俺はなんも悪くねえだろ」
「ご、ごめんなさい・・・・・・なんでもないの」
安堵の涙が溢れ出す。
目の前に日番谷くんがいる。
それだけでいい。
私のことを覚えてなくてもいい。
もう一度会えただけでいい。それだけでいい。
今度は私が日番谷くんを護る。
もう、つらい思いはさせないから。
「護廷に入るにはどうすればいいですか」
「お前には無理だ」
「・・・・・・っ、日番谷さんには関係ないです」
やはり日番谷くんの口調は冷徹に聞こえてしまう。
虚というバケモノとも戦うことなど、私にとって何でもない。
だって、
「私にも霊圧があるんですよね?」
目の前に剣があるのに、戦えないという理由はないじゃない。
「自分の道は自分で切り開きますから」
日番谷くんの傍にいれる道があるなら、私はその道を歩くしかないの。
「まずは真央霊術院の試験に受かるところだね」
「そういえば、あなたの名前は?」
「雪下詩織です」
ちらりと日番谷くんを盗み見るが、興味なさげだ。
「雛森、そろそろ行くぞ」
「あ、待って。シロちゃん」
日番谷くんを追おうとした雛森さんは、途中でくるっと振り向き小声で言った。
「シロちゃんはほんとは良い子なんだよ。ここまで運んできてくれたのもシロちゃんなんだよ」
それに、と言葉を続ける。
「詩織ちゃん、可愛いもの!照れてるのよ」
じゃあまたね!と雛森さんは帰っていった。
可愛いかどうかは別として、やはり日番谷くんは日番谷くんだ。
昔よりすこし大人っぽくなった気がする。
やっぱり、かっこいいな。
手首にはあのストラップが、ミサンガのように巻かれていた。
おそらく、千切れていて、日番谷くんか雛森さんが結んでくれたんだろう。
「ねえ、シロちゃん。なんであんなこと言ったのよ」
「あんなことって?」
「死神は無理って」
「・・・・・・雛森には関係ないことだ」
「もうシロちゃん!あ、あのミサンガってシロちゃんがつけたでしょ?結び目が雑だったよ」
「うるせえ。とっとと五番隊に戻れ」
「もう!」
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