白梅香
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「しんベヱ、もう少しだから頑張って歩くんだ」
新学期が始まるというのに、しんベヱはいつものように実家の福富屋でおいしい料理やお菓子をたくさん食べ、すっかり体が丸くなっていた。
「先生!実はこの先に新しい団子屋ができたんですよ!」
「あのなぁ…いまのしんベヱの腹、見てみろ?これ以上太ったら明日からの授業、実技の山田先生に怒られるぞ?」
「でもぉ、一口だけ!一口だけ食べた〜い!」
「でも何でしんベヱ、新しい団子屋ができるって知ってんだよ?」
きり丸の問にしんベヱが答える。
「だって僕がお願いしたから」
「はあ?」
「もともと境で人気の団子屋だったんだけど、店主が亡くなって、そこで働いていた詩織さんって人が新しい店先を探してて、で!僕考えたんだけど、忍術学園の近くに美味しい団子屋があったら嬉しいなって!」
「へぇ、しんベヱの誘いを承諾するなんて詩織さんって人は考え無しの無謀な人なんだな」ときり丸が冷たく呟く。
「こら道草食ってないで急ぐぞ!」
「あ〜ん先生待ってぇ、団子屋に寄って行きましょ〜!」
「寄らん!行くぞ!」
しんベヱの背中を押して忍術学園までの道を進んだ。
しばらく道を進んで行くと、しんべヱの言っていた場所に人集りができていた。もちろん何時ものようにしんベヱはヨダレを垂らし物欲しそうな眼差しを向けるが私はそんなしんベヱを抱え上げその場を急ぎ足で離れる。まったく世話の焼ける生徒たちだ。
「あああ!先生のいじわるー!」
「学園に着くのが遅くなる!」
「やだやだやだ〜!あーん!先生のいじわる〜!」
前を歩いていたきり丸が突然前屈みになり、何かを拾う。
「こんなとこに梅の実が落ちてる」
「あ、きっとあそこの団子屋じゃない?梅の木があるもの」
気付いた乱太郎が指差した先には、青い実がついた梅の木がある。
「ほう」
といっても季節は皐月。すっかり花は姿が散ってしまっている。
「こんなに沢山落ちてるなら、拾って梅酒にして売れば儲け〜!」
「こらきり丸!」
「じゃあ私はこの梅の木をスケッチしよっと」
「こら乱太郎!」
ああもうまったく!ともう片方の手で二人の首根っこを掴み持ち上げる。三人それぞれ平等に私に負担をかけるのだから大した物だ。将来有望では?と思わずにもいられないのが教師冥利に尽きるのか溜まらなく悔しい。
「どうしたんです?先生」
私が動きを止めたのに気付いた三人に呼ばれ、意識を戻す。
「ああ、梅の匂いがしてついな」
「梅の木があるんだから当たり前じゃないですか」
「それはそうだが、お前達知っているか?学問の神様である菅原道真が詠んだ歌にこういうものがある」
東風吹かば 匂いおこせよ梅の花
主なしとて 春な忘れそ
「どういう意味すか」
「教えたはずだぞ?」
「習ってませーん」
うっ……と胃が痛くなる。全くこいつらは……。
でも先ほどの匂いは梅の実ではなく、梅の花がした気がしたのだ。辺りを見渡しても花は無い。ふと瞼の裏側に、過去の陰影が映る。寺の裏庭にあった梅の花。その梅の木の近くで遊んでいた懐かしい人影……。
「土井先生?」
「ああ、すまんすまん。さ、はやいとこ学園まで行くとするか」
何年も思い出すことはなかったのに、どうしてか急にあの頃の記憶が流れてきたことに自分自身が動揺していた。
→
新学期が始まるというのに、しんベヱはいつものように実家の福富屋でおいしい料理やお菓子をたくさん食べ、すっかり体が丸くなっていた。
「先生!実はこの先に新しい団子屋ができたんですよ!」
「あのなぁ…いまのしんベヱの腹、見てみろ?これ以上太ったら明日からの授業、実技の山田先生に怒られるぞ?」
「でもぉ、一口だけ!一口だけ食べた〜い!」
「でも何でしんベヱ、新しい団子屋ができるって知ってんだよ?」
きり丸の問にしんベヱが答える。
「だって僕がお願いしたから」
「はあ?」
「もともと境で人気の団子屋だったんだけど、店主が亡くなって、そこで働いていた詩織さんって人が新しい店先を探してて、で!僕考えたんだけど、忍術学園の近くに美味しい団子屋があったら嬉しいなって!」
「へぇ、しんベヱの誘いを承諾するなんて詩織さんって人は考え無しの無謀な人なんだな」ときり丸が冷たく呟く。
「こら道草食ってないで急ぐぞ!」
「あ〜ん先生待ってぇ、団子屋に寄って行きましょ〜!」
「寄らん!行くぞ!」
しんベヱの背中を押して忍術学園までの道を進んだ。
しばらく道を進んで行くと、しんべヱの言っていた場所に人集りができていた。もちろん何時ものようにしんベヱはヨダレを垂らし物欲しそうな眼差しを向けるが私はそんなしんベヱを抱え上げその場を急ぎ足で離れる。まったく世話の焼ける生徒たちだ。
「あああ!先生のいじわるー!」
「学園に着くのが遅くなる!」
「やだやだやだ〜!あーん!先生のいじわる〜!」
前を歩いていたきり丸が突然前屈みになり、何かを拾う。
「こんなとこに梅の実が落ちてる」
「あ、きっとあそこの団子屋じゃない?梅の木があるもの」
気付いた乱太郎が指差した先には、青い実がついた梅の木がある。
「ほう」
といっても季節は皐月。すっかり花は姿が散ってしまっている。
「こんなに沢山落ちてるなら、拾って梅酒にして売れば儲け〜!」
「こらきり丸!」
「じゃあ私はこの梅の木をスケッチしよっと」
「こら乱太郎!」
ああもうまったく!ともう片方の手で二人の首根っこを掴み持ち上げる。三人それぞれ平等に私に負担をかけるのだから大した物だ。将来有望では?と思わずにもいられないのが教師冥利に尽きるのか溜まらなく悔しい。
「どうしたんです?先生」
私が動きを止めたのに気付いた三人に呼ばれ、意識を戻す。
「ああ、梅の匂いがしてついな」
「梅の木があるんだから当たり前じゃないですか」
「それはそうだが、お前達知っているか?学問の神様である菅原道真が詠んだ歌にこういうものがある」
東風吹かば 匂いおこせよ梅の花
主なしとて 春な忘れそ
「どういう意味すか」
「教えたはずだぞ?」
「習ってませーん」
うっ……と胃が痛くなる。全くこいつらは……。
でも先ほどの匂いは梅の実ではなく、梅の花がした気がしたのだ。辺りを見渡しても花は無い。ふと瞼の裏側に、過去の陰影が映る。寺の裏庭にあった梅の花。その梅の木の近くで遊んでいた懐かしい人影……。
「土井先生?」
「ああ、すまんすまん。さ、はやいとこ学園まで行くとするか」
何年も思い出すことはなかったのに、どうしてか急にあの頃の記憶が流れてきたことに自分自身が動揺していた。
→
1/2ページ