だれも嘘はついていません
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忍術学園に向かう道中に、満開に咲いた桜の木を見つけ、彼女に見せたいという気持ちが先走り、気付いたら少しばかり枝を折っていた。長屋付近の桜の木はまだ蕾で、一足先に咲いたこの桜に、きっとすでに忍術学園で事務作業をしているであろう彼女の姿と重なったのだ。校門前で彼女と顔を合わせ、その桜を手渡す。
「まさか、これを私に?」
「ええ、そうです」
胸が静かに高鳴っていた。女性に花を手渡すことが久方ぶりで、日頃の感謝とか誕生日だとかそういう渡す理由もなく、綺麗に咲いていたからという理由だけで渡すことにひどく緊張していた。
「どうして……です?」
「え?」
思ってもみなかった言葉に一瞬言葉を失った。これは拒絶、というやつだろうか。
「いえ、では……お返しします」
そう言うと彼女は桜の枝を戻すので、私は受け取るしかなかった。いや、このまま拒絶されたままは癪だ。せめて私の好意が少しでも届いて、叶うことなら何か私という爪痕を残してやりたい。そう思っていたときだった。
「先生にも、こうやって桜を見せたい方がいらしたんですね」
か細い声で彼女が呟く。その自信なさげな声色に、勘違いをしていることに気付いた。彼女はさっきこう言いたかったのだろう。これを誰かに渡しに来たんですか。それを私は聞き間違えたのだ。そして彼女も間違って解釈している。
「はは、バレてましたか」
決して彼女の気持ちが私にあると核心があるわけではなかったけれど、不思議と不安はなかった。
「でも私の気持ちは相手には届かないようなので、この桜を受け取っていただけませんか?」
小さな手のひらに桜を握らせて、その場を立ち去った。彼女の頬が微かに染まっていくのを見逃さなかった。これは私にも勝機があるかもしれない。
彼女の視線を背中に感じながら、口角が緩んでいく。今日は四月一日。さあ、ネタばらしはいつにしよう。
