短編
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「はい、これ」
手のひらに載せられた包みに首を傾げた。
「利吉さん、これってなんですか」
「お返しです」
「何の?」
振り返った彼の頬は赤い。米神に皺を寄せ、小松田さんを見るのと同じように「ああもう」と髪を掻き揚げる。なにをそんなに苛立つのか。
「今日、ホワイトデーなんですけど」
「ええそうですね。朝、乱太郎くんたちから聞きました……でも、バレンタインに私、何も渡してませんよ?」
あげた記憶なんてない。というか渡せなかった。くのいち達から沢山受け取っているのを見て、私なんかがあげなくてもと思ったのだ。そのチョコは結局お腹を空かせたしんべヱくんにあげたけど。
「別に……貰ったから返さなきゃいけないって訳じゃないですよね」
利吉さんは私より少しだけ年下で、だから口を尖らせてそう言う姿が少しだけ可愛らしく映った。
「そう、ですね。ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「……ええ、どうぞ」
包みを開けると口紅が入っていた。そろそろ紅が切れそうだという話を覚えていたのだろうか。それにしても私好みの色だということがより嬉しかった。
「貴女に似合う色を選んだのですが」
「とっても、嬉しいです」
「今、付けてみません?」
そう言うと口紅を手に取った利吉さんは、私の唇に紅を引いていく。もう片方の手は私の顎を支えていて、慎重に優しく彼は紅を差す。
唇に視線があるからか、私から見える彼の俯き加減の眼差しがとても儚げで胸の奥がキュッと詰まりそうになる。
鼓動が静かに高鳴り、頬が熱を持つ。はっきり言って恥ずかしい。
「やっぱりお似合いです」
紅を差し終わったのに、顎に添えられた手はそのまま。彼の長い睫が再び俯いたかと思えば、今度は目の前にその睫が見える。
「……」
唇に触れた感触に一瞬思考が停止した。
それは私にとってあまりにも突然で、なぜ、と思わずにはいられなかった。
だって、彼はプロ忍者で、私はただの事務員で、会えば世間話をするくらいの間柄で、私に向けられる微笑みを都合の良いように解釈してはいけないのだと思っていたからで。
瞬く間に唇が離され、目の前には先ほど同様米神に皺を寄せる彼の姿。違うのは頬が真っ赤ということ以外。
「……私の気持ち、受け取ってもらっていいですか?」
いい加減気付いて下さいよ、と付け加えて。
高鳴っていた鼓動が一際大きく脈を打つ。
届かないと思っていた。眼中にないと思っていた。
そんな彼が今、目の前で私の返事を待っている。
返事はとうに決まっていて、だけど嬉しすぎる現実に、自然と頬に涙が伝う。
「全く貴女という人は……困らせるつもりじゃなかったんですけどね」
穏やかに慈しみを含んだ声で、利吉さんは私を抱き締める。その裾をギュッと握ることしかできなかった。
手のひらに載せられた包みに首を傾げた。
「利吉さん、これってなんですか」
「お返しです」
「何の?」
振り返った彼の頬は赤い。米神に皺を寄せ、小松田さんを見るのと同じように「ああもう」と髪を掻き揚げる。なにをそんなに苛立つのか。
「今日、ホワイトデーなんですけど」
「ええそうですね。朝、乱太郎くんたちから聞きました……でも、バレンタインに私、何も渡してませんよ?」
あげた記憶なんてない。というか渡せなかった。くのいち達から沢山受け取っているのを見て、私なんかがあげなくてもと思ったのだ。そのチョコは結局お腹を空かせたしんべヱくんにあげたけど。
「別に……貰ったから返さなきゃいけないって訳じゃないですよね」
利吉さんは私より少しだけ年下で、だから口を尖らせてそう言う姿が少しだけ可愛らしく映った。
「そう、ですね。ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「……ええ、どうぞ」
包みを開けると口紅が入っていた。そろそろ紅が切れそうだという話を覚えていたのだろうか。それにしても私好みの色だということがより嬉しかった。
「貴女に似合う色を選んだのですが」
「とっても、嬉しいです」
「今、付けてみません?」
そう言うと口紅を手に取った利吉さんは、私の唇に紅を引いていく。もう片方の手は私の顎を支えていて、慎重に優しく彼は紅を差す。
唇に視線があるからか、私から見える彼の俯き加減の眼差しがとても儚げで胸の奥がキュッと詰まりそうになる。
鼓動が静かに高鳴り、頬が熱を持つ。はっきり言って恥ずかしい。
「やっぱりお似合いです」
紅を差し終わったのに、顎に添えられた手はそのまま。彼の長い睫が再び俯いたかと思えば、今度は目の前にその睫が見える。
「……」
唇に触れた感触に一瞬思考が停止した。
それは私にとってあまりにも突然で、なぜ、と思わずにはいられなかった。
だって、彼はプロ忍者で、私はただの事務員で、会えば世間話をするくらいの間柄で、私に向けられる微笑みを都合の良いように解釈してはいけないのだと思っていたからで。
瞬く間に唇が離され、目の前には先ほど同様米神に皺を寄せる彼の姿。違うのは頬が真っ赤ということ以外。
「……私の気持ち、受け取ってもらっていいですか?」
いい加減気付いて下さいよ、と付け加えて。
高鳴っていた鼓動が一際大きく脈を打つ。
届かないと思っていた。眼中にないと思っていた。
そんな彼が今、目の前で私の返事を待っている。
返事はとうに決まっていて、だけど嬉しすぎる現実に、自然と頬に涙が伝う。
「全く貴女という人は……困らせるつもりじゃなかったんですけどね」
穏やかに慈しみを含んだ声で、利吉さんは私を抱き締める。その裾をギュッと握ることしかできなかった。
