日々の僕たち
「それじゃあ行ってくるぞ」
早めに食事を終えて、会社へ向かう父の後を追って土間でいつものお願い
「駅前のコンビニでなにか買って来て」
父は穏やかに微笑むと
「判った、今日は中華饅頭でいいかな?」
「うん、お願いします」
「学校の勉強、頑張るんだぞ?」
「任せておいて! バッチリよ」
嘘をついた
「ハッハッハ! 頼もしいな」
父は気付いている
「車の運転、気を付けてね」
私が学校に馴染めない事を
「お前も自転車、気を付けろよ?」
それでもやさしい言葉をかけてくれる
「大丈夫、ヘルメット被ってるから」
胸に小さな棘が刺さる。父との会話だけではなく、祖父母との関係でも
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
父の仕事の都合で、この田舎町に引っ越して半年が経った。初めの内は自然が溢れる綺麗な景観に感動していたけど、すぐに飽きた。世話になっている祖父母の住まいも古民家と言えば聞こえは良いけど、ただのボロ家だ。学校に行けば田舎暮らしを知らない私は都会育ちの世間知らず。友達なんて出来ようも無い……
夜空が綺麗なだけマシかな。
私の趣味は天体観測。ちょっとした天体望遠鏡だって持っている。都会に住んでいた頃は、目立つ星がポツリポツリと見える程度だったけど、こっちは満天の星空! 毎晩、夢中になって望遠鏡を覗いている。この間、流星群を見た時は流れる星の数と輝きに感動して、思わず涙を流してた。
この思いを誰かと共有したいな。
SNSに投稿してみようかな? でも、都会の人は星空に興味無さそう。田舎の人は毎晩見慣れた夜空だ、こっちも相手にされないかも。
やっぱり、止めておこう。
この感動は私だけの物だから。
終