日々の僕たち

 欲しい物はたくさん有る
 行ってみたい所も
 ついでに夢だって。

 でもさ。

 すべて叶えるのはムリだな
 第一、いつ寿命が尽きるか判らない
 仮に長生き出来ても
 働いてお金を稼がないと
 生きては行けない。

 そう。

 何かするたびに金がかかる
 ココを何とかしないと
 最悪、働くだけの人生になるぞ。

 とは言え。

 うまい話には裏があるものだし
 宝くじで一攫千金なんて
 それこそ夢だ。

 起業するだけの才覚がある訳でもなし
 まぁ、その前に今の成績では
 大学進学も危うい
 まっとうな会社に勤めたければ
 大学は卒業しておかないとな
 
 しかーし!

 就職先がブラック企業だったら
 困った事になるのは目に見えている
 最近では一流企業でもその点怪しい。

 俺は一体どうすればイイんだ
 うむむむむ。

 「おい」
 おい? おいか。

 「おーい!」
 ん、誰だ。

 机から顔を上げると、親友がいた
 お互い顔を見合わせる
 ジーッと見つめる
 あ、目が合った。

 「なに見てんだよ」
 親友が笑いながら肘で俺の頭を小突いた
 「お前だって見てただろ」
 お返しに肘で親友の脇腹を小突く。

 「ぐわぁー!」
 大げさなリアクション。

 「ハッハッハッ」
 いつもオモシロイ奴だなぁ
 そうだ、親友は将来どうするつもりだろう
 聞いてみるか。

 「チョットいいか」

 「なんだ? ドンと来い」
 親友は拳で自分の胸を叩く。

 「お前さ、高校卒業したら」
 「どうするつもりなんだ」
 
 親友は即答で
 「お前と同じ大学へ行く」

 「俺は進学しないとイケナイのか」
 
 「え? お前、大学行かないの」
 「今どき大学卒業してないと」
 「マトモな仕事に就けないぞ」
 親友は真顔で応えた。

 でも、すぐに笑顔で
 「大学でもさ〜一緒にバカやろうぜ」
 「お前とつるんでるとさ」
 「俺は何でも出来る気がする」

 そこまで言われたら
 俺も進学するしか無いか
 「よし、いっちょガンバって勉強に励むか」

 「そうそう、その意気だぜ」
 「言っちゃ何だが」
 「俺も勉強が出来る方じゃない」
 「始めから二流大学に的を絞って」
 「アタマ使えば」
 「進学もムリじゃない」
 親友の言う事は、なんて言うか説得力が有る。

 俺もその気になって来たぞ。

 大学受験には
 まだ一年時間が有る
 今から勉強を始めても何とかなる
 「よし、今日から勉強頑張るぜ」

 「それじゃぁ俺も頑張るか」
 親友の応えに少し違和感を覚えた。

 「なぁ?」

 「なんだ?」

 「もし俺がさ」
 「進学はしないと言ったら」
 「お前はどうするつもりだったんだ」
 そうだよ一緒に居たいって言うのは
 ありがたいけどさ
 親友にだって夢のひとつや二つ
 有るだろうに。

 「その時は」
 その時は?

 「少し早いけど起業だな」
 「もちろんお前も一緒だぞ」
 少し早いか。何か謎ワードが出て来た
 もう少し突っ込んで聞いてみるか。

 「じゃぁさ」
 「大学へ進学して、卒業後はどうするつもりだ」
 「やっぱ就職か」
 そう、さっきは就職がどうのと言っていたぞ。

 「なに言ってんだよー」
 「俺には夢が有る」
 親友の夢? 何だろう?

 「お前と一緒に」
 俺と一緒に?

 「天下を取る!」
 ち、ちょっと待ってください
 もう少し判り易いようにお願い。

 「天下を取るって、どう言う事だ」

 「さっきも言ったろ」
 「起業するって」
 確かに言ってたな。

 「それで?」

 「フッフッフッ」
 なぜココで不敵な笑みが出るんだ
 「それでさ」
 「ヒット商品を生み出して」
 「一山当てるんだ!」
 
 言っている事は理解出来るけどね
 簡単な事では無いよな。

 「そして、それを足掛かりに」
 「一流企業の仲間入りをしてだな」
 
 「ちょっと待った」
 
 「なんだよ〜」
 「コレからがイイとこなのに」
 親友は少しオーバーなリアクション付きで答える。

 「もしも、もしもだよ」
 「上手く行かなかったらさ」
 「俺達、借金まみれに成るんじゃないか?」
 
 「フッ愚問だな」
 「俺とお前がしくじる事など有り得ないぜ」
 「それと」
 「もしもの時は」
 もしもの時は?

 「真面目に働いて」
 「借金を返せばイイじゃないか?」
 
 「ふーっ」
 「俺達、夢の話しをしてるんだよな」
 そう、あくまでも親友の夢だ。

 「ああ、そうだとも」
 「どこかオカシイか?」
 
 「お前さ」
 「目がマジになってるぞ」

 「それだけ熱望してるのだよ」
 「判るだろ、友よ!」

 「もちろん判るけどさ」
 
 「だったら問題無いよな」
 「うおー! 天下を取るぞー」

 

 終
 
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