日々の僕たち

 「ハッ!ハッ!ハッ!」
 ドリブルでコートを駆ける
 三人の相手に囲まれそうになるけど
 すぐに抜け道が見えた
 でも、そこを抜けるのは私じゃ無い
 先に見えた味方にバウンドパス
 キマった!
 ボールを受け取った味方は
 ドリブルで相手バスケットへ接近
 レイアップシュートを
 見事に決めた。

 ピーッ!

 女子バスケットボール部顧問がホイッスルを鳴らす
 「ハイ! 注目!」

 部員達はその場で顧問を注視する。

 「外気温が三十度を越えました!」
 「残念だけど今日の活動はここまで!」
 顧問の発言に体育館のあちらこちらから不満の声が上がる。

 部活動は朝の六時から十時まで
 熱中症対策なのだけど
 今日はまだ八時半だ
 いくら何でも早すぎる。

 「文句は太陽にでも言ってね」
 「さあ、後片付けと掃除をはじめて!」
 部員達は渋々動き出す。

 私も床掃除を始めた。

 ····

 一通り片付けが終ると部長が号令をかける
 「集合!」
 「整列!」
 一糸乱れぬ様を確認して
 「礼!」

 「ありがとうございました!」
 部員達が大きな声で顧問に謝意を表す。

 「皆んな、こまめに水分補給してね」
 「それと、なるべく日陰を歩くように」
 「それでは解散!」

 部員達がワッとざわめく
 「先生〜今度から朝の五時スタートにしてくださいよ」
 数名の部員が顧問に直訴している。

 「ワタシは車だからそれでも良いけど」
 「あなた達はどうするの?」
 顧問は困ったように答える。

 「早起きして歩いて来ます!」
 熱意のこもった発言だけど、ちょっと現実的ではないかな〜
 私はそんな様子を見ながら
 荷物をまとめて帰路に着いた。

 外は猛烈に暑い。

 スマホの気象アプリを見ると
 三十四度! とにかく駅まで頑張ろう
 電車に乗ればコチラの物だ。

 電車に揺られる事三十分、家の近くの駅で降りる
 今まで冷房の効いた車内にいた分
 外の暑さが身にしみる〜っ。

 そんなこんなで無事帰宅。

 カギを使ってドアを開ければ
 エアコンの効いた涼し〜く無い?
 そう言えば今日は弟以外
 皆んな出掛けているので有った。
 
 この様子だと
 あの子まだ寝てるのかな
 まったくもう〜

 ドアを閉めてカギを掛ける
 スニーカーを脱いで玄関の隅に並べて置く
 「ただいま〜」
 私と弟の部屋が有る二階へ続く階段に向かって帰宅の挨拶をする。

 返事が無い
 まだ寝てるね
 もうすぐお昼なのに。

 仕方が無い起こしてあげよう
 自室に荷物を置いて
 弟の部屋へ。

 ドアノブに手を掛ける前に
 一応ノック
 コンコンコン!

 シーン····静まり返っている。

 「お姉ちゃんよ〜」
 「入っても良いわね?」
 ガチャリ!
 ドアを開けて部屋の様子を覗う
 ベッドの上で弟は気持ち良さそうに眠っている
 部屋に入るとエアコンが効いているので涼しい。

 「まったくも〜う」
 「こんな時間まで寝てるなんて」
 弟の肩に手をそえて優しく揺さぶる
 ユサユサ
 ユサユサユサ!

 「ん、だあれ〜」
 弟はまだ眠け眼だ。

 「お姉ちゃんよ」
 「起きなさい、もうすぐお昼よ」
 
 ムクリ!弟が上半身を起こした。

 「お昼? お腹空いた」
 「今日のお昼は何だろう」
 弟は目を擦りながら聞いてきた。

 「今日は誰もいないから、お姉ちゃんが作るの」
 「何か食べたい物は有る?」
 冷蔵庫の中は確認して無いけど
 大抵の食材は入っている
 何とかなるでしょう。

 「ウインナーが食べたい」
 
 「判ったわ、お姉ちゃんに任せて」
 こう見えても料理は得意です
 エヘン!

 私と弟は部屋を出て一階のキッチンへ
 弟はキッチンテーブルの椅子に座って待機
 私は料理を始める。

 「ねえ、何を作るの? ウインナーは入ってる?」
 
 「大丈夫よ、ちゃんと入ってるから」

 「お昼を食べ終わったら、夏休みの宿題を見てよ」

 「判ったわ、その代わり自分で考えるのよ」

 「どうしても判らない時は?」

 「その時はヒントを出してあげる」

 「お姉ちゃん余裕だね。近頃の中学生を甘く見ない方が良いよ」

 「私が勉強出来るの知ってるくせに」
 「ふふふっ」思わず笑みがもれる。

 「さ、出来たわよ」
 大皿に料理を盛り付け、テーブルに運ぶ。

 「わっ、ゴーヤーチャンプルーだ」
 「タコさんウインナーが入ってる」

 「ポークの代わりに、ウインナーにしてみました」
 「さ、召し上がれ」

 「いただきま〜す」
 「ハフハフ、もぐもぐ」

 「お味はいかが?」

 「美味しいよ! お姉ちゃんが作ったんだから」

 「ありがとう、ふふふっ」
 
 

 終
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