日々の僕たち

 もうすぐ朝のホームルームが始まる
 教室内は例によってざわついていて
 要するに 私には うるさい。

 いつもは イヤホンで音楽を聞いているんだけど
 今朝はバタバタしていて持ってくるのを忘れてしまった。

 今日は 音楽なしか。

 今から先が思いやられる。

 手にしたスマホを恨めしげに見つめ
 もちろん スマホに罪はないけどね
 昨晩 用意した再生リストを眺める。

 まぁ、つらつらと眺めていても仕方がない
 これからの過ごし方を考えよう。

 まずは今置かれている、やかましい状況だね。

 ····
 
 ダメだ良い過ごし方が思い浮かばない
 日頃安易に音楽に頼っている裏目が出た。

 それにしてもうるさい。

 特に 彼女
 机に両腕をついて友人と何やら歓談中だけど
 パンツ見えてるよ
 彼女の仲間たちは皆 スカートが短い
 
 そうそう、
 スカートの長さを見れば
 大体の交友関係がわかる。

 多くは、なぜか友人とスカートの長さを合わせている。

 もちろん 例外もいるけどね。

 ちなみに私は膝上10cm
 特にこだわりがある訳ではないけどね
 これぐらいが バランス良く見える。

 「はぁ〜」
 聞こえないように 小さく ため息をつく
 早く ホームルーム 始まらないかな。

 その時。

 「おはよう」
 一人の男子に声をかけられる。

 え〜と、誰だったっけ
 とりあえず 私も笑顔で返す
 「おはようございます」

 男子の緊張した顔が少し緩む。

 「今日は 音楽 聞いてないんだね」
 「どうしたのかな?」
 男子は 矢継ぎ早に聞いてくる。

 「今日は イヤホンを忘れてしまって」
 どういうことかな
 私は名前も知らない男子に話しかけられている
 もしかして彼は私に好意を持っているのかも
 だとしたら面倒なことになるね。

 なぜなら。

 私は彼に好意を持っていないから。

 「だったら僕のイヤホンを貸してあげようか」 
 彼はポケットからイヤホンを取り出した。

 気遣ってくれるのは、ありがたいけどね
 私が初対面の相手のものを使うと思っているのだろうかな。

 幸い 断る方法はある
 遠慮なく 使わせてもらおう。

 「私のスマホ、イヤホンジャックついてないの」
 私は彼にスマホを見せた。

 無言の彼。

 一体どうしたんだろうね?

 その時 ホームルームの開始を告げるチャイムが鳴った。

 彼は私を見たまま その場にたたずむ
 そんな目で見られても、私には どうしようもないよ。

 教室に担任の先生が入ってくると
 彼は慌てて自分の席へ戻った。

 もう私の所へ来ないで欲しいな。
 
 

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