日々の僕たち

 「ハイ、ワタシは終わったよ」
 
 放課後の教室
 親友と二人で 今日 出された宿題と格闘していたのだけれど
 それはアタシだけだったようだ。

 彼女は予定よりも 四十分ほど早く宿題を片付けると
 アタシに向かって
 「判らないトコがあったら教えてあげるよ」
 余裕の発言だ。

 どうする? これぐらいの問題は アタシにも判る
 ただ、彼女よりも時間が掛かるだけだよ。

 でも、この後 ショッピングセンターを見て回ることになっている
 宿題が早く終わるのならば、それに越したことはない。

 ここは、判らないふりをして彼女の手を借りるか?
 
 アタシのプライドが揺らぐ。

 注意力が散漫になり、問題を解くスピードが徐々に遅くなる。

 これでは予定の時間をオーバーしてしまう。

 判らないトコを教えると言ってきたのは彼女のほうだ
 そのために 焦りが出て、今の状況に陥っている。

 彼女にはアタシを助ける責任がある
 遠慮なく教えてもらおう
 これならアタシのプライドも傷つかない。

 ····友情よりも自分のプライドを取るのか
 いや、この決断は間違ってはいない
 誰だって自分が一番可愛いでしょ。

 それでは早速 教えてもらおう
 「ココと後コレも」
 アタシは一番時間が掛かりそうな問題を選んだ。

 「どれどれ? ここはね····」
 
 「ふむふむ、ナルホド」
 彼女の教え方は実に的確かつ 判りやすい
 問題を解くスピードがだんだん早くなってくる
 そして十分ほどで全ての問題を解き終えた。

 「ヤッター! 終わった!」
 どう? これがアタシの実力よ
 まぁ、彼女の助言あってこそ だけどね。

 それにしても彼女は教え方が上手い
 塾にでも通っているのかな
 いや、塾は勉強を教わる所だ
 教える所じゃないし、彼女が塾に通っていると言う話も聞いた事がない。

 ちょっと聞いてみよう
 「随分と 教え方が手慣れているね、どう言う事?」

 「家では弟と妹の勉強を見ているからね」
 「多分その経験が生かされたんじゃないかな」
 彼女は勉強道具を片付けながら言った。

 そういえば、兄弟がいるって聞いたことがある
 勉強を見てあげているのか。

 「両親は 共働きでしょ」
 「二人ともちょっと目を離すとすぐにゲームで遊び始めるの」
 「だから勉強を教えているの」
 

 アタシは一人っ子でやりたい放題
 彼女を少しは見習わないと。

 ところで。

 「兄弟って中学生くらいかな」

 「違うよ 小学生」
 親友は にっこり笑って答えた。

 何ですとー!
 アタシの頭は小学生並み?
 高校生にもなって!

 いやいや、そんな訳はない
 思わず両手で抱えた頭を振る。

 「どうしたの?」
 彼女が心配そうに聞いてくる。

 思わず 我に帰る
 何に劣等感を感じる事が有るのだろうか? アタシはアタシそれで良いじゃない。

 「ちょっと頭の切り替えをね」
 アタシは彼女に笑顔で返した。




 
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