日々の僕たち

 僕の額に冷たい銃口が当たり
 引き金を引く音を確かに聞いた。

 これで僕もおしまいなのか、どうしてこんな事になったんだ。

 そんな事を考えてしばらく経つ。

 しばらく····

 随分時間が経ったけど、いつになったら僕は死ぬんだろう
 本物の拳銃なんて見た事ないから
 銃弾が飛んでくる時間なんて当然知らない。

 うっすらと目を開けてみた
 相変わらず 銃口は僕の額に当たっていて
 拳銃を握る手の人差し指は、目いっぱい引き金を押えている。

 僕は慌てて 後退った。

 何かがおかしい
 まず、辺りが静まり返っている
 風の吹く音、車の走る音 ぐらい聞こえてもいいのに。

 街中が静寂に包まれている。

 そしてもう一つ
 全ての物の動きが止まっている。

 僕はどうなんだろう
 さっき後退る事はできたけど
 今は?

 ゆっくりと立ち上がってみる
 両手足も自由に動く。

 しかし 目の前の自衛官は相変わらず 動きが止まったままだ。

 一体どういう事だろう
 いや、これは逃げ出すチャンスだ
 僕は家のドアを開けようとして。

 ちょっと待てよ。

 家の中に逃げるのはマズい
 隠れる場所はあるだろうけど、いずれは見つかってしまう。

 僕は 動きの止まった 自衛官の脇を慎重に抜けて
 道路に出た。

 道路には数名の自衛官に警察官
 みんな 武装している
 本物のショットガンなんて 初めて見たよ。

 当然動きは止まっている。

 こういう時はどこに逃げればいいんだろう
 そうだ! 学校!
 先生たちなら 何とかしてくれるかもしれない。

 でも、先生たちも 動きが止まっていたらどうしよう
 いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。

 僕の命が係っているんだ
 とにかく 学校へ急ごう。
 
 
 
終 

 
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