日々の僕たち

 「はっ、はっ、はっ!」
 早朝の住宅街
 私は駅に向かって走っている
 今日は友人二人と遊びに行く約束があるのだけれど、集まる時間まで一時間以上ある。

 ならば、 もっとノンビリしててもいいのだけれどね。

 少し前に「私たちもう着いてるよ」ってSNS にメッセージが入っていて
 慌てて 現在の時間と昨晩のトークのやり取りを確認して
 まだ時間に余裕があることを確かめたけど、先に着いてると言われたら 急がないと!
 何か 裏がありそうだけどね。

 そんなこんなで集合場所の駅まで急いでいるんだけどね。

 目の前に商店街が見えてきた
 ここを抜ければ、すぐに駅だ
 それにしても疲れた〜
 少し休もう。

 乱れた息を整えながら
 ナップサックからハンドタオルを出して汗を取る
 近くの自販機でミネラルウォーターを購入、一気に飲み干す
 そして着衣を整えて
 ここからは早歩きで行こう。

 まだ早いのか、商店街は静まり返っている
 開いているお店はコンビニぐらいだ
 それにしても集合を急ぐなんて、何かあったのかな
 色々と思いを巡らせてみるけど
 これと言って 心当たりはない。

 「うーん······」

 SNS のグループチャットにメッセージを送ってみよう
 スマホを取り出しポチポチポチと
 「今商店街にいます、もうすぐ着くから」
 既読は付いたけど、これと言って 返信はない。

 商店街を抜けるとすぐに駅舎が見える
 休日だから人はまばら
 友人たちの姿も見当たらない。

 集合場所の駅の券売機脇にたどり着く
 やはり友人たちの姿は見当たらない
 どういうことだろう?

 その時、手に持つスマホが震えた。

 SNS に着信があったようだね
 慌てて開いてみると、不愉快なメッセージが。

 「そろそろ 駅に着いた?」
 「あーあ負けちゃった」
 「まだ判らないよ」
 何のことだろう、大方察しはつくけどね
 「駅に着くまで何分くらいかかった?」
 私はスマホの時計を見て返信した
 「二十三分」

 「やった 私の勝ち!」
 「だから負けたって言ったじゃない」
 
 私は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着け、メッセージを送った
 「どういうことなの?」

 すぐに返信が来る
 「賭けをしたんだよ私は三十分以内に到着」
 「私は三十分以上」

 「負けた方が今日のお昼を奢るんだよ」

 やっぱりそういうことか。

 「私のペナルティは?」
 一応聞いてみよう。

 「ペナルティなんてないよ?ただでお昼が食べられるんだから良いじゃん」
 「そうそう、私の奢りだよ」

 二人は何か勘違いをしているようだ
 でも、ことを荒立てても仕方がない
 「判ったよ ありがとう それよりも早く来てね」

 「もう家を出てる三十分ぐらいで着くよ」
 「私もすぐに出る!もう少し待っててね」

 「判ったよ待ってる」
 落ち着け私!こんなことで腹を立てていたら、あの二人とは付き合って行けないよ。

 笑顔だ、笑顔! 
 
 

 

 
52/127ページ
スキ