日々の僕たち

 いつもの公園の
 ジャングルジムのてっぺん
 久しぶりに三人が揃った。

 最近は勉強が忙しくて会う機会がなかったから、つもる話もあるんだけどね
 なんて言うか、誰かしゃべってくれよ
 二人を見てみると呆けたように遠くを見ている。

 無理もないか。

 この公園と隣接するイベント広場
 それと周辺の空き家を取り壊して
 新しくマンションを建てるんだって。

 この公園は小さな頃から俺たちの遊び場だった
 色々な思い出が詰まった場所だよ?
 確かに最近は遊ぶ子供も少なくなったし、流行り病の影響でイベント広場も使われてない。
 
 でも、犬の散歩にウォーキングとかジョギング
 公園とイベント広場周辺を使っている人は多い
 俺たちも含めてね。

 そう言えば近くのコンビニのおじさんとおばさんは
 お客さんが増えるって喜んでたっけ
 マンションが完成するタイミングに合わせて店を改装するとか言ってたな
 何らかの利益を得る人達もいると言うことか。

 「利益ねぇ」
 思わず声に出てしまった。

 「誰かが得をしなきゃマンションなんて建たないぜ」

 「誰が得をするのかな?」

 なんだ皆んな同じような事を考えていたのか
 「不動産屋に建設業者それとコンビニのおじさん達」

 「町内会にもお金が落ちてたりしてな」

 「そうなの? この町も少しは綺麗になるのかな」

 そういう意味じゃないんだけどね
 「大人は色々と腹黒いって言うことだよ」

 「そうそう! ヘッヘッヘ」

 「僕はそんな大人にはなりたくないな」

 それは立派な考えだとは思うけど、世渡りをするには少しぐらいはね
 「お前みたいなタイプが一番危ないんだよ?」

 「お前、将来何になるんだ?」

 「政治家かな」

 言うと思ったよ
 「政治家になって何をするつもりなんだ」

 「大事なところだぜ」

 「世直しかな、今の日本を立て直す」

 随分と漠然とした答えだな
 「厳しい言い方になるけど、それは無理だと思う」

 「そうか? やってみなきゃ判らないぜ」

 「そうだよ! 僕はそのために勉強してるんだから」

 決意は固いか
 「そこまで言うなら俺はお前を応援するよ」

 「具体的にどうやって応援するんだ」

 「後援会のリーダーになってよ」

 リーダーかそれも悪くないな
 「判ったよ立候補する時は俺に任せろ」

 「いいのか? そんな安請け合いしてさ」

 「ありがとう! でも、どうやったら政治家になれるんだろう」

 それもそうだ選挙に立候補するのは誰にでも出来るような気がする
 「日頃の行いだな。例えば良いことをすれば支持者が増える」

 「気をつけろ? 一歩間違えれば教祖様だぜ」

 「判ったよ、ありがとう!」

 本当に判っているのかな
 こいつには誰かが付いていないと駄目だ
 後援会のリーダーの事は本気で考えないとな
 「そろそろ行くか」

 「午後から雨だって言ってたぜ」

 「中華まん食べるよね、僕買ってくるよ!」

 三人はゾロゾロとジャングルジムを降りる
 コンビニへ向かう彼を見送る二人

 「政治家か随分とハードル高いぞ」

 「そんなことよりさ、あいつ自分のアイス買ってくると思うか?」

 「買ってくるんじゃないかな」

 「だよな、ハッハッハッ」

 
終 

 
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