日々の僕たち

 俺は決してイケメンではなく
 勉強もスポーツも人並み
 ついでに言うと性格はひねくれて居る
 そんな俺にも。

 俺にもだ!

 驚くな? 彼女がいるんだ
 美人で
 勉強もスポーツも出来る
 性格は凛として居てそれでいて優しい
 俺にはもったいない彼女だ。

 もちろん俺も彼女に追いつくべく努力はしている
 釣り合った男になるべく頑張っている
 しかし彼女は常に一歩先を行く。

 付き合い始めた頃は、俺は彼女の引き立て役として選ばれたのではないか? と思ったほどだ。

 しかし初めて彼女と互いに手を取った時、彼女の想いが伝わって来た
 最初は俺の錯覚かとも思ったが
 デートのたびに繋いだ手から愛情が伝わって来る
 俺の錯覚なんかじゃない!
 
 彼女の想いに応えるべく俺は唇を合わせた。彼女はわずかに震えていたので、安心させるべく俺は優しく抱きしめた。

 二人の愛情はさらに深まった。

 そして、ついに二人は一線を越えたのであった
 「俺は大人になった」なんて自惚れちゃいないよ? 俺には義務と責任が出来たのだ
 彼女を守り愛しむと言うね。

 「と、言う訳だ妹よ」
 
 妹は着替え終わると言った
 「いきなり乱入して来て何を語っているの? お兄ちゃん」
 ん? 予想外の反応だぞ
 「いや、お前が気にしていると思って」
 妹は俺のほうを見て
 「別に気にしてなんかいないよ?」
 「幸せそうでよかったね」
 
 おかしいぞ
 兄思いの妹らしからぬ発言だ
 まさかとは思うが
 「お前、嫉妬しているのか?」

 妹は体をビクッと震わせ顔を紅くしてまくし立てた
 「べ、別に嫉妬なんかしていないんだからねお兄ちゃん何を言っているの私にはさっぱり判らないわ!」
 
 どうやら図星のようだ
 俺は妹に何をしてやればいいのだろうか?
 とりあえず手でも繋いでみるか。

 俺は妹の右手を取りギュッと握った
 すると妹は慌てて
 「わわわ! お兄ちゃん何をするの!」
 まずいぞ逆効果だ
 俺は繋いだ手を離し、妹を優しく抱きしめた
 妹はされるがままに身体の力を少し抜き俺に身を預けてきた
 「お兄ちゃん」
 「なんだ?」
 「最初にお兄ちゃんを好きになった人はね?」
 「妹よ、お前だろ?」
 「そうだよ小さな頃から好きだったんだから」
 俺の顔を見る妹の瞳は潤んでいる
 そして
 「彼女さんと同じ事を私にもして」
 俺は迷わず返した
 「それは出来ない二股になるからな」
 「それに彼女とお前を侮辱する事になる」
 妹は微笑みながら少し寂しげに
 「よかった少しはまともなお兄ちゃんで」そして預けていた身体を俺から離した。

 俺は思わず
 「そんなに褒めるな妹よ」
 「そうだ! また今度どこかに連れて行ってやるぞ」

 妹は涙を拭い笑いながら
 「もういいよ、お兄ちゃん。彼女さんと一緒に行ってあげて」

 「本当にいいのか? これが最後になるのかも知れないぞ」
 もしかしたら寂しいのは俺の方かも知れない
 今それに気がついた
 「お前の想いに甘えて束縛していた」
 「お前には進むべき道があると言うのに」
 
 妹はキョトンとしながら
 「待ってお兄ちゃん、そこまで深刻にならなくても」
 
 いや、これは俺の決意表明だ
 「妹よお前はこれから自由だ、自分の信じる道を進むがいい!」

 俺は軽く手を振りながら妹の部屋を出た。

 「私の信じる道? 自由?」
 部屋に残された私は、ただ呆然とするしかなかった。



 
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