日々の僕たち

 やっと着いたか
 今日は電車に乗って少し離れたゲームショップに来ている
 ゲームソフトは地元の駅前に有ったショップで予約した。そう、有ったのだが
一か月前に撤退した
 幸いにも予約したゲームソフトは系列店で受け取れる事になったが、一番近いショップでも電車で1時間近くかかる。

 毎回これだと正直きつい
 しかし自宅受け取りにすると母にバレてしまう
 母はテレビゲームが嫌いなのだ
 やれ目が悪くなるだの、あるいは勉強しなくなるだのと文句を言われる
 学業はこれでも頑張ってるんだぜ?
 期末テストでは学年トップ5以内を維持しているし。家事の手伝いもしている
 でも母曰くそんなの当たり前でしょ?
 
 もしかして俺は母にいいように使われているのかもしれない。

 でも、しょうがないか親に養われている身だし
 学校を卒業して職に就いたら思う存分ゲームを! しかし、それで借金まみれになった先輩を1人知っている
 俺には自制心があると思いたいけど、はっきり言ってどうだろう?
 自問してみるが答えは出ない
 そんな状況でダラダラとゲームを続けていていいのだろうか。

 考え事をしながら歩いていたら目的のショップを通り過ぎてしまった
 慌てて今来た道を戻りショップの前へ
 やれやれ。

 自動ドアが開き店内に入ると新商品の棚が目に入ってきた
 色とりどりの販促用ポスターそれに手書きのポップ、BGMは今流行りのRPGの物だ
 店内はかなり広くほとんど全てのハードのソフトを扱っているのではないだろうか? 地元のショップとのあまりの違いに呆然としていると、1人の店員が近づいてきた「いらっしゃいませ当店は初めてでございますね?」
 なんと! そんな事も分かるのか!
 俺は慌ててメンバーズカードを取り出し店員に見せると今までの経緯を説明した。

 「かしこまりました、ではこちらへどうぞ」店員はどこまでも丁寧だ
 それでいて客に媚びへつらわない
 シャキッと伸びた背筋からそれが感じ取られた
 自分の仕事とこの店に誇りを持っているんだな。
 
 店員の後をついてレジへ向かう途中、アルバイト募集中の張り紙が目に付いた
 ここで働くのもいいかもしれないな仕事はきつそうだが自分を磨くには討手つけだ
 しかし募集年齢は18歳から俺はまだ16歳だ残念。

 レジに着くと俺を案内した店員はレジの店員に向かって事情を話した
 そして笑顔で「ごゆっくりどうぞ」と俺に向かって言うと自分の持ち場へ戻っていった。

 レジの店員は俺からメンバーズカードを受け取ると端末を操作して、おそらく情報を読み出しているのだろう
 すぐに笑顔で「こちらお返ししますね」と、メンバーズカードを俺に手渡した
 そして「少しお待ちください」と言いレジ裏のバックヤードに入っていた
 そしてすぐに戻ってくると「こちらで間違いありませんね?」手には予約したゲームソフト。

 俺もできるだけ丁寧に
 「間違いありません」と、返した。

 終
 
 
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