日々の僕たち

 「結局こうなるのか」
 ぼそっと呟いたつもりだったが、美術室の皆に聞こえてしまったらしい
 「部長、来年がありますよ!」
 「私たちはまだ諦めていません」

 ぽつりぽつりと激励の言葉が。

 「ありがとう、3学期も始まったばかり! まだまだこれからだよ」
 粘土をこねながら激励に答えた。

 その一方で、「所詮無駄な抵抗です美術部の印象が悪くなるので止めてください」との手紙が靴箱の中に入っていたりもした。

 前部長は俺を副部長に任命すると翌日には受験勉強を理由に退部した
 その日以来生徒会とのパイプは途切れてしまい、美術室へのエアコン設置の話に取り合ってくれる役員はいなくなった
 さらに決定していた扇風機の導入もなかった事になり、新たに部長になった俺としてはあまりにも悪い滑り出しとなった。

 しかし、ここで引いては先代の部長と同じ道を歩む事になる
 そこで俺は生徒会副会長に接近する事で活路を見い出そうと画策したのだが、生徒会役員の知る事となり
 あえなく失敗
 来年度の活動費以外の交渉には応じないと通達が出た
 生徒会の総意だと書いてあったが、どこまで本当やら?
 
 そもそも今の生徒会は一部の役員に牛耳られている
 全校生徒はもちろん、教員も知っているが生徒の自主性を重んじると言う校則
を盾にして自分たちのやりたい放題だ
 「規律を守り秩序ある学園生活を」
 よく聞くフレーズだが、保護者や教員それに卒業生達へのウケはいい。

 でも現役の生徒達は規律と秩序なんか望んじゃいない
 「自由で楽しい学園生活」だろ?
 もちろんハメを外さない程度にね。

 でも一部の生徒会役員は自分たちの実績に傷がつくのを恐れてか、容赦なく締め付けてくる
 一体将来は何様になるつもりなんだ?

 副会長と接触して判った事だけど
 生徒会も一枚岩ではないそうだ
 ここだけの話とされたが、もし生徒会を突き崩したければウィークポイントを探せと言われた。

 ウィークポイント? もっと砕けた表現にしてくれればよかったのに。要するに弱点か何か?
 うーん、役員の弱みを握る事ぐらいしか思いつかないぞ
 でも、そのやり方は俺の主義に反する
 対等な立場でやりあってこそ! とは言う物の既に現状は対等な立場ではなく
 俺のプライドはここでは納めるべきか
 多少卑怯だが弱点を探す事にしよう。

 少なくとも美術部の存続がかかっているかも知れないしな!


 
 
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