日々の僕たち

 自宅の俺の部屋に親友と二人きり
 今日は久しぶりに遊びに行く予定だったのだが雨で中止
 俺はスマホでゲーム
 親友は黙々と何かの本を読んでいる 

 「ふわぁ〜あ、退屈だなおい」
 親友の反応を見てみる。

 「いや別に」
 親友は本に目を落としたまま答えた。

 相変わらずだ
 そりゃあお前はそれでいいだろうが、少しはこっちの気持ちも察してくれ。

 仕方がないので暇つぶしにスマホのカメラで親友を見る
 黒髪、ショートカット、茶色の瞳。

 白くて細い首、華奢な肩のライン
 そして大きめの胸
 おっ?今日はブラじゃなくてハーフトップだ
 「なあ今日はどうしたんだ?」
 ストレートだが聞いてみた
 「どうしたって何が」
 それもそうか
 「ハーフトップ」
 親友は相変わらず本を読んだまま
 「ブラのサイズが合わなくなってね」
 「この間新しいの買いに行ったけど結構な値段するんだよ」
 淡々と答えた。

 値段を聞いちゃまずいかな? 少し悩んだけど思い切って聞いてみる事にした
 「いくらぐらいするんだ? そういうの」

 「確か一万八千五百円だったかな」
 
 なんですとー! 新品のゲームソフトが二本買えるぞ
 しかも俺の小遣いより多いじゃないか
 「今までそんな高いのを身に着けていたのか」驚きの感想

 すると親友は
 「フフフッ、まさか」
 「身体に合うのが、それしかなかったんだよ」そして続ける
 「イタリアからの輸入品でね〜」
 「さすがに値段が高すぎるし、学校に身に着けて行ったら速攻で剥ぎ取られちゃうよ」

 なるほど!そういう事か。
 「それで安いハーフトップにしたという訳か」

 親友は本を閉じ、俺を見て言った
 「これも五千円近くしたけどね」
 「機能性下着っていうやつだよ」

 どういう機能なんだろう?
 「機能性ねぇ〜蒸れないとか肌に優しいとか、そういうのかな」

 親友曰く
 「あとは抗菌作用にバストアップ、いわゆる寄せて上げるって言うやつだよ」
 
 「それで今日は胸が目立っていたのか」納得しました。

 「でも、この下着は失敗だったかも」
 親友はため息をつくと
 「足元が見えないから階段を降りる時にちょっと危ない」

 「バストアップが過ぎるという訳か」
 まてよ?
 「でも、それだったら今までだって」

 親友は困った顔で
 「以前はかろうじて見えていたんだよ」
 「何とかならないかなぁ〜」

 ここまで親友の胸に対して突っ込んだ話をしたのは初めてだ
 何とかねぇ〜
 「月並みだけど、さらしを巻くとか」

 親友は真顔で
 「形が崩れる。それは絶対にやだよ」

 うむぅ
 「こだわりがあると言う訳か」

 すると
 「そう言うのとはちょっと違うかな」
 親友はおもむろに T シャツを脱ぎだした

 俺は慌てて手で目を塞いだ。

 「見てもいいよ」親友の優しい声が聞こえる。

 それならば遠慮なく
 考えてみればプール行った時水着を見ているのだから別に恥ずかしがる事はないか。

 「どう思う?」
 親友からの質問

 俺は素直で簡潔な答えを選んだ
 「綺麗だよ」

 親友は少し頬を染めて
 「ありがとう」
 「自惚れかも知れないけど自分でもそう思う」
 「せっかくの授かりものだからね日頃から手入れもしてるんだよ?」
 「だから粗末に扱いたくないんだ」
 「私はこの胸を誇って生きて行きたい」
 
 普段は無口な方の親友がこんなに喋るなんて珍しい
 これからは親友の考えを尊重して、迂闊な発言をしたり変な目で見るのはやめよう。

 「判ったよ、これからは不注意な発言は控える!」

 「う〜ん、それだと堅苦しくなっちゃう自然体でいいんだよ」

 「それじゃあ、もし階段でコケそうになったらすぐに手を差し出すよ」

 「フフフッ何それ? でも君らしいね」
 「いいよ、その時は遠慮なく手を借りるよ」

 俺は大きな声で答えた
 「おう、任せておけ!」


 

 
 
 
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