日々の僕たち
「そう固くなるなよ」
僕の父親とあまり変わらないような年の隊長に肩をポンと叩かれた
「ドイツ野郎が来たらそこから機銃をぶっ放してればいい」
僕が乗込んでいるB-17は、まるでハリネズミのように機銃が配置されている
その一つを僕が任されているのだが、
今日が初陣だ
緊張するなと言うほうが無理。
隊長が続ける
「敵機を撃ち落とす必要はない、接近されないように牽制すればいいだけだ」
「敵機の相手は味方の護衛戦闘機に任せておけばいい」
隊長はベテランだ。このB-17で5回出撃して全て無傷で生還している。
だから言うことを聞いていれば間違いないのは判る。
しかし初対面でもある。
色々と判らない事も多い
例えば僕の銃座には誰がいて、どうなったのか? 隊長に聞くべきだろうが怖くて聞けない自分がいる
それが隊長への不信感にもなっている
迷いは自分を殺すと言うけど、この状況で覚悟を決めるのは難しい。
隊長に目をやると他の隊員に声をかけている
新人の僕以外は皆知った顔だ
リラックスしながら隊長と話をしている
僕は孤独感を覚えた。
その時コクピットにいる操縦士から通信が入った
「前方に敵機確認! 味方と戦闘に入った!」
上部銃座の隊員が叫んだ
「側面に敵機確認! 味方の防衛網を破ったぞ!」
隊長は全員に指示を出す
「敵機が見えたら構わず撃て! 遠慮は無用だ!」
「了解!」
「味方は何やってんだよ!」
「来た! 射撃を開始する」
僕はどうすればいいんだろう?
その時隊長から通信が入った
「何をぼさっとしている! 敵機が見えるか?」
「敵機・・・見えます!」
「撃て、機銃のオーバーヒートに気を付けろ!」
「はい」
「聞こえないぞ、もう一度!」
「はい!」
機銃を撃ち始めるが、振動が結構強い
なかなか狙いが定まらない
これでは牽制するも何もない。
他の隊員も苦戦しているようだ
「もう5、6発は当てるぞ? なぜ落ちない!」
「装甲板が貼ってあるんだ、もう少し後ろにある燃料タンクを狙わないと!」
「クッソ!手の込んだまねを!」
そうこうしているうちに、徐々に編隊が崩れていく
「敵のやつらこれが狙いだったのか」
「誰か友軍機に通信を! 編隊を維持しないと、一機ずつ落とされるぞ」
操縦士が大声で指示を出す。
隊長が無線機で味方に通信をしているが、どの機体も敵機にまとわりつかれてパニックに陥っているようだ。
その時、敵の一機が僕がいる銃座の前へ向かって大きく弧を描いて突っ込んできた
「来るな! 来るなよ!」
機銃を撃つが、敵は真っ直ぐ突っ込んで来る。
僕は思わず銃座を離れた
「持ち場を離れるな! 撃ち続けろ!」
隊長の怒声が飛ぶ
その瞬間、ドカッと大きな音を立てて敵が銃座に突っ込んで来た。
「ドイツ野郎め、クレイジーだ」
隊長が吐き捨てるように言った。
「そいつを何とかしてくれ! 高度がどんどん下がっている!」
操縦士がこちらへ向かって叫んだ。
「こんなバカでかいの、どうしろって言うんだよ?」
確かに人力でどうなる物でもない
「爆弾を全て捨てて身軽になるんだ!」
「ここは居住区だ、それは出来ない」
「ドイツ野郎がどうなろうと知ったこっちゃないんだよ!」
「総員脱出するぞ!パラシュートを身につけろ!」隊長が決断を下した。
確かにそれが最善策かもしれない
でも僕はドイツ軍の捕虜にはなりたくない!
僕は拳銃を抜いて頭に当てた。
「おい、バカな真似はやめろ!」
隊長がそれを言うが早いか、
僕は静かに引き金を引いた。
終
僕の父親とあまり変わらないような年の隊長に肩をポンと叩かれた
「ドイツ野郎が来たらそこから機銃をぶっ放してればいい」
僕が乗込んでいるB-17は、まるでハリネズミのように機銃が配置されている
その一つを僕が任されているのだが、
今日が初陣だ
緊張するなと言うほうが無理。
隊長が続ける
「敵機を撃ち落とす必要はない、接近されないように牽制すればいいだけだ」
「敵機の相手は味方の護衛戦闘機に任せておけばいい」
隊長はベテランだ。このB-17で5回出撃して全て無傷で生還している。
だから言うことを聞いていれば間違いないのは判る。
しかし初対面でもある。
色々と判らない事も多い
例えば僕の銃座には誰がいて、どうなったのか? 隊長に聞くべきだろうが怖くて聞けない自分がいる
それが隊長への不信感にもなっている
迷いは自分を殺すと言うけど、この状況で覚悟を決めるのは難しい。
隊長に目をやると他の隊員に声をかけている
新人の僕以外は皆知った顔だ
リラックスしながら隊長と話をしている
僕は孤独感を覚えた。
その時コクピットにいる操縦士から通信が入った
「前方に敵機確認! 味方と戦闘に入った!」
上部銃座の隊員が叫んだ
「側面に敵機確認! 味方の防衛網を破ったぞ!」
隊長は全員に指示を出す
「敵機が見えたら構わず撃て! 遠慮は無用だ!」
「了解!」
「味方は何やってんだよ!」
「来た! 射撃を開始する」
僕はどうすればいいんだろう?
その時隊長から通信が入った
「何をぼさっとしている! 敵機が見えるか?」
「敵機・・・見えます!」
「撃て、機銃のオーバーヒートに気を付けろ!」
「はい」
「聞こえないぞ、もう一度!」
「はい!」
機銃を撃ち始めるが、振動が結構強い
なかなか狙いが定まらない
これでは牽制するも何もない。
他の隊員も苦戦しているようだ
「もう5、6発は当てるぞ? なぜ落ちない!」
「装甲板が貼ってあるんだ、もう少し後ろにある燃料タンクを狙わないと!」
「クッソ!手の込んだまねを!」
そうこうしているうちに、徐々に編隊が崩れていく
「敵のやつらこれが狙いだったのか」
「誰か友軍機に通信を! 編隊を維持しないと、一機ずつ落とされるぞ」
操縦士が大声で指示を出す。
隊長が無線機で味方に通信をしているが、どの機体も敵機にまとわりつかれてパニックに陥っているようだ。
その時、敵の一機が僕がいる銃座の前へ向かって大きく弧を描いて突っ込んできた
「来るな! 来るなよ!」
機銃を撃つが、敵は真っ直ぐ突っ込んで来る。
僕は思わず銃座を離れた
「持ち場を離れるな! 撃ち続けろ!」
隊長の怒声が飛ぶ
その瞬間、ドカッと大きな音を立てて敵が銃座に突っ込んで来た。
「ドイツ野郎め、クレイジーだ」
隊長が吐き捨てるように言った。
「そいつを何とかしてくれ! 高度がどんどん下がっている!」
操縦士がこちらへ向かって叫んだ。
「こんなバカでかいの、どうしろって言うんだよ?」
確かに人力でどうなる物でもない
「爆弾を全て捨てて身軽になるんだ!」
「ここは居住区だ、それは出来ない」
「ドイツ野郎がどうなろうと知ったこっちゃないんだよ!」
「総員脱出するぞ!パラシュートを身につけろ!」隊長が決断を下した。
確かにそれが最善策かもしれない
でも僕はドイツ軍の捕虜にはなりたくない!
僕は拳銃を抜いて頭に当てた。
「おい、バカな真似はやめろ!」
隊長がそれを言うが早いか、
僕は静かに引き金を引いた。
終