日々の僕たち

 まいったな小説のネタが尽きたぞ
 もう少し小出しにすればよかった
 しかし読者サービスを考えれば大盤振る舞いも必要。

 別に小説を書くのは義務じゃないからしばらく休むという手もあるけど
 あまりにも休みが長いと忘れられてしまう
 それは何としても避けなければならない。

 どうしたものやら
 気分転換に夏休みの宿題でもやるか?
 いや、逆だな
 元を正せば勉強の息抜きに小説を書き始めたんだから
 そう、学生の本分は勉強なのだ!
 急がなくても小説は大人になってから書けばいい。

 でも小説投稿サイトでは、それなりの順位につけているし読者も増えてきている。

 これらを全て捨てられるかどうか
 それに今書いてる小説はどうする? 未完結のまま放っておけないぞ、俺は中途半端は嫌いだ。

 ん、そろそろ夕食だ
 この問題は飯食ってから考えるか〜

 居間へ行くと夕食の仕度は終わっている
 父と姉は既に食事を始めていた
 「あれ、母さんは」
 誰にともなく聞いてみる
 「あんたの夜食を作っているよ、どうせ小説でも書くんでしょ」姉の答えは少し皮肉まじりだ
 その通りなのだが、嘘も方便
 「今夜は夏休みの宿題だよ」
 すると父が言った
 「いい心がけだ学生の本分は勉強だからな」
 「なんだい小説は書かないのかい」
 母が台所から戻ってきた
 「勉強なんていつでも出来るんだから今しかできない事に集中しなさい」
 なかなか理解のある母なのだが、時々行き過ぎた事を言う
 「お母さん、あまり甘やかさないで」
 「小説なんかじゃ飯食っていけないよ!」
 姉は俺が小説を書くことに反対している
 理由は今言った通りだ、確かに小説で食っていくのは難しいかもしれないな
 しかし、そういう姉だってガリ勉で良い会社に入れるとは限らない
 それにズルズルと浪人する可能性もあるし。この件に関してはなぜか触れない姉である
 全員が食卓につき食事を始めた
 食事が始まるともう誰も話さない
 テレビも見ないので後はもう咀嚼音だけが響く。

 「ごちそうさま〜」姉が食事を終え空の食器を持って居間を出る
 「あの子来年の大学受験は大丈夫なのかしら」母が小声で言う
 「大丈夫じゃないのか? 勉強はしてるんだし」相変わらず父は楽観的だな
 勉強は量より質だと俺は思う
 いくら知識を詰め込んだって役に立たない時もあるだろうし。

 「ごちそうさま」俺も空の食器を手に取り居間を出る。

 「夜食は冷蔵庫の中だからね」
 後ろから母の声が聞こえる
 「わかったよ、ありがとう」今日の夜食は何だろう? 気にはなるが、まあ後でいいか。

 歯を磨き部屋に戻ると、デスクの PC へ向かって椅子に腰掛ける
 しばらく考え込むがネタは出てこない
 仕方がない夏休みの宿題でもやろう。

 カリカリ、カリカリ
 シャーペンが紙の上を滑る音が聞こえる
 宿題の量を考えると滅入ってくるが仕方がない
 皆んなは今頃何をしてるんだろうか
 SNSを開きグループを見てみる
 ほとんどメッセージ、コメントがない
 「勉強してるか、あるいは遊んでいるか」俺も少し休むか
 一日中デスクに向かっていてもネタが思い浮かぶわけでもなし
 まぁ、勉強は捗るけどね
 時には気分転換も必要だ。

 そうと決まれば買っておいて読んでいない漫画とラノベでも
 いや、それでは結局変わらないじゃないか。

 夜の散歩にでも出かけよう。


 
 




 
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