日々の僕たち

 後1ヶ月か
 他の奴らはほとんど登校していないけどさ
 単位が足りない俺は、補習の為に学校へ。

 留年も覚悟してたけど
 先生達は俺が居ると困るらしい。

 まぁ、思い当たる節はあるけどさ
 たかが喧嘩に授業中の居眠り
 これって悪い事なのか?

 降りかかる火の粉をはらって
 学費を稼ぐ深夜バイト。

 それくらい皆んなやって····
 
 チッ!面倒な奴らが居やがる
 よりによって校門の前で待ち伏せか。

 1人、2人、全員で15人
 今まで俺と縁のある奴らがお揃いだ
 どうする?さすがに此処では手出しをしないだろうけどさ、場所を変えてもな。

 15人は多過ぎるだろう、なぁ?

 俺は20m程先で歩みを止めた
 この距離なら逃げ切る自信がある
 ボコられると判っていて突っ込むのはバカ者だ。

 「おい、何してるんだよ!そんな所じゃぁ話しも出来やしない!」
 リーダー格の1人が声を張る。

 話しだって?

 「今更なんの用があるんだ!」
 俺も応えてみる。

 「いいから!こっち来いよ!」
 リーダーの目はいつもと違って心なしか穏やかに見える。

 どうする?アイツを信じてみるか。

 俺は両手をズボンのポケットに突っ込み、距離を詰める。両手を収めたのは敵意の無い事を示した訳だが、果たして奴らに通用するか?

 距離が近くなるとリーダーが両手をズボンのポケットに収める。

 それを見た他の奴らも両手をポケットへ。

 どうやら、やり合うつもりが無い事は伝わったらしい。だが油断は禁物、警戒しながらリーダーの前に立つ。

 でも、やる気が無いのならば何故皆んなして集まったんだ?それをリーダーに聞こうとした時、奴の口から思いがけない1言が。

 「オマエ、卒業出来るんだってな」

 「はぁ?」思わず間抜けな1言が。

 「はぁ、じゃねーよ」リーダーは呆れた様に応える。

 「じゃあ、ありがとうございます」
 俺はリーダーに頭を下げた。

 「おいおい、そんなつもりでって!まぁいいか」

 だったら何のつもりだ?俺の頭の中で、なにかがグルグル回りだす。

 「とーにかく、今日は1言礼がしたくてな」

 リーダーの言の葉で更に頭の中がグルグル回る。コイツこんなキャラだったっけ?

 「コホン!」
 「まぁ、なんだオマエのおかげで俺達も1人前の度胸と腕っぷしがついたよ」
 「今までの関係がチャラになる訳じゃ無いけどよ、卒業したらもうバカは止めろよ!」

 俺の頭のグルグルが収まる。

 リーダー以下、全員が真剣な目で俺を見る。

 「そうだな、オマエにそう言われたら大人しく過ごす事にするよ」
 「でもさ、どうしても許せない奴が現れたら····」

 リーダーは俺の言の葉を遮り。

 「それでもダメだ!オマエは真っ当な道を歩け!」

 リーダーは右手を広げ俺の胸に当てた。

 手のひらから熱い鼓動が伝わってくる。

 「判ったよ、オマエの誠意に応えよう」
 俺はありったけの思いを込めた。

 リーダーは手を離すと
 「判りゃいいんだよ」

 そう言い残し手を振って仲間共々去って行く。

 さて、これは伝えておいた方がいいかな
 「おーい!オマエらの耳と鼻に付いてるピアス、喧嘩中に何度引き千切りたい衝動にかられた事か。気を付けた方がいいぞー!」

 アイツらは揃って耳に手を添えて俺の方を振り返る。

 リーダーが1言
 「余計なお世話だ!」

 

終 
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