日々の僕たち

「ほうらゴロゴロゴロ」

 「ゴロニャーン」
 猫の喉を両脇から優しく攻めると、参った!と言わんばかりにヘソ天で身悶えしている。

 「アンタさぁ、本当に猫好きよね」
 遊歩道の真ん中で猫をもて遊ぶ俺に向かって、彼女からもう何度聞いたか判らない1言が投げかけられる。

 「仕方がないだろ?好きになっちゃたんだから」
 俺も何度応えたか判らない。

 「そろそろ行こうよ」
 ため息交じりの彼女。

 仕方がない、こっちの相手もしておかないと。
 
 猫は可愛いけれど、将来結婚できる訳にあらず。

 彼女も可愛い。猫に劣らずね。

 だから俺が取るべき道は彼女との関係をもっと深めて、将来は結ばれると言うね。もちろん今でも充分深いし、結ばれだってしている。

 「ヨイショっと!」
 俺は立ち上がると寝転がる猫に向かって
 「じゃぁ、またね」
 
 猫も我に返り起き上がると、俺の足元に身体をこすり付けてくる。ズボンが毛まみれだ。

 「やれやれ」
 去って行く猫を見守りながらズボンの毛を叩き落とす。

 「これが無ければ猫もいいんだけどね」
 彼女も一緒に毛を叩き落とす
 「こんなものじゃない?さ、行くわよ」
 俺の手に彼女が手を絡めてくる。

 「少しお腹が空いたな、何処か寄る?俺がおごるよ」本当は真っ直ぐ家に帰って課題をやっつけないと後で困るけどね、彼女の機嫌もとっておかないと更に困る。

 「ゴメン!せっかくのお誘いだけど課題が2つも出てて」彼女は顔の前で手を合わせる。

 なんだ、だったら
 「俺も課題が出てるんだ、一緒にやろう」

 「本当に!判らないところ教えてくれるかな?」彼女は申し訳なさそうに俺の顔をみる。

 「任せておけ、伊達に学級委員長はやってないぜ?」

 「やった!それじゃぁ早速私の家に」
 彼女は結んでいた手をほどき、俺の腕を掴みグイグイと引っぱる。

 「おいおい、腕が抜けるよ」

 「テヘヘ♡でも急がないと妹が帰って来ちゃう」

 あのマセガキか、玄関で鉢合わせでもしたら何を言われるか判ったもんじゃない。

 「そうだな、急ごう」

 「急ぎましょ!」





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