日々の僕たち

「はぁ〜」

 「どうしたの?ため息なんかついて」

 幼馴染の彼女は理由を知ってるクセに毎年俺に聞くんだ。

 「なぜソレを聞くんだ?」
 俺は彼女に尋ねる。恨めしそうな面持ちでな。

 「大丈夫だよ、まだ下校途中だし。チャンスはある!」
 そのセリフ去年も聞いた覚えがあるぞ?デジャヴか何かか。

 「お前さえ居なければ、今頃俺は!」
 少しキツめだったかな?でも実際彼女が俺の側に何時も居たらさ、付き合っていると思われて・・・・

 「まって!なぜボクはいきなり抹消されるの?」
 彼女は腕を組んで頬を膨らませている。

 やっぱマズかったか。

 「悪い、もう2度と口にしないよゴメンな」
 しかし俺はお前にでは無く、組んだ腕で上向きに強調された胸に敗北したのだ!そう思わないと俺のメンツが立たない。

 「まぁ、別に気にしてないけど」
 彼女も鉾を収めた。

 「ところで此の後どうする?」
 何時もだと一緒に宿題を片付けるかゲームで盛り上がるかそんなところだ。

 「ボクの家に寄ってよ。頼みたい事があるんだ」

 「面倒はゴメンだぞ」

 「大丈夫、チョットしたお手伝いだよ」

 手伝いねぇ、力仕事は勘弁して欲しいけどチョットだけならイイかな。

 「判った、でも本当にチョットだけだぞ」
 いくら幼馴染のお願いとは言えホイホイと引き受けていたら切りが無い。一線を引く事も頭に入れて置かねばな。

 そして。

 「もっと細かく刻んで!それじや溶けないよ?」
 彼女が声を張って指示を出す。

 「でもコイツ硬くて!」
 なぜカカオ70%なんだ?ミルクチョコレートではダメなのか!
 
 彼女は俺の隣で様々なナッツを刻んでいる。

 「鼻歌なんぞ歌いおって、お気楽だな!」

 「君が手こずる事をボクにやれと?」

 確かに彼女の腕力では無理だな、ここは俺の頑張りで切り抜けるしかない。

 「うおおおおぉ!」
 気合いを込めてチョコレートを刻んで行く。

 「その調子、頑張れー」

 彼女の声援は遥かに遠く・・・・
 
 昔の偉人の名言が頭に響く

 考えるな、感じろ!
 そう、これぞ無我の境地!
 不可能を可能にする奇跡の力!

 「おら!全て刻んだぞ!」

 「ありがとう、こっちも準備出来たよ」
 彼女は刻んだチョコレートをボウルに移し熱湯の入ったボウルに浮かべる。

 「おお〜チョコがみるみる溶けていく」
 俺は驚きの声を上げた。

 彼女は木べらでチョコレートを混ぜながら
 「君の頑張りのおかげだね、そこのナッツをボウルに入れて」

 俺がボウルにナッツを入れて、彼女がチョコレートに混ぜ込む。

 「なんか良い香りがしてきたぞ」

 「ふふふっ♪交代よ、やけどしないでね」

 俺は彼女から木べらを引き継ぐと優しくチョコレートを混ぜる。

 彼女は小さなカップケーキ型を皿にならべる。

 なるほど、あのカップにチョコレートを入れるのか。

 「混ぜるのはもういいわ」
 そう言いながら、お玉を俺に手渡す。

 彼女も手にしたお玉でチョコレートをすくうとゆっくりとカップに注ぐ。

 「やけどには気を付けてね」
 そう言って俺に促す。

 よし、一丁やったるか!

 ところで、だ。

 「このチョコどうするの?」

 「ボクから君へのプレゼントだよ」

 なんですとー!つー事はなんだ、こ、告白でもするのか?この俺に!

 「いらないなら、ここで帰って」
 彼女は頬を染めて告白らしき言葉を口にする。

 俺の頭の中でなにかぐるぐると蠢いて1つの結論に達した。

 「帰らないよ、お前のことが好きだから」
 そう、俺はお前が好きなんだ。

 幼馴染としてではなく、1人の女性として。

 「良かった、ボクも君のことが好きだよ」
 彼女はそう言って俺に抱き着いてきた。

 



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