日々の僕たち
俺んちの爺ちゃんが急に体調を崩して亡くなった
還暦のお祝いをしたばかりだというのに
しかし後になって還暦は本厄だとも知った
厄年っていうのは怖いんだな、俺も気をつけよう
でも、どうすればいいんだろう?年齢は毎年 自動的に重ねていくものだし
やっぱり普通に考えれば厄払いだよな〜
ただ俺は信仰心に疎い
神様、仏様、キリスト様それにお釈迦様
後は誰がいたっけ?
それ以前に俺はまだ16歳だ、厄年を心配しても仕方がないぞ!
「····なんて事を昨晩考えてたんだ」
「相変わらず暇よね」
彼女はスマホを見ながら、さらっと俺の言った事を流した
「むううぅ〜」
理不尽なり!せめて俺と話す時はスマホから目を離して欲しい!だってさ見つめ合いながら話す恋人♡なんかいいだろう?
「そんな事より週末はどうするの?」
彼女は相変わらずスマホに釘付けだ、まぁ俺の話を聞いてくれるだけでも良しとするべきか
「サイクリングなんかどうかな?」
最近自転車なんて乗ってないからね、たまにはさ
「却下」
彼女は秒で俺の提案を一蹴した!どう言う事だ?聞いてきたのはそっちの方だろう!
全てはスマホのせいだ
さっきから何を熱心に見ているんだ?
「ところで、さっきから何を見ているの?」
思い切って聞いてみた。プライバシーに関わる事かな?とも思ったけどね
俺と彼女の間で何を遠慮する事があるのだろうか!
「書いているのよ」
書く?確かに人差し指は忙しく動いているけど、一体何を書いているんだろう
「もしかして誰かとチャット中?」
相手は男か?それとも女か?そこが問題だ
「どうして彼氏の前で他人とチャットする必要があるのよ?」
それじゃあ何だろうブログ?それともSNS?
「もしかしてブログの更新かな?」
さっきから彼女に質問してばかりだ、うざい男と思われていなければいいけど
「Web小説」
はい?彼女が徐々に遠くなり果てしなく 離れてから再び戻ってくる
「今ファンタジー部門で月間12位なのよ、もうすぐでベストテンに手が届くの」
は〜い〜?さらに彼女が遠くなる。ハハもう見えやしないよ
「ねえ 少し読んでみて、感想を聞きたいの」
お!気がつけば彼女の元へ戻っていた。何々感想を聞きたいって?俺の感想でいいのかな
「····それでは 拝見いたします」
彼女からスマホを受け取ると、画面には文字がびっしり。当たり前か
「どうかな?」
彼女は少し不安げに聞いてくるけど、まだ読んでないよ。タイトルは『戦士の幻像』どれどれ話しの方はと····ある戦士の冒険譚か、必殺技の幻像剣を使って向かってくる敵をバッタバッタと切り捨てて行く。そして同じく戦士のヒロインとのラブロマンス····う〜ん、これは難しいぞ?緩急のあるストーリー展開ここは良いと思う、少なくとも退屈はしない。それとテンポ良く進む戦闘シーンこれも悪くは無い
『彼女だから少しひいき目の感想かも知れないけど』そう付け加えて伝えてみた
「ありがとう!もう少し手を入れてみるわ」
俺は役に立ったのかな?ま、わざわざ聞く事でもないか
彼女は再びスマホとにらめっこ。邪魔しちゃ悪い大人しくしていよう
「ねえ」
「なんだ?」
「何か話してよ、退屈でしょ?」
終