日々の僕たち
「美術部 所属 といっても絵を描いてるわけじゃないよ」
秋に開催される 文化祭の看板を描く依頼を受けた ずいぶん 気が早いな。
でも他を当たって欲しい 本当に僕は絵を描いているわけじゃないんだ。
「それじゃ 何してるんだよ、美術部員だろ」
彼の言いたいことも判る、でもその質問に答えなければならないのかな? 彼つまり 文化祭 実行委員にさ。
「黙りかよ、もしかして幽霊部員か?」
ムッ、聞き捨てならない! それに部長が幽霊部員な訳ないだろ。
「粘土で造形をやってるんだよ」
そう、樹脂粘土で形を作りオーブンで焼いて仕上げる。その後は塗装だ。
「粘土? 土いじりなんかして面白いのかよ」
世間一般の粘土に対するイメージそのままだな、もう反論する気も失せたよ。それにいちいち 癪に触る 言い方をする、失礼なやつだ。
「とにかく粘土 じゃ話にならない、他に絵を描くやつを紹介してくれないか?」
さて、どうしたものかな。絵を描く部員なら当然知っているけど、紹介して良いものか。
「悪いけど 紹介はできないよ。皆文化祭への出展に向けて、作品を描いてる最中だ。看板を描く余裕はちょっとないね」
実のところ すでに 描き終わっている部員もいるけどさ、文化祭の準備で何かと忙しい。
「なんだよ 使えない奴らだな」
使えないとは心外だな。第一看板 描くのは実行委員の役目じゃないか? それが今年になって美術部に依頼 なんてどう言う事だ。
「毎年 看板を描くのは君たちの役目だろ」
事を大きくしたくはないが、どうしても言っておきたかった。
「俺は 絵 なんて描けないんだよ!」
そういうことか、だったらなぜ 立候補したんだろう? あるいは くじ引きで決めてるのかも知れないけどね。どちらにしろ 僕には関係ない事だな。
「事情は判ったけど 僕も絵が描けない。悪いけど他を当たって」
もうすぐ昼休みが終わる。次の授業の予習をしておきたいんだけどね。
「なんだよ、どうすればいいんだよ!」
頭をかきむしっている。追い詰められているのか、それとも ただの癖なのか。放っておくのも可哀想になってきた····
「仕方がないな、今日の部活で顧問の先生に相談してみるよ」
部長の僕としては、どの道彼を放っておく訳にもいかないしね。
「本当か!助かった〜!」
まだ依頼を受けるとは言ってないけどね、随分と 気が早いな。
「まだ依頼を受けるとは言ってないよ、それと君も同席してくれ」
救いの手は差し伸べる、あとは君次第かな?
「判ったよ、ありがとう! 美術室でいいんだよな?」
笑顔の彼。まさか自分は描かなくても済むとか思ってないよね? アイデアは出してもらうし 君も描くんだよ。
「それじゃ 放課後美術室へ来て。なるべく早めにね!」
遅れて来たら相談の話は当然無しだ。
「判った! それじゃまた後で」
張り詰めた表情から柔和な顔になった。去っていく彼の背中を見ながら思った。
『大変なのはこれからだよ?』
終
秋に開催される 文化祭の看板を描く依頼を受けた ずいぶん 気が早いな。
でも他を当たって欲しい 本当に僕は絵を描いているわけじゃないんだ。
「それじゃ 何してるんだよ、美術部員だろ」
彼の言いたいことも判る、でもその質問に答えなければならないのかな? 彼つまり 文化祭 実行委員にさ。
「黙りかよ、もしかして幽霊部員か?」
ムッ、聞き捨てならない! それに部長が幽霊部員な訳ないだろ。
「粘土で造形をやってるんだよ」
そう、樹脂粘土で形を作りオーブンで焼いて仕上げる。その後は塗装だ。
「粘土? 土いじりなんかして面白いのかよ」
世間一般の粘土に対するイメージそのままだな、もう反論する気も失せたよ。それにいちいち 癪に触る 言い方をする、失礼なやつだ。
「とにかく粘土 じゃ話にならない、他に絵を描くやつを紹介してくれないか?」
さて、どうしたものかな。絵を描く部員なら当然知っているけど、紹介して良いものか。
「悪いけど 紹介はできないよ。皆文化祭への出展に向けて、作品を描いてる最中だ。看板を描く余裕はちょっとないね」
実のところ すでに 描き終わっている部員もいるけどさ、文化祭の準備で何かと忙しい。
「なんだよ 使えない奴らだな」
使えないとは心外だな。第一看板 描くのは実行委員の役目じゃないか? それが今年になって美術部に依頼 なんてどう言う事だ。
「毎年 看板を描くのは君たちの役目だろ」
事を大きくしたくはないが、どうしても言っておきたかった。
「俺は 絵 なんて描けないんだよ!」
そういうことか、だったらなぜ 立候補したんだろう? あるいは くじ引きで決めてるのかも知れないけどね。どちらにしろ 僕には関係ない事だな。
「事情は判ったけど 僕も絵が描けない。悪いけど他を当たって」
もうすぐ昼休みが終わる。次の授業の予習をしておきたいんだけどね。
「なんだよ、どうすればいいんだよ!」
頭をかきむしっている。追い詰められているのか、それとも ただの癖なのか。放っておくのも可哀想になってきた····
「仕方がないな、今日の部活で顧問の先生に相談してみるよ」
部長の僕としては、どの道彼を放っておく訳にもいかないしね。
「本当か!助かった〜!」
まだ依頼を受けるとは言ってないけどね、随分と 気が早いな。
「まだ依頼を受けるとは言ってないよ、それと君も同席してくれ」
救いの手は差し伸べる、あとは君次第かな?
「判ったよ、ありがとう! 美術室でいいんだよな?」
笑顔の彼。まさか自分は描かなくても済むとか思ってないよね? アイデアは出してもらうし 君も描くんだよ。
「それじゃ 放課後美術室へ来て。なるべく早めにね!」
遅れて来たら相談の話は当然無しだ。
「判った! それじゃまた後で」
張り詰めた表情から柔和な顔になった。去っていく彼の背中を見ながら思った。
『大変なのはこれからだよ?』
終