日々の僕たち

 部屋で昼寝を決め込んでいたら、
 夕食の買い物を頼まれた。

 そういえば今日は手伝いの当番だ。

 外は暑いが、断れば夕食は抜き
 仕方がない行ってくるか・・・
 母から夕食のメモ書きと2000円、
 それとミネラルウォーターのペットボトルを受け取ると
 少し遠いスーパーまでの買い物へ出かけた。

 暑い! この当たり前のような暑さに腹が立つ。

 玄関を出た時点で既にこれだ! 先が思いやられるよ、まったく
 幸い日が傾いているので影は長い
 日陰を選んで歩いて行くしかないか。

 歩きながらメモ書きに目を通す。

 じゃがいも、にんじん、豚コマか
 今日はカレーかな?
 いや肉じゃがの可能性もある
 どちらにせよ決め手となる食材が書いてないので判らない。

 牛乳パックとあるが、カレーに牛乳1mlも入れるなんて話し聞いた事がない
 ・・・少なくとも俺は。

 と、なると? この牛乳は明日の朝のぶんだな。

 母さん、これは重大な条約違反だ!
 俺が請け負うのは夕食の材料を買うだけ
 明日の朝の事など知らんぞ?

 まあ、買い漏らしがあれば即夕食抜き!
 不承ながら牛乳も買うしかないか。

 最後に玉ねぎとある。

 最初にまとめて書いてない所を見ると慌てて思い出したな?
 自分は家で待つだけなのだから、もう少し落ち着けばいいものを。

 待てよ?

 最近は若年性の痴呆が増えていると聞く
 もしかして?
 いやいやソレは困る
 面倒を見るのは一体誰だ?
 父さんと俺のローテで行くとしても、
 仕事があるから!とか言って父さんは面倒を見ない可能性が。

 介護の役目は俺にかかってくる事になる
 そうなると大学進学を諦めざるを得ない

 最近は通信制の大学も結構いいらしいが
 やっぱ、リアルキャンパスだよな!
 ここは母さんが痴呆症でない事を祈ろう。

 それにしても暑い
 ペットボトルはもう空だ
 帰りはどうする? お釣りで買えばいいか

 そんなこんなでスーパーへ到着
 涼し〜い!
 備え付けのアルコールで手を消毒
 買い物かごを持って。さて、どこから攻めるか?

 まずは野菜だな
 最近は毎日のようにジリジリと値上がりしている!
 ここでやりくり出来なければ後はない!

 どれどれ、当スーパー契約農家の野菜です! おっ意外と安いな! 安定供給のための契約か?
 それならば買っておいてもいいだろう。

 ブランド野菜はどれもこれも高いからな
 一部例外もあるけどさ、
 一つ一つ丹精込めて育て上げました
 なんて顔写真にコメント書いてあるとちょっと買いづらいかなぁ〜
 いや、悪い意味じゃなくてね
 申し訳ないと言うか何と言うか。

 とにかく一般庶民は安い野菜で十分
 一回り見たが契約農家が一番安い
 ここで揃えよう。

 あとは豚肉。

 明日だったら特売日だったんだけど
 なんだ?
 今日もかなり安いぞ? どういう事だ?
 豚肉小間切れ100g69円!
 もちろんノーブランド品だけど
 これは200gぐらい買い増ししても問題ないな!
 俺は育ち盛りだ、肉を食べてもっと大きくなるぞ。

 あとは牛乳と帰りのミネラルウォーターをかごに入れてと
 金額は合計すると1800円くらいか
 それとレジ袋が5円
 では早速レジの列に並ぼう。

 セルフレジもあるけどね。

 あの場所は急いでいる人に譲ろう
 今は特に急ぎの用じゃないからさ。

 俺の番になる
 レジ係の店員さんは手際よく商品のバーコードを読み取って行く。

 あの速さ俺にはちょっと無理だな
 将来は販売業に就くのはやめよう。
 
 「1873円でございます14番へどうぞ」
 促されて14番の精算機へ向かう
 はい到着!
 ディスプレイの現金のアイコンをタップ
 2000円を挿入する
 確認のアイコンをタップすると直ぐにお釣りが出てきた
 発行されたレシートは忘れずに受け取る。

 後はレジ袋に詰めるだけ
 どちらかと言うとこっちの方を自動化してほしい!
 仕方がないので自分で詰める
 よくバランスを考えて、なおかつ重いものは下に
 こういう時牛乳パックは困るよね
 重いからといって下に置くと潰れてしまうし
 立てて入れると運んでいる最中に中で暴れまわる
 今回はうまい具合に脇の方に立って収まった
 ペットボトルは帰りに飲むので袋に入れずに手にとる。

 そう、帰らなくちゃいけないんだよね
 この暑い中を重い袋を持って!

 スーパーの出口に立つ
 自動ドアが開くと暑い空気がムワッと
 覚悟を決めるしかないか、気合を入れて外への一歩を踏み出す。

 何やら薄暗くなっているので空を見ると、雨雲らしきものが立ち込めていた。

 これは急いで帰らないと! 濡れ鼠はごめんだ。

 帰りは少しペースアップする事になる
 給水のタイミングがポイントだな!

 やや早歩きで帰路へ着く
 雨雲のヤツとの競争だ!

 中間地点までは俺の方が優位だったが、家に近づくにつれ空はだんだん暗くなってくる。

 「なんとかもってくれよ!」

 家が見えてきた!
 すると空からポツリポツリと雨粒が。

 もうなりふり構っていられない、走る!
 家に着き玄関にタッチすると、
 ザーッと雨が降って来た。

 どうやら俺の勝ちのようだな!

 充足感と共に家に入る
 ちょうど母は洗濯物の取り込み中だ
 俺に気が付くと、
 「買ってきたものをキッチンに置いたらこっちも手伝って!」

 なんてこった。

 仕方がない夕飯のためだ手伝うしかないか。

 母と一緒に洗濯物の取り込み
 結局雨に濡れてしまった。

 「ありがとうね!」
 母がタオルを放り投げる
 それを受け取ると濡れた所を拭く

 そういえば気になる事があったんだ

 「母さん今日の夕食は何?」

 「シチューだけど、それがどうしたの」

 「いや、カレー辺りかなと思ってたから」

 「いくら美味しいからってカレーばかりじゃ飽きるでしょ?」

 それもそうだな
 俺もまだまだだ。

 しかしここで疑問が
 シチューはご飯のおかずになるのか?

 しばらく悩むが、これは聞かないほうがいいか胸にしまっておこう。





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