日々の僕たち

「ハッハッハ! 急がないと」
 私は自転車を持ってないので、彼との待ち合わせ場所へは走って行くしかない。

 私が家を出る時に彼へ連絡したら一言 
 「待ってるよ」
 1時間半も遅れているのに待っててくれるのは嬉しいけど、私の中の不安感が彼への不信へと変わる。

 なぜなら、いつもは彼が遅れて私が待っている。あまりにも彼が来るのが遅いので、帰ってしまったことも一度や二度じゃない。

 そのたびに「遅れてくる方が悪い」そう言って彼を責めてきた。

 今回は立場が逆だ。

 私が遅れて彼が待っている。彼に対して 私がしてきた仕打ちを振り返れば、彼は一体どんな行動に出るだろう? 最悪 帰ってしまっていても仕方がないかな。

 でも····

 私が彼とのデートに遅れるのは今回が初めて。たった1回で彼に振られるとは思わない。

 しかし私は彼じゃない。彼の考えていることは判らないよ、遅れたことを怒られて責められて 挙句の果てに振られることも十分考えられる。

 彼からの連絡はない。

 とにかく急ごう!

 それにしても走ると胸が揺れて痛い。学校の体育の授業中はスポーツブラを着けているけど、今着けているのは普通のブラ。仕方がないここはガマン、ガマン。

 走って、走って。

 待ち合わせ場所が見えてきた、彼とおぼしき 人影も見える! 良かったぁ〜って、彼がいるということは、私は謝らなければならない。今まで散々 彼を責めておいて、どんな顔をして謝ればいいんだろう。

 彼のそばで 立ち止まる。

 両手を膝について乱れた呼吸を整える。

 恐る恐る 顔を上げて彼を見る。

 彼と私の目が合った。とにかく謝ろう。
 「遅くなってごめんなさい!」
 目をつぶり 顔の前で両手を合わせた。

 彼は「いいんだよ、俺なんかのために走ってきてくれたんだから」

 許された? 私は許されたのかな。

 「そこのカフェで冷たい物でも飲もう?」
 彼は優しく語りかけてくる。

 もう一度謝ろうと思ったけれど、彼は怒ってはいないようだ。返ってプライドを傷つけることになり兼ねない。

 私は笑顔で「ありがとう」

 彼は私に手を差し伸べてきた。私はパパッと 身だしなみを整えるとその手を取り、彼を見つめた。

 彼はゆっくりと自分の方へ 私を引き寄せて、私のおでこにキスをした!

 ちょっと、みんなが見てるってば!

 



107/127ページ
スキ