日々の僕たち

 「アチ〜ぃ」
 手元にあったペットボトルを首すじに当てるが既にヌルい。

 部長が俺の方を見る
 思わず目が会ったぞ、この機会だ言ってやろう。

 「部長〜美術室にもエアコン入れてくださいよ!」
 部長は、チラリとこちらを見ると
 「生徒会には既に伝えてある、今度の議題にあげてくれるそうだ」
 首にかけたタオルで顔を拭きながら言った。

 「本当ですか!」
 喜びは束の間、すぐに自分の甘さに気がついた。

 仮に今すぐ OK が出ても
 調査、見積もり、業者に発注、設置。

 どう考えても1ヶ月以上はかかる、しかも工事中は部活動が出来ない!

 他の部員もザワつき出した
 期待半分、諦め半分といった感じか?
 部長は場を引き締めるように言った!
 「来週から扇風機が入る事になっている!」オオー! 部員たちの歓声が上がる
 「聞いて驚け? 一人一台だぞ!」
 「マジか?」
 「やったね!」
 部員達の喜びも大きくなる。

 しかし、まて?

 「部長、それがエアコンの代わりって事じゃないですよね?」十分ありえる話だ。

 部長は満面の笑みで答える
 「安心しろ! 生徒会は前向きに検討すると言っている!」
 俺はすぐに気が付く。それ誰が言ったんだ?

 「肝心の生徒会長は何て言ってるんですか?」思わずダメ押し。

 「生徒会長が言ったんだ、間違いない」
 我が美術部の部長は得意満面だ。

 しかし。

 「役員が反対したらどうなるんですか? それに扇風機を手配したのは誰なんですか?」あの弱腰会長の計らいとは思えない。

 部長はしどろもどろに答える
 「いや、扇風機は役員が手配したが」
 「その時、生徒会の総意ではないから安心してくれ! と言っていた」

 部長、やはり上手く丸め込まれたな?
 何しろ来年で卒業だからな
 その部長に、あの生徒会が花を持たせるなんてありえない。

 「とにかく、この話はここでお終いだ!来週からは扇風機だぞ? 扇風機!」
 部長は手を叩きながら
 「さ、皆んな創作に戻ってくれ!」
 部員達は不信感を抱きつつも作業に戻る。

 俺は納得いかないな。

 「部長!」
 「なんだ?」

 一拍おいて。

 「俺、次期部長候補に立候補します!」
 再び部室がザワつく。

 「それは構わないが?どうしたんだ急に」

 理由は。

 「この先2年半もエアコン無しなんて、ごめんですからね!」

 「部長の言葉が信用できないのか?」
 少しイラついている部長をなだめるように、「違いますよ? 俺の相手は生徒会です」
 もう後には引けないな、部長も俺の覚悟を悟ったようだ。

 「わかった今日からお前は副部長だ」
 「副部長権限は部長と同じでいいな?」
 とりあえずの措置だが申し分ない
 俺は黙って部長に頭を下げた。












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