クローバーの猫と水公園
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クローバーの猫と水公園
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⚠貴方は猫です。
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冬だからか、風がかなり冷たい。いや、風が冷たいのは冬だから以外にも理由があるだろう。と言うのも、私が今いるこの公園は通称︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎水公園” と呼ばれていて、小さい公園なりに立派な水車やら綺麗に整えられた川やらが通ってあり、夏でも涼しい場所である。そんな場所に冬に居たら並大抵の人間は寒がるだろう。
(昨日、雨が降ったから土管には入れませんね...)
まあ、私は猫だからある程度の寒さには慣れているが、それでも寒い。さらに追い打ちをかけるように、昨日は雨が降った。私が何時も寝ている暖かい横向きの土管の中が水浸しになってしまった。昨日は適当な家の倉庫で眠ったが、あまり人の家には入りたくは無い。バレた場合、いつも追い払われるかぎゃあと叫ばれるかの2択だからだ。今日は今日の寝床を探しに行かなければならない。
(あまり水公園から離れたくはないのですが...)
と言うのも、私は喧嘩が苦手である。他の猫の縄張り内に入ってしまえば、直ぐにシャーと威嚇され、喧嘩になってしまう。猫集会で仲良くしてくれている友達でさえもだ。その分、この水公園は他の猫は水と子供に怯え避けている為、この場所では1度も喧嘩をした事が無い。正真正銘私の縄張りである。それに、私は水が好きなのでこの場所が好きだ。飲水も確保されているし、何よりたまにご飯をくれる人間が居る。誰がくれるのかは知らないが、公園の出入口付近に餌が置いてある事が何度もあった。
(......今日も来ますかね)
︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎今日も来る” とはどういう事かと言うと、この水公園には常連客がおり、毎日この公園に来る小さな女の子がいるのだ。今日以外にも雨の日は何度か来ていたから、もしかすると来るかもしれない。私はあの子の手が好きだ。自分の体温よりは冷たいものの、土管よりは暖かい。あの子と出会ってからという物、すっかり人間の体温に病みつきになってしまった。まあ、あの子以外は怖くて近寄れないのだが。
(来てくれるかもしれませんし、ちょっと水公園を離れるのはやめておきましょうか。寝床ならば水公園の中で探せばいい話ですしね。)
そう思って、私は水公園内をウロウロする。その時、この水公園に所々生えているクローバーを踏まないよう気をつけながら。
(幸運の証を踏むなんて縁起でもありません)
あの子......香織と言ったか、に教えて貰った。この緑の葉っぱが3つくっついている草はクローバーと言って、幸運の証なのだと。そして、クローバーには葉っぱが4つくっついているものもあって、それを見つけると願いが1つ叶うらしい。
(願い......ねえ)
今ここでその四葉のクローバーとやらを見つければ香織は来てくれるのだろうか。
(そのような考えは一旦置いておきまして、寝床、寝床を見つけないと)
私はウロウロする。しかし、やっぱり香織が頭から離れない。気がつくと太陽が西に寄り始めている。いつも香織が来てくれる時間帯だ。香織はこの時間を放課後とか言っていたか。
(何故か、捗りません...)
そんなことを思ったその時。ガサッ...と落ち葉を踏む音がした。この辺は木が多い。誰か人間が来たのだろう。
(......香織?)
私は少しの希望を抱き、振り返る。
「......うーん、衣織居ないなあ.........」
声が聞こえた。間違いない、間違えるはずもない。香織だ。
「香織!!」
「あっ、衣織!わあ、居ないかと思ったよ〜」
「そちらこそ、今日は来ないかと思いましたよ!」
「あはは、昨日雨降って、地面、水溜りだらけだからねえ」
私は香織を見つけるなり人間の姿に化ける。いや、どっちかと言うと人間の姿に戻ると言った方が正しいかもしれないが。
「それにしても、さっき衣織、どこから出てきたの?私が見た時はいなかったような......」
「?......普通に居ましたよ?しゃがんでいたから死角だったのかも知れませんね」
そんな在り来りな言い訳をするが、純粋な香織は私の言葉を信じてしまう。ああ、言い忘れていたが、私は普通の猫では無いのだ。しかしその事を私以外の誰も知らない。香織にさえ隠している。私が死ぬ前、つまり前世は香織と同じ人間だったからか、人間の姿に化けるのが最も簡単であった。
「ねえ、衣織、今日は何する?」
「うーん、何しますかねえ」
「昨日は衣織と会えなかったからなあ......盛大な事したい」
「そんな一日会えなかったくらいで」
「一日でも十二分に寂しいよっ!」
まあでも、小さい女の子なんてそんなものだろう。私も前世では一日母親に会えないだけで泣き叫んでいた。今は既に独りぼっちが当たり前と化している為か何とも感じない。先程まで寂しかったのが嘘かの如く香織に会えた感動は感じないのだ。
「盛大なこととは......?」
「うーん、四葉のクローバーを探す、とか!!」
「それ、盛大ですか?」
「......お願い事を叶えるという点では」
決して盛大では無いと思うが、私たちはそんなこんなで四葉のクローバーを探すこととなった。
「じゃあ、早速探そう!」
香織は勢いよく公園の端っこ、つまりクローバーの密集地帯へと走る。私はそれについて行く。相変わらず地面は水浸しだから、靴が濡れないようにつま先立ちでぴちゃぴちゃとかけていった。
「.........」
「..................」
「......何か話しませんか」
私たちは黙々とクローバーを探す。勘違いしないで欲しいが私は沈黙が嫌いという訳では無い。しかし、やっぱり友達が隣にいるのだから何か話したいのだ。
「......何話す?」
「......何話しましょうか」
しかしそんな事を言われてもパッと話題が思い浮かぶものでもない。私たちは何年も2人で居た。もうそんじょそこらの話題ならば話尽くしている。
「.........ねえ香織、この辺四葉見つかりませんし、少し向こう側に行ってみたいのですが......」
「分かった!行ってみよー!」
私はそう言い公園のちょっと暗い所を指す。香織はまだ知らないのかもしれないが、こういった類の草花は暗いところの方がよく生えているものだ。日光をより取り込む為、付ける葉の数を増やす。私が人間として生きていた頃はクローバーこそ無かったものの、そう言った類の草は幾らか知っている。
「......ねえ!衣織!ここ、凄いよ!」
「本当ですね!四葉のクローバーがこんなに早く見つかるなんて...」
「ね!衣織、教えてくれてありがとうー!」
四葉のクローバーの量は思っていたよりも多く、1つ見つけたと思えばまた1つ、また1つと見つけていく。見つける度にわあっと2人の歓声が響いて、2人しか居ないこの公園に彩りを持たせる。見つけたクローバーをちぎる、ぷちっと言う音すら心地よい。昨日、雨が降ったおかげで雨の匂いがしたり、クローバーがキラキラと輝いていたりして、なんだか幻想的な世界にでも入ったかのようだ。
「ねえ衣織、こんなにいっぱいクローバーが見つかったんだからさ......願い事、いっぱい叶うかな?」
「きっと叶いますよ」
「ほんとう?!やったあ〜!......ねえ、衣織はさ、お願い事、何にする?」
はて、お願い事か。前世では沢山あったのだが、猫となった今では1つも思い浮かばない。強いてあげるならば、この水公園にもう少し暖かい場所を作って欲しい、くらいだろうか。
「......うーん、強いて言えば水公園に暖かい場所が欲しい、くらいですかね」
「暖かい、場所」
「はい。ここで2人で会う時、少し肌寒いではありませんか。」
「ああ、そういう」
香織は突然立ち上がったかと思えばまたしゃがみこむ。どうしたのだろうか。寒い寒いと言っていたのは寧ろ香織の方なのに。てっきり同意してくれるものだと思っていた私は少し動揺し、香織の顔色を伺う。
「そういう、とは......?」
「いや、衣織ってさ、ずっとここにいるじゃん?」
「えっと、まあ、よく来ますね」
︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎ずっとここにいる” と言う言葉に少し驚きながらも香織の話を聞く。まさか私が猫であるなぞ香織が知る由もないのだから。
「ねえ、もしかしたら違うかもしれないんだけどさ」
「......?」
「衣織の願い事、叶うかもしれないよ」
どういう事だろうか。まさか香織の親族がこの公園の保持者でもあるまい。そうでなかったら、どう私の願いが叶うと言えるのだろう。
「衣織さ、うち、こない?」
「いえ、あまり他所の家には上がるなと両親に言われて...」
「そうじゃなくて!そうじゃ、なくてさ......ええと、どこから話そうか。」
「......?」
「私、あと2ヶ月で小学校、卒業するんだ。それで、卒業祝いに動物でも飼おうかって話になって、それで......ねえ、衣織!家族に、ならない?」
何故私が人ではない事を知っているのだろうか。いつ知ったのだろうか。どこで、どのように、知ったのだろうか。そんな戸惑いが頭をよぎる。しかしその疑問は直ぐに消えて無くなった。そんな事は今どうでもいいのだ。ふと、私の目につうっと涙が零れる。独りには慣れていたつもりでいた。でも、確かに私は人の温もりを求めていたのだ。
◆◆◆
「体乾いたかな?うん乾いた!お風呂入ったらさっぱりしたでしょ〜!じゃあ、早速だけど、私たちの家を紹介します!!」
私は今香織の家に猫の姿で居る。先程までお風呂に入っていて、体を乾かして貰っていたところだ。水公園で何度か水浴びはしたものの、やっぱり本物のお風呂に入った方が心地よい。懐かしいこの感覚に体が震える。
「ここ!私の部屋ね!で、こっちが衣織のお家ー!お水とご飯も中に置いてあるからね!」
そう言って香織は私をケージの中に入れた。私はお腹が空いていたので早速餌に飛びつく。私が餌を食べている姿を見て、香織は「食べた!やったあ、食べた!」とはしゃぎ回った。正直何が面白いのかは良く分からないが、とりあえずこのご飯は心做しか食べ慣れた味で、とても美味しい為、きっちり最後まで食べる。どうやら香織は私の為にかなり良いものを買い揃えてくれていたのか、ケージの中はかなり充実していて、特にふかふかの丸いベッド付きキャットタワーは恐らく●●円はするだろうと予測出来た。ご飯を最後まで食べて満腹になった私は早速ケージの中にあるベッドで丸まる。見た目の通り、ベッドは土管の何倍も柔らかくて、暖かかった。体がふわふわとしてくる。こんなにもリラックスしたのは猫になって以来初めてかもしれない。いつもは何か物音がした瞬間、警戒して飛び起きてしまうが、今日はよく眠れそうだ。そんな事を考えながらぬくぬくしていると、もういよいよ動きたくなくなってくる。
「......えっとお、気に入ってくれたのは嬉しいんだけど、ちょっと一旦出てきて。まだ全然紹介出来てないから...」
「......」
「衣織」
「......」
「衣織ー。...............衣織ってば!」
「......」
「ダメだこりゃ。......続きは明日紹介しますか!」
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⚠貴方は猫です。
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冬だからか、風がかなり冷たい。いや、風が冷たいのは冬だから以外にも理由があるだろう。と言うのも、私が今いるこの公園は通称︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎水公園” と呼ばれていて、小さい公園なりに立派な水車やら綺麗に整えられた川やらが通ってあり、夏でも涼しい場所である。そんな場所に冬に居たら並大抵の人間は寒がるだろう。
(昨日、雨が降ったから土管には入れませんね...)
まあ、私は猫だからある程度の寒さには慣れているが、それでも寒い。さらに追い打ちをかけるように、昨日は雨が降った。私が何時も寝ている暖かい横向きの土管の中が水浸しになってしまった。昨日は適当な家の倉庫で眠ったが、あまり人の家には入りたくは無い。バレた場合、いつも追い払われるかぎゃあと叫ばれるかの2択だからだ。今日は今日の寝床を探しに行かなければならない。
(あまり水公園から離れたくはないのですが...)
と言うのも、私は喧嘩が苦手である。他の猫の縄張り内に入ってしまえば、直ぐにシャーと威嚇され、喧嘩になってしまう。猫集会で仲良くしてくれている友達でさえもだ。その分、この水公園は他の猫は水と子供に怯え避けている為、この場所では1度も喧嘩をした事が無い。正真正銘私の縄張りである。それに、私は水が好きなのでこの場所が好きだ。飲水も確保されているし、何よりたまにご飯をくれる人間が居る。誰がくれるのかは知らないが、公園の出入口付近に餌が置いてある事が何度もあった。
(......今日も来ますかね)
︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎今日も来る” とはどういう事かと言うと、この水公園には常連客がおり、毎日この公園に来る小さな女の子がいるのだ。今日以外にも雨の日は何度か来ていたから、もしかすると来るかもしれない。私はあの子の手が好きだ。自分の体温よりは冷たいものの、土管よりは暖かい。あの子と出会ってからという物、すっかり人間の体温に病みつきになってしまった。まあ、あの子以外は怖くて近寄れないのだが。
(来てくれるかもしれませんし、ちょっと水公園を離れるのはやめておきましょうか。寝床ならば水公園の中で探せばいい話ですしね。)
そう思って、私は水公園内をウロウロする。その時、この水公園に所々生えているクローバーを踏まないよう気をつけながら。
(幸運の証を踏むなんて縁起でもありません)
あの子......香織と言ったか、に教えて貰った。この緑の葉っぱが3つくっついている草はクローバーと言って、幸運の証なのだと。そして、クローバーには葉っぱが4つくっついているものもあって、それを見つけると願いが1つ叶うらしい。
(願い......ねえ)
今ここでその四葉のクローバーとやらを見つければ香織は来てくれるのだろうか。
(そのような考えは一旦置いておきまして、寝床、寝床を見つけないと)
私はウロウロする。しかし、やっぱり香織が頭から離れない。気がつくと太陽が西に寄り始めている。いつも香織が来てくれる時間帯だ。香織はこの時間を放課後とか言っていたか。
(何故か、捗りません...)
そんなことを思ったその時。ガサッ...と落ち葉を踏む音がした。この辺は木が多い。誰か人間が来たのだろう。
(......香織?)
私は少しの希望を抱き、振り返る。
「......うーん、衣織居ないなあ.........」
声が聞こえた。間違いない、間違えるはずもない。香織だ。
「香織!!」
「あっ、衣織!わあ、居ないかと思ったよ〜」
「そちらこそ、今日は来ないかと思いましたよ!」
「あはは、昨日雨降って、地面、水溜りだらけだからねえ」
私は香織を見つけるなり人間の姿に化ける。いや、どっちかと言うと人間の姿に戻ると言った方が正しいかもしれないが。
「それにしても、さっき衣織、どこから出てきたの?私が見た時はいなかったような......」
「?......普通に居ましたよ?しゃがんでいたから死角だったのかも知れませんね」
そんな在り来りな言い訳をするが、純粋な香織は私の言葉を信じてしまう。ああ、言い忘れていたが、私は普通の猫では無いのだ。しかしその事を私以外の誰も知らない。香織にさえ隠している。私が死ぬ前、つまり前世は香織と同じ人間だったからか、人間の姿に化けるのが最も簡単であった。
「ねえ、衣織、今日は何する?」
「うーん、何しますかねえ」
「昨日は衣織と会えなかったからなあ......盛大な事したい」
「そんな一日会えなかったくらいで」
「一日でも十二分に寂しいよっ!」
まあでも、小さい女の子なんてそんなものだろう。私も前世では一日母親に会えないだけで泣き叫んでいた。今は既に独りぼっちが当たり前と化している為か何とも感じない。先程まで寂しかったのが嘘かの如く香織に会えた感動は感じないのだ。
「盛大なこととは......?」
「うーん、四葉のクローバーを探す、とか!!」
「それ、盛大ですか?」
「......お願い事を叶えるという点では」
決して盛大では無いと思うが、私たちはそんなこんなで四葉のクローバーを探すこととなった。
「じゃあ、早速探そう!」
香織は勢いよく公園の端っこ、つまりクローバーの密集地帯へと走る。私はそれについて行く。相変わらず地面は水浸しだから、靴が濡れないようにつま先立ちでぴちゃぴちゃとかけていった。
「.........」
「..................」
「......何か話しませんか」
私たちは黙々とクローバーを探す。勘違いしないで欲しいが私は沈黙が嫌いという訳では無い。しかし、やっぱり友達が隣にいるのだから何か話したいのだ。
「......何話す?」
「......何話しましょうか」
しかしそんな事を言われてもパッと話題が思い浮かぶものでもない。私たちは何年も2人で居た。もうそんじょそこらの話題ならば話尽くしている。
「.........ねえ香織、この辺四葉見つかりませんし、少し向こう側に行ってみたいのですが......」
「分かった!行ってみよー!」
私はそう言い公園のちょっと暗い所を指す。香織はまだ知らないのかもしれないが、こういった類の草花は暗いところの方がよく生えているものだ。日光をより取り込む為、付ける葉の数を増やす。私が人間として生きていた頃はクローバーこそ無かったものの、そう言った類の草は幾らか知っている。
「......ねえ!衣織!ここ、凄いよ!」
「本当ですね!四葉のクローバーがこんなに早く見つかるなんて...」
「ね!衣織、教えてくれてありがとうー!」
四葉のクローバーの量は思っていたよりも多く、1つ見つけたと思えばまた1つ、また1つと見つけていく。見つける度にわあっと2人の歓声が響いて、2人しか居ないこの公園に彩りを持たせる。見つけたクローバーをちぎる、ぷちっと言う音すら心地よい。昨日、雨が降ったおかげで雨の匂いがしたり、クローバーがキラキラと輝いていたりして、なんだか幻想的な世界にでも入ったかのようだ。
「ねえ衣織、こんなにいっぱいクローバーが見つかったんだからさ......願い事、いっぱい叶うかな?」
「きっと叶いますよ」
「ほんとう?!やったあ〜!......ねえ、衣織はさ、お願い事、何にする?」
はて、お願い事か。前世では沢山あったのだが、猫となった今では1つも思い浮かばない。強いてあげるならば、この水公園にもう少し暖かい場所を作って欲しい、くらいだろうか。
「......うーん、強いて言えば水公園に暖かい場所が欲しい、くらいですかね」
「暖かい、場所」
「はい。ここで2人で会う時、少し肌寒いではありませんか。」
「ああ、そういう」
香織は突然立ち上がったかと思えばまたしゃがみこむ。どうしたのだろうか。寒い寒いと言っていたのは寧ろ香織の方なのに。てっきり同意してくれるものだと思っていた私は少し動揺し、香織の顔色を伺う。
「そういう、とは......?」
「いや、衣織ってさ、ずっとここにいるじゃん?」
「えっと、まあ、よく来ますね」
︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎ずっとここにいる” と言う言葉に少し驚きながらも香織の話を聞く。まさか私が猫であるなぞ香織が知る由もないのだから。
「ねえ、もしかしたら違うかもしれないんだけどさ」
「......?」
「衣織の願い事、叶うかもしれないよ」
どういう事だろうか。まさか香織の親族がこの公園の保持者でもあるまい。そうでなかったら、どう私の願いが叶うと言えるのだろう。
「衣織さ、うち、こない?」
「いえ、あまり他所の家には上がるなと両親に言われて...」
「そうじゃなくて!そうじゃ、なくてさ......ええと、どこから話そうか。」
「......?」
「私、あと2ヶ月で小学校、卒業するんだ。それで、卒業祝いに動物でも飼おうかって話になって、それで......ねえ、衣織!家族に、ならない?」
何故私が人ではない事を知っているのだろうか。いつ知ったのだろうか。どこで、どのように、知ったのだろうか。そんな戸惑いが頭をよぎる。しかしその疑問は直ぐに消えて無くなった。そんな事は今どうでもいいのだ。ふと、私の目につうっと涙が零れる。独りには慣れていたつもりでいた。でも、確かに私は人の温もりを求めていたのだ。
◆◆◆
「体乾いたかな?うん乾いた!お風呂入ったらさっぱりしたでしょ〜!じゃあ、早速だけど、私たちの家を紹介します!!」
私は今香織の家に猫の姿で居る。先程までお風呂に入っていて、体を乾かして貰っていたところだ。水公園で何度か水浴びはしたものの、やっぱり本物のお風呂に入った方が心地よい。懐かしいこの感覚に体が震える。
「ここ!私の部屋ね!で、こっちが衣織のお家ー!お水とご飯も中に置いてあるからね!」
そう言って香織は私をケージの中に入れた。私はお腹が空いていたので早速餌に飛びつく。私が餌を食べている姿を見て、香織は「食べた!やったあ、食べた!」とはしゃぎ回った。正直何が面白いのかは良く分からないが、とりあえずこのご飯は心做しか食べ慣れた味で、とても美味しい為、きっちり最後まで食べる。どうやら香織は私の為にかなり良いものを買い揃えてくれていたのか、ケージの中はかなり充実していて、特にふかふかの丸いベッド付きキャットタワーは恐らく●●円はするだろうと予測出来た。ご飯を最後まで食べて満腹になった私は早速ケージの中にあるベッドで丸まる。見た目の通り、ベッドは土管の何倍も柔らかくて、暖かかった。体がふわふわとしてくる。こんなにもリラックスしたのは猫になって以来初めてかもしれない。いつもは何か物音がした瞬間、警戒して飛び起きてしまうが、今日はよく眠れそうだ。そんな事を考えながらぬくぬくしていると、もういよいよ動きたくなくなってくる。
「......えっとお、気に入ってくれたのは嬉しいんだけど、ちょっと一旦出てきて。まだ全然紹介出来てないから...」
「......」
「衣織」
「......」
「衣織ー。...............衣織ってば!」
「......」
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