ありふれた生活
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今日の朝、結局私はいつもの時間に教室へ向かった。早めに着席して人の少ない教室を味わい、後から来たクラスメイトから早く来た事にチヤホヤされる事も考えたが、そんな事より香織と話したかった。
「まあ、人の少ない教室は明日味わい尽くすとして」
私はいつの間にか明日も早起きする事を前提として考えていた。0時限目の準備をしながら、私は今からすべき事、今日の夜する事、そして明日の朝したい事を考える。香織と話すのが、楽しかった。毎日顔を見ている同居人と何をしようか、何を話そうか、そんな事が頭から離れない。昨日までは話題が無いことを話題としていた私なのに、何故か今日は話したい事が沢山湧いてくる。私はあれこれと考えて、ノートの端にアイデアをメモする。ハッと我に返って黒板を見ると、授業は随分進んでいた様だった。うっかり余計な事まで話しませんように、と祈って私は授業に集中する。
***
「おかえり!!」
私は香織が帰って来たら、扉の前まで急いで行く。もう足音で帰ってきたかどうか分かるのだ。私達は所属している部活が違うので、必然的に帰ってくる時間が変わる。そのため、私がいつも扉の前でおかえりを言う。
「ただいま」
そして、香織のただいまを聞く。結局、今日は授業にはあまり集中出来なかった。ただ、どんなに疲れていようとこのやり取りと部活はやろうと決めているのだ。
「はあ...疲れた。なんで美術部はこんなに完全下校時間ギリギリまでやるんだろう...こんなに忙しい文化部はあと吹奏楽部くらいでしょう...きっと」
「あはは...お疲れ様」
「大体、あの顧問おかしいのよ。今日だって、︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎完全下校時間15分前です、速やかに帰りましょう”って言う放送が流れた時、あの人なんて言ったと思う?︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎おっ、あと15分も出来るな!!”って言ったの。いやおかしいでしょう。出来るな!!じゃないんだよ」
「相変わらずだなぁ...」
私は何度目か分からない香織の部活の愚痴を聞く。香織としては自分で自由に絵を描きたかったらしいが、どうやらこの学校の美術部は本気でコンクール入賞を目指しているらしい。ちなみに私の部活はどんなに遅くとも6時半には終わるので、その苦悩は分かるような分からないような感じだ。
「あっそうだ。今日花札しようよ。花合わせ」
「えっ、2人で?............................まあいいけど」
「手札を9枚、場を8枚にしたら確か4枚余るだけになるはずだから...大丈夫」
「ええ、4枚余るのか...大桐が余りだったら嫌だなあ」
「いや、香織は大桐に愛されてるからその心配はいらないでしょう...。てかその前に六丹がもっと作りずらくなるね」
「本当に六丹好きだよね...」
「まあ、菖蒲が使えるのってそれくらいだし...」
「何気に菖蒲に好かれてるよね、衣織」
「ほんと何でだろう。誕生日が5月2日だからかな?もうちょっと強い札に好かれたかった」
私は今日の授業を無駄にして考えた香織と1番やりたい事を提案する。いつもならば先に課題をすると言って引かない香織は今日は遊ぶ事を許してくれた。ちなみに私のこの学校はカードゲームはしてもいいらしい。最後に花札をやった時は香織の友達を2人呼んで、4人でやった。点数が最も低い人が抜けて、その時やらなかった人が次入る負け抜けルールでやっていたはずだ。そして、そんなルールなのに香織は奇跡にも負けて抜けた時を除き毎回50点の桐を取っていた。
「......今日こそは香織から大桐を奪い取ってみせる」
「さて衣織に出来るかな」
私は場に4枚札を置く。.....まだ4枚しか置いていないのに随分とカラフルだ。この引き運が手札にくればいいのに。そして、場に8枚、手札に9枚を配り、私達は随分と変わったルールで花札を始める。私が配っている間、私達はポーカーフェイスをすることも無く、
「ねぇ、これ配ったの誰?!カスばっかなんだけど〜」
「いや衣織でしょう」
と、自分の手札に一喜一憂していた。 実はもう既に勝負は始まっていて、この会話は腹の読み合いだったりして...とか考えたことがある。
「雨4枚集まった時、点数どうする?」
「今回もみぞれでよくない?」
「ただでさえ今日は変なルールなんだから雨ながしにしようや」
「それもそっか。」
私達は毎回ルールの確認をする。お互いの認識に違いがあれば楽しめないからだ。私達はいつも初めはじゃんけんをして順番を決める。今回は私、衣織からだ。
「さて、まずはみなしのちゃんを取っておきますかね」
「ちょ、衣織、サラッと良いの持って行ったね?!」
私は場にある、みなしのと書かれた札が描かれてある桜に手札から50点の桜を重ねて取る。山札から1枚引くと、紅葉のカスが出て来た。私は場にある紅葉のカスを回収する。
「あっ!」
「え、どうした?ただのカスだよ。、、、えっもしかして香織、鹿持ってる?」
「いや、えっと、...いや持ってないよ」
相変わらず香織は嘘をつくのが下手だ。
そして、今回は僅差で私が勝った。 しかし#香織はきちんと桐島を作った。
「ああー、バッチリ桐島作られた...くそう」
「どやあああ」
勝ったのに悔しがる私と、負けたのに喜ぶ香織。傍から見れば違和感しかないだろう。
「ねぇ、次の勝負では罰ゲーム付けようよ」
香織は提案する。香織曰く、罰ゲームがあった方が本気になれるし、楽しいらしい。
「いいね、何の罰ゲームにする?」
「んーー、痛いのは嫌だし...となると恥ずかしい系かな」
「恥ずかしい系か...スマホの履歴を見せるとか」
「うわ恥ずかしい。...............それで行こう」
「えっ」
私は自分がされたら1番恥ずかしい事を言った。しかしすぐに後悔をする。思った事をポンポン言ってしまうのは話し相手が香織だからだろうか。
「よし、今回は本気だそう」
「えっ、前回は本気じゃなかったん...それで桐島作るとか凄い」
桐島自体は対して凄くないのだが、相手が香織だから本当に奇跡のようなものに感じる。
そして、私達はいつもとは全然違った雰囲気で花札を行う。お互いスマホの履歴など見られたくないのだろう。私は鶴が描かれた松を取る。ここで普段なら
「ああー、松桐坊主きられた!」
「そう簡単には作らせませんよ!」
「もう私ふけようかな」
「ちょっ、それはずるい」
などとはしゃぎ合うのだが今の私たちにそんな事をする余裕もなく。ただ只管 に札がカチカチと鳴る音だけが響いている。まあ、たまに「あー」とか「うー」とか言う声は聞こえるのだが。
「ねえ」
香織が久しぶりに話しかける。
「罰ゲーム...本当にするの............?」
「おっと、負けそうだからって取り消しはさせないよ」
「むう」
最後こそ冗談っぽく笑いにしたものの、本気で嫌がっているようだった。そりゃあそうだ。スマホの履歴など見られたい人の方が少ないだろう。それに、桐に愛されているからと言って必ず勝てる訳では無い。雨ながしを狙おうとも、私が既に10点の雨とカスの雨を取っているから、出来ない。強いて言えば間違えて私が残りの雨を取ればまあ雨ながしは出来るが、そんな奇跡は起こるはずもなく。
「あっ.........」
私、衣織が勝った。
「ああああ!負けたああ!...ねえ、何が出てきても引かないって約束してくれる?」
「よっぽどの事が無い限りは」
「ねえええ!そこは普通に︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎はい”って言ってよお!!」
「ごめんて」
香織はカバンからスマホを取り出し、私に手渡す。その手は微かに震えていて、少し挙動不審だった。私はまずChromeを開こうとして、間違えてGoogleを開く。「ああ、間違えた」それで済めば良かったのだが、そうはならなかった。まず目に着いたのは検索履歴。
『スノードロップ 花言葉 怖い』
『スノードロップ 花言葉』
『マツユキソウ』
『スノードロップ 別名』
『スノードロップ』
『スノーフレーク 似た花』
『鈴蘭 似た花』
ここまでは良かった。私は、他の検索履歴が少し気になって下にスクロールしたのだ。
『鈴蘭 5月1日』
『鈴蘭 贈り物 良くない』
『鈴蘭 贈り物』
『鈴蘭 花言葉』
『鈴蘭』
「あっ、えっと、それ以上スクロールは...」
「?」
私はそう聴きながらもう1回スクロールした。いや、香織の言う事を聞かなかった訳ではなく、「えっと」の辺りでスクロールしたのだ。
「あ、ごめ......」
この時、見なければ良かったかもしれない。
『素敵な花言葉』
『告白 花 重い』
『告白 やり方』
『誕生日プレゼント 恋人』
『誕生日プレゼント』
『誕生日 告白』
『告白』その二文字だけで全てが伝わってきた。ああ、好きな人がいるんだ。でも何故そんな事を隠したがっていたのかは分からないが、まあ確かに香織は恋バナ等は苦手だったな...と思い出す。それにしても、香織は可愛いからきっと成功するんだろうな。そんな事を考えると、不思議と肺が重くなる。昨日の朝とは違う、嫌いな重みだ。息を吐くと肺が痛い。
「ああ、もうバレちゃった」
そう言う香織の顔はあっさりしていて、少し拍子抜けした。
「せっかく誕生日前日に︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎誕生日を一緒に過ごそう!”的な告白をしようと思ったんだけどなあ」
「......え」
「それに、フランスでは5月1日は恋人同士がすずらんを送り合う日...ってネットに書いてあったし、ちょうどいいと思ったんだけど...」
もしかして私なのではないか?そんな事が頭をよぎった。そんな少しの期待で肺が更に重くなる。期待してはいけない。余計に傷つくだけだ。しかし、そう言い聞かせても期待してしまうものはしょうがない。
「バレちゃった」
「.........」
「?」
「........................香織、好きな人、いたんだ。」
「......えっ、気づかない?今ので。と言うか、結構前から気づいていたと思ってたんだけど...」
「あ、ごめ」
「そうじゃなくて!.........ああもう!衣織、好きだよ。もうずっと前から」
「.........は」
「あーあ、もっとロマンティックにする予定だったのに.........、いや!まだ間に合う!ちょっと今の忘れて!5月1日に言い直す!返事はその時頂戴!」
「えっちょ、、待って今のどういう」
頭が、ぐるぐる回る。とりあえず私は今混乱しているということは理解した。香織が、私の事を、好き?そんな事は有り得ないと思う。だって、今までそんな素振り一切見せなかったじゃないか。まあスキンシップは多かったけどあれは友達としてのそれだったはずだ。私達は高校二年生。ここは中高一貫校で、それこそ5年間も香織と友達やってきた。その中で、香織が私を好きなどと言った雰囲気は無かった...筈なのに。
「......ほんとうに?」
「忘れてってば!」
「......もう、無理だよ。」
不思議と涙が零れる。しかし悲しい訳では無い。寧ろ嬉しいのだ。その証拠に自然と口角が上がる。
「もう、、忘れられない」
ああ、大好きだよ!香織!
続く
「まあ、人の少ない教室は明日味わい尽くすとして」
私はいつの間にか明日も早起きする事を前提として考えていた。0時限目の準備をしながら、私は今からすべき事、今日の夜する事、そして明日の朝したい事を考える。香織と話すのが、楽しかった。毎日顔を見ている同居人と何をしようか、何を話そうか、そんな事が頭から離れない。昨日までは話題が無いことを話題としていた私なのに、何故か今日は話したい事が沢山湧いてくる。私はあれこれと考えて、ノートの端にアイデアをメモする。ハッと我に返って黒板を見ると、授業は随分進んでいた様だった。うっかり余計な事まで話しませんように、と祈って私は授業に集中する。
***
「おかえり!!」
私は香織が帰って来たら、扉の前まで急いで行く。もう足音で帰ってきたかどうか分かるのだ。私達は所属している部活が違うので、必然的に帰ってくる時間が変わる。そのため、私がいつも扉の前でおかえりを言う。
「ただいま」
そして、香織のただいまを聞く。結局、今日は授業にはあまり集中出来なかった。ただ、どんなに疲れていようとこのやり取りと部活はやろうと決めているのだ。
「はあ...疲れた。なんで美術部はこんなに完全下校時間ギリギリまでやるんだろう...こんなに忙しい文化部はあと吹奏楽部くらいでしょう...きっと」
「あはは...お疲れ様」
「大体、あの顧問おかしいのよ。今日だって、︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎完全下校時間15分前です、速やかに帰りましょう”って言う放送が流れた時、あの人なんて言ったと思う?︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎おっ、あと15分も出来るな!!”って言ったの。いやおかしいでしょう。出来るな!!じゃないんだよ」
「相変わらずだなぁ...」
私は何度目か分からない香織の部活の愚痴を聞く。香織としては自分で自由に絵を描きたかったらしいが、どうやらこの学校の美術部は本気でコンクール入賞を目指しているらしい。ちなみに私の部活はどんなに遅くとも6時半には終わるので、その苦悩は分かるような分からないような感じだ。
「あっそうだ。今日花札しようよ。花合わせ」
「えっ、2人で?............................まあいいけど」
「手札を9枚、場を8枚にしたら確か4枚余るだけになるはずだから...大丈夫」
「ええ、4枚余るのか...大桐が余りだったら嫌だなあ」
「いや、香織は大桐に愛されてるからその心配はいらないでしょう...。てかその前に六丹がもっと作りずらくなるね」
「本当に六丹好きだよね...」
「まあ、菖蒲が使えるのってそれくらいだし...」
「何気に菖蒲に好かれてるよね、衣織」
「ほんと何でだろう。誕生日が5月2日だからかな?もうちょっと強い札に好かれたかった」
私は今日の授業を無駄にして考えた香織と1番やりたい事を提案する。いつもならば先に課題をすると言って引かない香織は今日は遊ぶ事を許してくれた。ちなみに私のこの学校はカードゲームはしてもいいらしい。最後に花札をやった時は香織の友達を2人呼んで、4人でやった。点数が最も低い人が抜けて、その時やらなかった人が次入る負け抜けルールでやっていたはずだ。そして、そんなルールなのに香織は奇跡にも負けて抜けた時を除き毎回50点の桐を取っていた。
「......今日こそは香織から大桐を奪い取ってみせる」
「さて衣織に出来るかな」
私は場に4枚札を置く。.....まだ4枚しか置いていないのに随分とカラフルだ。この引き運が手札にくればいいのに。そして、場に8枚、手札に9枚を配り、私達は随分と変わったルールで花札を始める。私が配っている間、私達はポーカーフェイスをすることも無く、
「ねぇ、これ配ったの誰?!カスばっかなんだけど〜」
「いや衣織でしょう」
と、自分の手札に一喜一憂していた。 実はもう既に勝負は始まっていて、この会話は腹の読み合いだったりして...とか考えたことがある。
「雨4枚集まった時、点数どうする?」
「今回もみぞれでよくない?」
「ただでさえ今日は変なルールなんだから雨ながしにしようや」
「それもそっか。」
私達は毎回ルールの確認をする。お互いの認識に違いがあれば楽しめないからだ。私達はいつも初めはじゃんけんをして順番を決める。今回は私、衣織からだ。
「さて、まずはみなしのちゃんを取っておきますかね」
「ちょ、衣織、サラッと良いの持って行ったね?!」
私は場にある、みなしのと書かれた札が描かれてある桜に手札から50点の桜を重ねて取る。山札から1枚引くと、紅葉のカスが出て来た。私は場にある紅葉のカスを回収する。
「あっ!」
「え、どうした?ただのカスだよ。、、、えっもしかして香織、鹿持ってる?」
「いや、えっと、...いや持ってないよ」
相変わらず香織は嘘をつくのが下手だ。
そして、今回は僅差で私が勝った。 しかし#香織はきちんと桐島を作った。
「ああー、バッチリ桐島作られた...くそう」
「どやあああ」
勝ったのに悔しがる私と、負けたのに喜ぶ香織。傍から見れば違和感しかないだろう。
「ねぇ、次の勝負では罰ゲーム付けようよ」
香織は提案する。香織曰く、罰ゲームがあった方が本気になれるし、楽しいらしい。
「いいね、何の罰ゲームにする?」
「んーー、痛いのは嫌だし...となると恥ずかしい系かな」
「恥ずかしい系か...スマホの履歴を見せるとか」
「うわ恥ずかしい。...............それで行こう」
「えっ」
私は自分がされたら1番恥ずかしい事を言った。しかしすぐに後悔をする。思った事をポンポン言ってしまうのは話し相手が香織だからだろうか。
「よし、今回は本気だそう」
「えっ、前回は本気じゃなかったん...それで桐島作るとか凄い」
桐島自体は対して凄くないのだが、相手が香織だから本当に奇跡のようなものに感じる。
そして、私達はいつもとは全然違った雰囲気で花札を行う。お互いスマホの履歴など見られたくないのだろう。私は鶴が描かれた松を取る。ここで普段なら
「ああー、松桐坊主きられた!」
「そう簡単には作らせませんよ!」
「もう私ふけようかな」
「ちょっ、それはずるい」
などとはしゃぎ合うのだが今の私たちにそんな事をする余裕もなく。ただ
「ねえ」
香織が久しぶりに話しかける。
「罰ゲーム...本当にするの............?」
「おっと、負けそうだからって取り消しはさせないよ」
「むう」
最後こそ冗談っぽく笑いにしたものの、本気で嫌がっているようだった。そりゃあそうだ。スマホの履歴など見られたい人の方が少ないだろう。それに、桐に愛されているからと言って必ず勝てる訳では無い。雨ながしを狙おうとも、私が既に10点の雨とカスの雨を取っているから、出来ない。強いて言えば間違えて私が残りの雨を取ればまあ雨ながしは出来るが、そんな奇跡は起こるはずもなく。
「あっ.........」
私、衣織が勝った。
「ああああ!負けたああ!...ねえ、何が出てきても引かないって約束してくれる?」
「よっぽどの事が無い限りは」
「ねえええ!そこは普通に︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎はい”って言ってよお!!」
「ごめんて」
香織はカバンからスマホを取り出し、私に手渡す。その手は微かに震えていて、少し挙動不審だった。私はまずChromeを開こうとして、間違えてGoogleを開く。「ああ、間違えた」それで済めば良かったのだが、そうはならなかった。まず目に着いたのは検索履歴。
『スノードロップ 花言葉 怖い』
『スノードロップ 花言葉』
『マツユキソウ』
『スノードロップ 別名』
『スノードロップ』
『スノーフレーク 似た花』
『鈴蘭 似た花』
ここまでは良かった。私は、他の検索履歴が少し気になって下にスクロールしたのだ。
『鈴蘭 5月1日』
『鈴蘭 贈り物 良くない』
『鈴蘭 贈り物』
『鈴蘭 花言葉』
『鈴蘭』
「あっ、えっと、それ以上スクロールは...」
「?」
私はそう聴きながらもう1回スクロールした。いや、香織の言う事を聞かなかった訳ではなく、「えっと」の辺りでスクロールしたのだ。
「あ、ごめ......」
この時、見なければ良かったかもしれない。
『素敵な花言葉』
『告白 花 重い』
『告白 やり方』
『誕生日プレゼント 恋人』
『誕生日プレゼント』
『誕生日 告白』
『告白』その二文字だけで全てが伝わってきた。ああ、好きな人がいるんだ。でも何故そんな事を隠したがっていたのかは分からないが、まあ確かに香織は恋バナ等は苦手だったな...と思い出す。それにしても、香織は可愛いからきっと成功するんだろうな。そんな事を考えると、不思議と肺が重くなる。昨日の朝とは違う、嫌いな重みだ。息を吐くと肺が痛い。
「ああ、もうバレちゃった」
そう言う香織の顔はあっさりしていて、少し拍子抜けした。
「せっかく誕生日前日に︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎誕生日を一緒に過ごそう!”的な告白をしようと思ったんだけどなあ」
「......え」
「それに、フランスでは5月1日は恋人同士がすずらんを送り合う日...ってネットに書いてあったし、ちょうどいいと思ったんだけど...」
もしかして私なのではないか?そんな事が頭をよぎった。そんな少しの期待で肺が更に重くなる。期待してはいけない。余計に傷つくだけだ。しかし、そう言い聞かせても期待してしまうものはしょうがない。
「バレちゃった」
「.........」
「?」
「........................香織、好きな人、いたんだ。」
「......えっ、気づかない?今ので。と言うか、結構前から気づいていたと思ってたんだけど...」
「あ、ごめ」
「そうじゃなくて!.........ああもう!衣織、好きだよ。もうずっと前から」
「.........は」
「あーあ、もっとロマンティックにする予定だったのに.........、いや!まだ間に合う!ちょっと今の忘れて!5月1日に言い直す!返事はその時頂戴!」
「えっちょ、、待って今のどういう」
頭が、ぐるぐる回る。とりあえず私は今混乱しているということは理解した。香織が、私の事を、好き?そんな事は有り得ないと思う。だって、今までそんな素振り一切見せなかったじゃないか。まあスキンシップは多かったけどあれは友達としてのそれだったはずだ。私達は高校二年生。ここは中高一貫校で、それこそ5年間も香織と友達やってきた。その中で、香織が私を好きなどと言った雰囲気は無かった...筈なのに。
「......ほんとうに?」
「忘れてってば!」
「......もう、無理だよ。」
不思議と涙が零れる。しかし悲しい訳では無い。寧ろ嬉しいのだ。その証拠に自然と口角が上がる。
「もう、、忘れられない」
ああ、大好きだよ!香織!
続く