ありふれた生活
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朝。私、衣織は目を覚ます。私にしては早起きな方で、真っ暗な中カーテンから差し込む少しの光をを頼りに2段ベッドをそっと降りる。
「んん...もう朝......?」
一緒に暮らしている香織を起こさないよう気をつけていたつもりだったが、いくら気をつけようとも所詮、学生寮の2段ベッドなのでギシギシ軋む。眠りの浅い香織からすれば目が覚めるのには十分だ。
「あ、ごめん起こしちゃった...?」
「いや、大丈夫...どうせ後十五分でいつもの時間だし...それに珍しく衣織が早起きしてくれたから、今日は朝話せると思ったら、、、まあ、うん、悪くない」
「つまり嬉しいんだ?」
私は最後の最後で素直になれない香織を茶化し、電気を付ける。
「あーあ、せっかく香織の寝顔を見れると思ったのにな」
「見る気だったの?!良かった...パッと起きられて...」
「えー、良くないよ。漸く念願の香織の寝顔が見れると思ったのに...お預けかあ。まあ、来月辺りにもう一度頑張ってみるわ」
「いや明日頑張れよ...」
念願ならば明日にでも頑張ればいい物を、と思うだろうが、私にとって睡眠は命なのだ。
2日連続でその時間を削るなんてとんでもない。
「言っとくけど、朝ひとりぼっちなの、かなり寂しいんだからな?衣織寝てるから照明も全灯に出来んし...」
それは悪かったと思い、私は照明のボタンの「全灯」を押す。ちなみに私は少し暗い方が好きだ。この事を親に話すと、照明の調節が出来るなんて贅沢だとかなんだとか言われた。何故か私達の学校はこういうところの整備が整っているのだ。私は無意味に綺麗なカーテンと窓を開け、外の空気を味わう為に、二、三回深呼吸をする。冬の朝特有の冷たい空気が部屋に入り込み、ちょっと寒い。目の前にはちょうど太陽があって、見慣れているはずの景色が何故か幻想的に見えて肺が少し重くなった。しかしこの重さがまた心地よい。窓から見える道路に見とれているといつの間にか隣にいた香織が話しかけてくる。口を小さく動かす香織の姿までも幻想的に思えてきて、これはいけないと意識をまた道路へ飛ばす。車は通っていない。私たちは寝巻きのままだが、このままだべっていても誰にも見られる心配は無いはずだ。
「初めて見た...?朝の道路」
「初めてでは無い......と思う。多分」
「早起きすれば毎日見られるのに勿体ない」
「今日見れたから満足です」
「えぇ.........。、、それにしても、雨も降ってないのに...なんかキラキラしてて綺麗よね...」
「...君の方が綺麗だよ?」
私は渾身の決め顔で歯の浮くようなセリフを言った。ついノリで言ってしまうのだが、実際言い終わった後は抜けかけた乳歯を引っこ抜いた時くらいの心の痛みがある。
「道路と比べられてもねぇ」
もっともだ。
その後、以下に上手く告白出来るかの勝負に発展し、最終的に百人一首を使った告白が最もロマンティックだと結論付ける。今思えば、そんな事は有り得ないと思うが。
私達は、そうやって今日の朝をくだらない話をして過ごす。いつもはギリギリを攻めていて忙しい朝だったが、このふわふわした時間を味わえるのならば、明日くらいは、まあ、頑張ってみるのも悪くないと思う。
「そろそろ着替えよっか、衣織」
「あ、そう言えば着替えてすらないんだった。道理で楽な訳だよ。」
窓とカーテンを閉め、着替えを引っ張り出す。意外ではないが、香織はかなり丁寧に着替えるようで、ボタンをひとつずつ外す。脱皮するように脱ぐ私とは大違いだ、とか考えていると、私は人の着替えをじっと見ているという事に気づき、サッと目をそらす。
「あ、あーー。そう言えば香織ってさ、好きな百人一首なに?」
「んー、みんな好きだよ?でも強いて言えば...ほら紫式部さんのアレ。ほら恋の歌の」
「いや、友達に向けた歌らしい、実は。」
「え、嘘でしょ」
「ほんとう」
そうしてやっぱり私達はフワッとした会話を始める。しかしフワッとしたもの同士、こちらの方が話しやすい。だから、この関係を壊してはダメだ。友人以上になりたい、など、そんな事を考えてはいけない。
そんな事を考えながら、今日の朝を過ごす。きっと、明日も。
「んん...もう朝......?」
一緒に暮らしている香織を起こさないよう気をつけていたつもりだったが、いくら気をつけようとも所詮、学生寮の2段ベッドなのでギシギシ軋む。眠りの浅い香織からすれば目が覚めるのには十分だ。
「あ、ごめん起こしちゃった...?」
「いや、大丈夫...どうせ後十五分でいつもの時間だし...それに珍しく衣織が早起きしてくれたから、今日は朝話せると思ったら、、、まあ、うん、悪くない」
「つまり嬉しいんだ?」
私は最後の最後で素直になれない香織を茶化し、電気を付ける。
「あーあ、せっかく香織の寝顔を見れると思ったのにな」
「見る気だったの?!良かった...パッと起きられて...」
「えー、良くないよ。漸く念願の香織の寝顔が見れると思ったのに...お預けかあ。まあ、来月辺りにもう一度頑張ってみるわ」
「いや明日頑張れよ...」
念願ならば明日にでも頑張ればいい物を、と思うだろうが、私にとって睡眠は命なのだ。
2日連続でその時間を削るなんてとんでもない。
「言っとくけど、朝ひとりぼっちなの、かなり寂しいんだからな?衣織寝てるから照明も全灯に出来んし...」
それは悪かったと思い、私は照明のボタンの「全灯」を押す。ちなみに私は少し暗い方が好きだ。この事を親に話すと、照明の調節が出来るなんて贅沢だとかなんだとか言われた。何故か私達の学校はこういうところの整備が整っているのだ。私は無意味に綺麗なカーテンと窓を開け、外の空気を味わう為に、二、三回深呼吸をする。冬の朝特有の冷たい空気が部屋に入り込み、ちょっと寒い。目の前にはちょうど太陽があって、見慣れているはずの景色が何故か幻想的に見えて肺が少し重くなった。しかしこの重さがまた心地よい。窓から見える道路に見とれているといつの間にか隣にいた香織が話しかけてくる。口を小さく動かす香織の姿までも幻想的に思えてきて、これはいけないと意識をまた道路へ飛ばす。車は通っていない。私たちは寝巻きのままだが、このままだべっていても誰にも見られる心配は無いはずだ。
「初めて見た...?朝の道路」
「初めてでは無い......と思う。多分」
「早起きすれば毎日見られるのに勿体ない」
「今日見れたから満足です」
「えぇ.........。、、それにしても、雨も降ってないのに...なんかキラキラしてて綺麗よね...」
「...君の方が綺麗だよ?」
私は渾身の決め顔で歯の浮くようなセリフを言った。ついノリで言ってしまうのだが、実際言い終わった後は抜けかけた乳歯を引っこ抜いた時くらいの心の痛みがある。
「道路と比べられてもねぇ」
もっともだ。
その後、以下に上手く告白出来るかの勝負に発展し、最終的に百人一首を使った告白が最もロマンティックだと結論付ける。今思えば、そんな事は有り得ないと思うが。
私達は、そうやって今日の朝をくだらない話をして過ごす。いつもはギリギリを攻めていて忙しい朝だったが、このふわふわした時間を味わえるのならば、明日くらいは、まあ、頑張ってみるのも悪くないと思う。
「そろそろ着替えよっか、衣織」
「あ、そう言えば着替えてすらないんだった。道理で楽な訳だよ。」
窓とカーテンを閉め、着替えを引っ張り出す。意外ではないが、香織はかなり丁寧に着替えるようで、ボタンをひとつずつ外す。脱皮するように脱ぐ私とは大違いだ、とか考えていると、私は人の着替えをじっと見ているという事に気づき、サッと目をそらす。
「あ、あーー。そう言えば香織ってさ、好きな百人一首なに?」
「んー、みんな好きだよ?でも強いて言えば...ほら紫式部さんのアレ。ほら恋の歌の」
「いや、友達に向けた歌らしい、実は。」
「え、嘘でしょ」
「ほんとう」
そうしてやっぱり私達はフワッとした会話を始める。しかしフワッとしたもの同士、こちらの方が話しやすい。だから、この関係を壊してはダメだ。友人以上になりたい、など、そんな事を考えてはいけない。
そんな事を考えながら、今日の朝を過ごす。きっと、明日も。
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