2.邂逅
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不完全燃焼気味な私は、残念な心持ちで再び山の中を歩き出した。
時々「おーい、鬼はいないかー!」などと呼びかけてみるものの、反応は無くただ梢の擦れる音がするばかりで、何とも侘しいものだった。
しばしそうして山中をうろついていた時だった。
どこかから、切羽詰まったような声と何やら揉めているような二つの声が微かに聞こえてきた。人間の声だ。
もしかしたら鬼と戦っている人がいるのかもしれない。
それなら私もぜひ参戦しよう!と思い立ち、いそいそとその声がした方へと足を運んだ。
しかしその音がした方に来てみれば、鬼と戦闘中にある訳でもなく、私より歳上であろう一人の細身の男性が困惑した様子で片膝をつき、ぼろぼろと涙を零している光景だけだった。
その人物の傍らには仮に支給されている刀が落ちていたが、刃は途中でぽっきりと折れている。
全く状況が読めない様子を目の前にし、私も大いに混乱したが、とりあえず何があったのか聞き出そうとその人物の傍に行き、しゃがみ込んで怪我が無いか確認してから声を掛けた。
「今さっき、この辺りから声がしたみたいだけれども…何があった?」
「……刀を奪われた」
「…は?」
想定外の返答に、思わず間の抜けた声が出た。
詳しく訊ねてみれば、どうやら鬼と接触のあった人物がもう一人ここにいたようで、ひどく取り乱した様子で彼の刀を奪って行ったらしい。
鬼と戦闘になったのか、折れた刀はその人が所持していたものらしいのだが、それを押し付けてこの涙を流す人物のものを奪ったそうだ。
その際に「目の見えないお前が持っていてもどうせ無駄だ」という暴言まで吐き捨てていった…との
その言葉によくよく男性の目元を見てみれば、確かに
しかしこの最終選別にいるくらいなのだから、実力があってのことなのだろう。
何故、相手の力量も分からないのに勝手に無駄などと判断するのか。
私は何故だか、自身の身に起きた事でもないのに、理不尽さに怒りに駆られ始めていた。
しかし一方で、男性は落ち着いた声色で口を開く。
「彼も気が動転していたのだろう…自身の身が危うくなれば、他者など気遣う余裕などは皆…」
「だからと言って、他人のものを奪って良いなんて道理は無い!!」
その人物の言葉を遮り、思わず声を荒らげてしまった。
私の怒りを孕んだ語気に、彼は驚いた表情を浮かべた。
無性に苛々してしまい、私はその勢いのまま言い放つ。
「その奪った奴はどっちに行った!?」
「……その折れた木の方角だ」
「追いかけよう!そして返してもらおう!!」
「は…いや、私は」
有無を言わさず私はその人の手首を掴むと、勢い良く引っ張り立ち上がらせて、指し示した方へとずんずん突き進み始めた。
「刀なら私が持っている、もし鬼に遭遇しても私が守るから大丈夫!」
「………」
先程首を落とした鬼くらいの力量ならば、さほど苦戦せずに戦えるだろう。
現状丸腰のこの人を放って行けるほど、私も薄情ではない。ましてや盲人ならば尚更だ。
草木の生い茂る山道なので、なるべく歩調は急かさないようにしようと気をつけて進んでいたのだが、手を引くその人は困惑したように声を掛けてきた。
「私は確かに目は見えないが…手を引かれずとも、一人で歩くことは可能だ」
「…えっ!?」
予想だにしなかった発言に思わず足を止め、振り返ってその人物を見た。
…本当にそんな事が可能なのだろうか?
そんな私の疑問を見透かしたかのように、彼は言葉を続けた。
「見えない分感覚や気配、歩く自身の足音の反響から何処に何があるか、
「へー、そうだったのか……お兄さんすごいんだねぇ」
やはりこの選別に参加するくらいなのだから、確かな実力のある人物だったのだ。
私の予想は当たっていた。
ふと、私は自身の手を見遣ると、しっかりと相手と繋いでいるのが視界に映った。
「あ……ご、ごめん、無遠慮に引っ張ったりして」
「…いや、構わない」
慌ててぱっと手を離したが、何だか気まずい心持ちになってしまった。
ある程度歳の近い異性とまともに接したことが無い私は、今更ながら妙な気恥しさに駆られた。
何か適当に話を振って気を逸らそうと考えた時、不意に浮かんだ事が一つ。
「…そういえば名前、教えていなかったね。私は羽把岐 真尋。お兄さんの名前は?」
「……悲鳴嶼 行冥だ」
「うん、行冥ね。まあこれも何かの縁だと思うけど…とりあえず、最終選別の間だけでもよろしく」
私がそう話してにっと笑うと、その行冥という人物も、初対面の時からずっともの悲しげな面持ちをしていた中で、少しだけ表情を和らげるのが見受けられた。