短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
…やはり止めておけば良かっただろうか。
そんな後悔の念を抱きながら、完全に酔っ払った真尋になすがまま絡まれていた。
元日の任務の帰りに偶々彼女と共になり、初詣の後に自身の屋敷へと招いた。そこまでは良かったのだ。
問題はその後、各々湯浴みを済ませ朝餉の際に"少しは元旦らしく"と思い、貰い物で置いてあった酒を勧めたのがまずかった。
───────
「そういえば私、まともにお酒って飲んだことないかも」
猪口に注がれた酒を眺めながら、真尋はそんな事をぽつりと呟いた。
「そうか…それならば、少し味見をして苦手だと思ったならば残すと良い」
元日らしく多少の御節の献立が入った朝餉を口にしている為、空腹時に呑んだ時の様に酔いがまわりやすい事はないだろうが、まだ慣れていないのならば彼女自身がどれだけ呑めるのか、把握していないだろう。
そう思い、少しずつ試し飲みをするよう促したのだが─
「よしっ、いただきます!」
やけに気合いの入ったその言葉の後に、一気に
何故、言ったそばから守らないのか。
自身で"まともに飲んだ事が無い"と発言したばかりなのに、何故一気飲みをしたのか。
真尋と恋仲になったものの、時折彼女の考えが読めなくて頭を抱えそうになる事が屡々ある。
それでも、破天荒さを垣間見せる彼女の行動や思考を許したり、時には面白くすら思ってしまうのは、惚れた弱みというものなのだろうか。
そう考えていると、彼女の明るい声が上がった。
「ん、意外といけるかも!…まあ、味は美味しいかどうかはさておき」
「…あまり飲み過ぎないよう、程々にしておけ」
「うん、あともう一杯だけもらおうかな」
そうして真尋は上機嫌に酒を嗜んでいたのだが、最初はほろ酔いの雰囲気で笑う事が多くなっていたが、次第に呂律が覚束無くなり気付けばすっかり出来上がっていた。
自分が酒に強い分、猪口二杯程度ならばと思っていたのだが、その認識が甘かった。
勢いづいた相手がその程度で終わるわけが無く、私の知らぬ間にどんどんと杯数を重ねていったらしい。
そして彼女に絡まれる、今に至る。
「へへー…お酒って良いものだね、何だか楽しい気分…」
「……水を持って来よう…」
正座から体勢を崩してこちらに寄りかかる彼女の様子は、完全に酔っ払いである。
膳を下げるついでに、酔い覚ましに水を飲ませてやることにした。
一度部屋を後にし、水を持って再度彼女の元へと向かった時には、その酔っ払いは床に大の字で寝転がっている様子だった。
眠ってはいないようだが、相変わらず上機嫌のまま手足をぱたぱたと動かしながら何か呟いている。
「ふふ……世界が回っている…」
「回っているのは君の視界だろう…水を持って来た、これを飲め」
床に伸びている彼女の肩を抱き起こし座らせると、水の入った杯を手渡す。
しかし真尋はまじまじとそれを見つめるばかりで、一向に口に運ぼうとする気配が無かった。
すると徐にそれを傍らに置き、次の瞬間には私の首元に抱き着いてきた。と同時に、唇を重ねられた。
「…!!」
突然の出来事に驚き固まってしまった。
彼女の方から口付けをされる事自体は珍しい事ではないが、それでもする前は向こうの恥じらう気配や雰囲気があってからのため、今こうして唐突にされては戸惑いの方が勝っていた。
しかし相手は構わず、こちらの口腔内に舌を押し入れて私の舌に絡ませてくる。
いつになく積極的な彼女の様子に、次第に戸惑いが薄らいできて、こちらの情欲も少なからず駆り立てられてしまう。
首元に抱き着く彼女の背中に手をまわし、身体を密着させるように抱きしめたところ、女性特有の身体の柔さが衣類越しに伝わり、益々気持ちが高まってしまった。
「……ん……ふ、…」
唇が微かに離れる合間に、真尋の声が微かに息と共に漏れ出て、それがやけに扇情的に感じられる。
何度も口付けをしながら、抱きしめた彼女を床に寝かせてその上に跨った。
寝室ではないが、もうこのままこの場所で行為に至ってしまおうか、と思ったが、ふと押し倒している相手が酔っている事を思い出す。
「……いや、君は酩酊しているのだろう。房事に耽る場合ではない…」
「え~…でも行冥のこと好きだから、したいなーって思うのは普通でしょ…?」
「………その気持ちは有難いが…」
相手の意識が混濁したまま行為に至るのは如何なものか、と良心が歯止めをかける。
すると真尋は徐に私の手を取り、手のひらに口付けした後、彼女の襟の合わせから衣服の中へと誘導し始めた。
飲酒で体温が上がっているのか、触れた彼女の柔肌がやけに熱く感じられ、胸の上部の柔らかな感触が指先に伝わってくる。
蠱惑的な彼女のその行動と、触れた感触に思わず理性が揺らぐものの、私の確固とした意思はそれを踏み留めてくれた。
「っ…真尋、いい加減に…」
「…年初めから、こういう事するの嫌だった…?」
まだ呂律が覚束無いものの、彼女の声は少し寂しげなしおらしいものだった。
物悲しさを帯びたその声色に、思わず同情してしまいそうになりながらも、彼女の問いかけに自身の思いを素直に返す。
「……嫌…という訳ではない…」
「……私は行冥にもっと触れて欲しいし、こういう事するの好きだよ。大好きな人とたくさん触れ合えるからね」
いつになく真っ直ぐな物言いをする真尋は、そう話すと悪戯っぽく笑った。
…彼女からそこまで言われてしまっては、後に引けなくなってしまった。
最早"相手が酔っているから"などとは、自身へのただの言い訳にしか思えなくなった。
胸元から少しだけ彼女の服の中に入れていた手を出して、相手の頬に触れながら訊ねる。
「…酔いが回りすぎて具合が悪くなったら私に言ってくれ。その時は止めにする…」
「うん、大丈夫大丈夫!」
「……君の"大丈夫"はあてにならない…」
「え~」
私の言葉に真尋の苦笑いする声がして、それにつられてこちらも少しばかり笑ってしまった。
そして本格的に行為を始める為、彼女の衣服を脱がせようと手をかけた。
すると彼女は何か思いついた様子で、私の行動に身を委ねながらぽつりと呟く。
「あ。…悲鳴嶼だけに"ひめ"初め…?」
「……何も上手い事を言っていない気がするが」
半ば呆れ気味に返したが、彼女にとってはどこかしらのツボに入ったのだろう。
私の下で、可笑しそうにけらけらと笑い転げていた。
年明けからこうして彼女に振り回されているが、しかしそれは今に始まった事ではない。
とりあえずはその笑いを止めようかと、再度彼女の唇へ自身のそれと重ねて黙らせることにした。