2.邂逅
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あまねさんから鬼殺隊入隊の勧誘を受け、それを承諾した私の生活は激変した。
まず、鬼殺隊士になる為には「全集中の呼吸」という特殊な呼吸法を習得するのが必須のようで、師範とも言える育手の指導の下でその習得方法やら剣術指南やら諸々を徹底的に叩き込まれた。
それでも素質があると言われていた為なのか、私はそれらを一週間程で体得することが出来た。
その際、呼吸の流派で私が最も適正があるのが"風"のようで、しかしどうやら新たな流派に派生する可能性がある事を言われた。
果たしてそれがどんなものになるのかは分からないが、かくして私は最終選別へと挑むことになったのだ。
朧気な月明かりに藤の花が照らされ、その数多の花が咲き乱れる夜の山中。
私はその藤襲山の幻想的な景色に、思わず見惚れてしまった。
試験に訪れていた他の人達は緊迫した空気を纏っていたが、私だけがまるで物見遊山に来たかのような緊張感の無さに、じろじろと訝しげな視線を向けられていたことに気が付いたのは、選別が始まるほんの数分前のことであった。
「皆さん、鬼殺隊最終選別にお集まりくださりありがとうございます」
不意に聞こえた声に、そちらに視線を向けた。
そこにいたのは、全身黒の衣服を基調とした忍びのような装束をした人だった。
口元は白黒の布で覆い隠している。恐らく、鬼殺隊の隠という役職の人だろう。
淡々とした話し方で説明をするその人の説明に、私は静かに耳を傾けることにした。
七日間、飢えた鬼が蔓延るこの山を生き抜く。その説明を聞き、益々空気が張り詰めたものになるのが分かった、のだが。
(最初の方で殆どの鬼を狩り尽くしてしまえば、後の日数は比較的安心して過ごせるのでは…?)
鬼を狩った数は関係ないとは言っていたものの、ここで秀でて討伐数を稼げばあまねさんやまだ見ぬお館様こと"産屋敷耀哉"という人物に褒めてもらったり、今後更に期待をしてくれるかもしれない…!
人一倍褒められたがりな私は、そんな前向きな考えを勝手に抱き、選別に挑む皆の顔色や空気に不安が渦巻く中で、私一人がやる気満々といった心持ちで張り切っていた。
そして、遂に選抜の試練は開始された。
"先手必勝、狩られる前に狩れ"
その信条を抱えた私は意気揚々と山の坂道を走り、早速討伐する鬼を探す。
すると程なくして、少し拓けた場所に異形の影が見えた。
(いた…!)
走り抜ける勢いのまま、育手から貰った日輪刀を抜き払いながら、地面を強く蹴り上げ跳躍した。そのあまりにも突然過ぎる奇襲に、その鬼は為す術もなくあっという間に首をはねられていた。
刀も扱えないことは無いが、やはり慣れ親しんだ三節棍の扱いが恋しくなる。
今一つ物足りなさに、ふうっと小さくため息を吐きながら、刀を振り付着した血を払った時だった。
どうやら鬼はもう一体いたらしく、茂みから覗かせていたその視線と私のものとがかち合った。
一瞬、時間が止まる。
これは僥倖、探す手間が省けた。
そんな考えがつい、顔に出てしまった。
自分でも、にたりと表情筋が動くのが分かった。と同時に、潜んでいたその鬼の表情が見る見る強ばっていく。
「ひ……ヒィッ…!!」
「あ、待てッ!私の討伐数に貢献しろ!!」
ひどく畏怖した様子で、脱兎のごとく逃げ出した小柄な鬼を、私は慌てて追いかける。
鬼は私達人間を食べる為に襲いに来るんじゃなかったのか。…いや、何故私が追いかける側になってしまっているのか!?
「待て!これじゃ私がまるで鬼みたいじゃないか!!」
丸腰で逃げる私より小さい体躯の鬼と、刀を手に追いかける、女にしては高身長の私。
果たして他者の目からしてどちらが悪と映るのか、甚だ心配になるところだ。
そうしてしばし"逆鬼ごっこ"をしていたのだが、どうも足の速さは向こうのほうが少し上手だったらしい。
目標の姿を完全に見失った私は一人、山の森の中で舌打ちするのであった。