短編
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行冥と恋仲になってから、一緒に過ごす時間も増えたし語り合う事も多くなった。
しかしそれでも彼について、知らない点はまだまだ沢山ある。
そして私は、その人物の屋敷で寛ぎながらその中の一つの質問を投げ掛けてみることにした。
「そういえば行冥は、女性の好みって何かある?」
「………どうした急に…」
質問をされた方は、"また何か妙な事を考えているのでは"と言わんばかりの表情をこちらに向けてくる。
しかしこれは、至って真面目な質問だ。
もし行冥の自分好みの女性が現れた際、私からその人物に心移りでもされてしまったら、こちらとしてはたまったものではない。
それゆえ、この質問はいつかしてみようと前々から考えていた。
「いやほら、もし自分好みの人が現れたとして、その人に心変わりでもされたら嫌だなーって…」
「それは無い。…君を裏切るようなことは決してしない」
相手は真面目な面持ちで、やけにきっぱりと即答してきた。
その様子と言葉だけで、行冥がどれだけ私に対して
だがそれは、私の中では答えになっていない判定になっている。
そのため、更に質問に答えやすいようにと訊ねた理由を追加で述べた。
「心移りしないのは分かったけど…でも、もし好みがあるのなら私もそれに近づけるように努力したいなって。…そうすれば行冥も、もっと私のこと好きになってくれるかもしれないし…」
「………」
どうやらこの理由は相手にとって、何か心にくるものがあったらしい。
少し驚いたような表情の後、照れた様子でふい、と
何が彼の心の琴線に触れるのか分からないなぁ、などと思いながら、私は好みの一例を挙げてみることにした。
目は見えていないので、美醜や見た目の点を除くとなると、触れた際の感覚や声質が関与してくるだろう。
そう考え、世間でよくある無難な例を述べた。
「ほら、何か一つくらいはあるでしょ。例えば胸が大きいだとか、声がすごく可愛いとか」
「……真尋はそのままで良い、好みというならば"君そのもの"だ…」
「んん…絶妙に答えになってない気がする…」
私が求める答えは"好みの要素"なので、その返答では今一つ腑に落ちない。
声色から、納得がいっていない私の気配を察したのか、行冥は少し考えた後に言葉を選ぶようにして話を続けた。
「…強いて言うならば。心根が真っ直ぐで、私の前では気取らず良く笑う所が良い…と言っておこうか…」
「んー…つまり、自分に正直ってこと?」
「…言い換えるのならば、そうだろう」
それを言うならば、私だって他の隊士達の前では"褒められたい"気持ちが動いてつい気取ってしまうのに、行冥の前では素のままでいられるのがすごく有難いし、精神面では非常に助かっている。
そして、それを受け入れてくれている上に好いてもくれていると判明し、おかげで女性の好みの傾向を聞き出す前に気持ち的にはすっかり満足してしまった。
「ふーん、そっかそっかぁ…」
ついつい顔がにやけてしまう上に、声までそれにつられてしまう。
そうして一人で悦に入っていると、傍らに座っている人物は思い出したように小さく呟いた。
「…それと声ならば………褥を共にした時の君の声は、艶めかしくもあり可愛らしいとも思っている…」
「…!?」
不意打ちを食らった。
性行為に及んでいる時の声や諸々を持ち出すのは卑怯だ。
そんな、こちらの余裕の無い場面を言われてしまい、私は一気に顔に熱を帯びるのを感じた。
すると向こうも気恥しい様子ながらも、その時の心情を素直に吐露する。
「それ故に、君の声をもっと聞きたいが為色々と張り切ってしまうのだが……しかし、声が出なくなる程の君の様子も─」
「分かった分かったから!もう十分です!!それ以上語らないで…!!」
羞恥心に耐え切れなくなり、私は顔が熱いままながらも言葉を重ねて相手の話を制止した。
そんな、最中の私の様子がどうなのか等恥ずかし過ぎて耳を塞ぎたくなる。
どうかそれは心の中に一生留めておいてくれ、と思っていると、不意に相手がこちらにじっと顔を向けていることに気が付いた。
その纏っている空気が何やら妙な圧がある事に気づいたものの、それに気付かない
「何、どうしたの」
「………いや、話している内に君の"可愛らしい声"が聞きたくなってしまった…」
「…まだ!まだ日が高いから!後で!」
薄々感じ取っていた行冥の雰囲気の意味をはっきりと受け、私は厳しい声でそれを制した。
すると向こうは心無しか残念そうな様子ながらも「約束は違えぬよう」と小さい声で念押しされてしまった。
…明日、声枯れしないと良いんだけれど。
そんな心配をしながらも、これから訪れる夜の時間まで、また落ち着かない心持ちで過ごすことが確実となってしまい小さくため息をつくものの、心の奥底には微かに嬉しさが燻っていた。