短編
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ふと目が覚めた時、私は恋人の腕の中に
視界にはその人物の胸板が、至近距離で目一杯にある光景。
昨晩、私を抱きしめているその人物と身体を重ねた後、そのまま意識が途切れるように眠ってしまった為、互いに布団の中で一糸まとわぬ姿のまま身体を寄せ合っている状態だった。
頭を少し動かして視線を室内に向けると、襖の向こうからは雀の声がしており、室内の明るさからして日が登り始めた頃だろうという事は推測出来た。
恋人、もとい行冥はまだ眠っているようで、私はろくに
同衾した次の日は、私の方が体力を消耗し切っている為なのか、いつも行冥より起床が後になってしまうのだが、今回は珍しくこちらが先に目覚めていた。
早々に寝衣を着込んで朝餉の用意でもしようかと思うものの、下手に動けば相手を起こしてしまう。
(ゆっくり抜け出せば大丈夫かな…)
半ば使命感のような緊張を帯びながら、私は彼の腕から脱出を試みることにした。
太く逞しい腕の下をそろそろと潜り、どうにか起こさず抜け出してから傍らに座ると、布団の脇に脱ぎ捨てられたように、無造作に置かれていた寝衣の浴衣に袖を通す。
適当に帯を結んだ後、まだ布団の中で眠っている人物にちらりと視線を遣った。
行冥は目を閉ざしたままで、普段の悲しげで険しいような表情ではなく、今は眉間の皺も消えており穏やかな顔で眠っていた。
私はそっと身を乗り出すようにして、その人物の寝顔を至近距離でまじまじと眺める。
この人の寝顔を間近で観察出来るのは恋人である私だけの特権なのだと思うと、何だかちょっと優越感を感じた。
「……ふふ…」
その優越感のせいか、はたまた大好きな人の寝顔を眺めているせいかは分からないが、自然と笑みが
何時間でも見つめていられそうだな、と思う中で、私の胸中は見つめるだけでは飽き足らず"触れたい"という欲が出てきてしまっていた。
しかし触れるとなると、いよいよ以て彼を起こしてしまうかもしれない。
(んん~~…!!)
心の中で葛藤するも、勝敗は欲望の方が余裕で勝ってしまった。
まあ少しくらいなら大丈夫だろうと判断し、私はそっと手を伸ばして行冥の髪に触れた。
硬さのある黒髪が指の間に入り込み、ゆっくりとその人物の頭を優しく撫でる。
さすがに起きてしまうかと様子を見ながら撫でてみたが、彼の瞼は開かずに依然固く閉ざしたままだった。
昨晩で大分体力を消耗したのだろうか、どうやら深く眠り込んでいるらしい。
これを目の当たりにし、すっかり調子に乗った私は更に触れる箇所を増やしてみることにした。
これだけ触れても起きないのならば、と思い行冥の額の傷跡辺りにそっと口付けを落とす。
そこを起点に、頬、瞼、唇にと次々口付けをする。
覚醒時ならば彼は照れて顔を背けたりしてしまう為、顔中にこれを出来るのは今しかないのでここぞとばかりにしてやった。
そうして欲を満たした私の表情は、それはもう大満足の笑顔になっている事は鏡を見ずとも分かった。
これで上機嫌に朝餉の支度も出来そうだぞ、と思っていた時だった。
「……随分と好き勝手な事をするものだな…」
「んぇっ!?」
眠っていたはずの人物の声がして、ひどく驚いた私の口からは変な言葉が飛び出した。
想定外の事態に固まっていると、今まで閉じていた行冥の瞼がゆっくりと開き、白の双眸を覗かせた。
視覚を失っているはずのその眼は私に向けられ、まるで何もかも見抜かれているような気がして少しばかり緊張した心地になる。
「…お……おは、よう…」
「…おはよう」
とりあえずぎこちなく朝の挨拶をすると、相手も返してくれた。
すると行冥は少し照れたような困惑したような表情を浮かべ、呟くように話した。
「……私が眠っているのを良い事に、真尋に寝込みを襲われるものかと思っていたが…」
「さっ、さすがにそこまではしないよ…!」
まあ、こちらの体力が有り余っていたのならば可能性があったかも、とはさすがに今の状況では言えなかった。…いや、それよりもだ。
私はふと気になった事を彼に訊ねてみる。
「というか、行冥はいつから起きてたの?」
「確か……君が私の腕から抜け出す辺りだったろうか…」
「ほぼ最初からじゃん」
思わずそう冷静にツッコミを入れてしまった。
…ということは、私がまじまじと顔を眺めていた事も頭を撫でたりしていた事も顔中に口付けをした事も、全部気付かれていたということか。
行動が筒抜け状態だったと判明し、己の挙動を何だか急に恥ずかしく感じてしまった私は、つい視線を相手から逸らした。
するとその注意が逸れたのが原因なのか、気を緩ませていると不意に行冥に手首を掴まれ、そのまま布団の中へと引っ張られた。
「わぁっ!?」
手を引かれた勢いのまま私の体はころんと転げ、布団の中で仰向けに寝転がってしまった。
はっと気付いた時には、頭上には行冥の姿があり、両手首は布団に押さえつけられ組み敷かれていた。
「あの…これは…」
「……中途半端に煽られてしまった故、君に責任を取ってもらいたい…」
「え!?私のせい!?」
昨晩あれほど身体を重ねたというのに、また起きがけに致そうというのか。
この人物の体力諸々は無尽蔵なのだろうかと思っていると、徐に片方の手が解放された。
相手も自由になったその手は、せっかく着込んだ私の浴衣の帯を解き始めている。
「待っ……今日こそは私が朝餉の準備しようと思ったのに…!」
「…終わったら、二人で支度するとしようか」
「…………」
それも悪くはないけれども、たまには私が尽くす側になりたい。
そんなささやかな不満を抱きつつも、既に帯は外され襟の合わせも捲られて、素肌が顕にされてしまっては最早どうしようも無かった。
どうやら行冥は、私が本気で嫌がっていないことも、むしろ薄ら嬉しさと愛おしさの感情すら抱いている事すら全てお見通しの様子だった。
(…ずるいなぁ)
まるで手のひらの上で転がされているようで、その事に内心少しばかり悔しさを抱きつつも抵抗は完全に諦めた私は、行冥の首筋に手を添えて引き寄せるように軽く力を込め、唇を重ねた。