9.閨事
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目が覚めた時、外は明るく大分日が高くなっている様子だった。
ひどく重だるい身体をのそりと起き上がらせると、同衾した相手の姿は無くどうやら私一人だけ布団の中で眠りこけていたらしい。
しばしぼうっと呆けていたが、ふと体には寝衣の浴衣が整えられているのに気が付いた。
恐らく行冥が意識の無い私の身なりを整えてくれたのだろう。
まさか、初めてであそこまで激しく求められるとは思わなかった。
そしてそれに対し、こちらも我を忘れる程乱れてしまうなんて。
一夜明けて昨晩の事を少しずつ思い出すうちに、じわじわと羞恥心が込み上げてくる。
果たしてどんな顔をして会えば良いのだろう、と思っている最中、私がいる部屋に足音が一つ近づいてくるのが聞こえた。
この家の主がここに向かってきていると察した私は、咄嗟に身体を横たえると頭まですっぽりと布団を被った。
そして間もなく、この部屋の襖が開く音がした。
「…真尋、起きたのか」
「……ん。お、おはよ…」
盲目の相手からすれば、こちらの表情などは見えていないのは勿論分かっているが、未だどんな顔と心構えをして良いのが分からずに私は気恥しさ故に布団の中からでしか挨拶を出来なかった。
すると相手は私の具合が悪いのかと心配になったのか、傍らに座り込む音がして布団の上からそっと労るように私の体に手を添えてくる感触がした。
「身体の具合は…」
「ん……気だるいけど大丈夫…」
「…そうか。朝餉の支度は出来ているが……食べられそうか」
そういえば、ぼんやりしている時に味噌汁の良い匂いがしていたな。
そう思うと自身の空腹感が顔を覗かせてきて、お腹が小さく鳴った。
…私の羞恥心は、食欲に負けたのだ。
「…食べる」
私は布団から目元だけ覗かせて、行冥を見てぼそりと返答した。
すると今まで心配そうな表情を浮かべていたであろう彼は、ほっと安堵した表情になり口元で薄く微笑んでいた。
行冥の後を着いて行き、時間にしては少し遅めの朝餉につく。
味噌汁を一口飲むと、水分と塩味が身体に染み渡った。
「はー……美味し…」
その一口で燻ってた食欲がどんどんと湧いてきて、食べ進めるうちに照れくささも薄らいで私の心は元気を取り戻していった。
用意してくれた朝餉をすっかり完食し、ご満悦で食後のお茶を啜っていた時だった。
「その……昨晩は色々と君の身体に負担をかけて済まなかった…」
「んぐっ…!?」
突然あの気恥しい記憶を蒸し返され、私はお茶が気管に入りそうになり
咳が落ち着いた頃にちらりと行冥の方を見遣ると、彼は申し訳無さそうに顔を少し俯かせている。
そういえば朝餉を共にしている間も、終始肩身狭そうな空気を纏っていたなと思い出す。
恐らく私に無理強いさせたと、自身を責めているのだろう。
しかしそれは応じた私にも非はある。
羞恥心を抱えつつも、気負う彼を慰めようと言葉を選びながら話す。
「あーえっと…その、行冥が気に病むことも無いよ…?私だってそれだけ愛されてるんだなって思うと嬉しかったし、それに……き………気持ち良かった、から…」
後半は段々と非常にか細い小声になってしまったが、それでも相手の耳にはしっかりと届いていたようで、安堵した表情の中に薄らと喜色も滲ませていた。
ふと、私は一つ気になった点を行冥に訊ねた。
「ち…ちなみに昨晩は、何回致して…?」
「…………」
私のその問いに、相手は途端に気まずそうな面持ちになり顔を背けて下を向いてしまった。
そしてすっと手のひらを私に向ける。
それが"制止"を意味していると思い不思議に感じていたがどうやら違ったようで、指の本数分だけの数を意味するものだと理解するのに少しかかってしまった。
「あ、それ回数の意味!?」
驚愕して声を上げる私に対し、相手は小さく頷いていた。
…私の知っている知識だと一、二回程で終わるものだと思っていたのに、朦朧としている間にまさかそれだけ求められていたなんて。
しかしそれだけ私に夢中になってくれていたのだと思うと、怒ったり無碍にも出来ずただ照れくささが募るばかりだった。
だが次の日にこうして倦怠感が残ったり、身体に支障があるのも困りものである。
もし任務が入ったりしたら、差し支えがある可能性も考えなくてはならない。
それに今後、こうして褥を共にする度に意識を手放す訳にもいかないだろう。
そう思い、私はたどたどしい口調になりながらも注意を促した。
「えーと…行冥の気持ちは嬉しいんだけどね?まあ、なんと言うか…ある程度抑えてもらえると…いいかなって…」
「……善処する…」
私の言葉に、行冥は相変わらず顔を背けたままぽつりと返答した。
彼の頬にはほんのりと赤みがさしている。
そうしてお互い照れやら気恥しさやらで、妙な空気が流れてしまった。
そんな空気を打破するように、私は大きい声で元気良く言葉を発する。
「さ、さて!洗い物でもしようかなっ!!」
ご馳走様でした!と言葉を続けた後、私は朝餉の茶碗やらの食器を二人分下げて、行冥の方はあまり見れず半ば逃げるように台所の方へと向かった。
まだ身体は気怠さが残っていたが、愛おしく感じる倦怠感というのもまた不思議なものだと感じつつ皿洗いを始めた。
この日を境に、"互いの暇が重なった時は同衾する"ということが段々と習慣になってきてしまった。
互いに柱故に中々逢瀬する時間が無い為そうなるのは仕方がないとは思いつつも、肌を重ねる気恥しさは矢張り中々慣れるものでは無かった。