9.閨事
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木々の葉が青々と茂り始める初夏の頃。
私は久々の暇が出来て、そしてその日は行冥も暇がある日だと前日にこっそり本人が教えてくれた。
以前に口付けしたりと中途半端に昂ってしまった際に、互いに暇が重なったら…という約束を交わしていた為、私は本日それを果たしに彼の屋敷を訪れていた。
今回はちゃんと玄関から訪ねた所、行冥はひどく驚いていた。…私、そんな頻繁に中庭から不法侵入していただろうか?
そうして玄関でいざ対面するも、何だかお互い硬い空気になってしまっていた。
その沈黙を切り裂く様にして、こちらが先に口を開く。
「その……今日は泊まりに来たよ」
「…ああ」
「今回はほら、一泊するのに必要な物も持って来たし」
「……ああ」
いつにも増してやけに口数少ない行冥だが、不意に私の方に手を伸ばして頭にぽん、と手を置いた後、前髪を指でかき分け額を親指で撫でた。
「…傷は大分癒えたようだな」
彼の言う傷というのは、以前に合同任務で遺族と揉めた際に庇った時についた傷のことだろう。
その一連の動作で、痕に触れて傷の具合を確認したのだと理解した。
「うん、薄ら痕があるくらいで全然平気だよ」
「そうか…」
私の返答を聞き、目の前の人物は少し表情を和らげた。
しかしそれからまたお互い沈黙してしまい、妙に気まずい空気が流れる。
恐らく向こうも例の"約束"の事が頭にちらついているのだろう。
そう思うと余計に気恥しくなり、私は威勢よく「お邪魔します!」と気持ちを誤魔化すように大きめの声で挨拶をして中へと上がり込んだ。
客室用の部屋を使うように言われ、私はその室内に持ってきていた荷物の風呂敷を解く。
時刻は今昼下がりなのだが、夜まではまだ大分時間がありそうだ。
その時間分だけ妙に落ち着かない心地でずっといるのかと考えると、もういても立ってもいられなくなった私は─
「行冥!雑巾と桶ある!?」
「……は…?」
「掃除する!」
気を紛らわそうと、掃除道具を借りることにしたのだった。
柱の屋敷には、それぞれ家屋を維持する担当の隠がおり、彼らが修繕等の他掃除も受け持っているために清掃は十分行き届いているのは屋敷を所有する私も知っている。
行冥もそう思ったのだろう、その申し出を聞き不思議そうな表情を浮かべた。
「その必要は無いと思うが…久方ぶりの休暇なのだろう、好きに寛いでいると良い」
「いやー何か突然、すごく雑巾がけしたい気分になっちゃって!もう今すぐ床とか拭きまくりたい!」
雑巾がけしたい気分って何だ。掃除狂いか。
思わず自分で内心突っ込みを入れてしまった。
そうして何とかそれらの掃除道具を借りた私は、縁側の廊下を気の済むまで爆走して雑巾がけしていた。