7.幼雛
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月日は流れ、年も明けて季節は冬から春の兆しが見られる頃になった。
頬を撫でる風はまだひやりとするものの、陽射しは暖かさを帯び始めている、穏やかな気候だった。
鬼殺隊隊士は相変わらず任務と鍛錬に明け暮れていたが、ここ最近は特に皆の空気が和やかで喜色に包まれていた。
というのも、年の瀬頃にお館様とあまね様の間に御世継ぎが産まれたからだ。
聞いた話によるとどうやら産まれた子は五つ子だったらしく、出産後のあまね様の体調が
現在は子供達もあまね様も双方ご壮健とのことで、隊内は安堵と共に喜びに溢れている、そんな状態だった。
そのような経緯のため、御子が産まれた時も柱達の挨拶はお館様へのみで、あまね様と子供達とは面会は出来ずにいた。
そして今、私は行冥と共に改めて挨拶の為に産屋敷邸へと向けて足を運んでいる。
「えーと……『この度、ご内儀様がご快復なされたことを謹んで御祝い申し上げます』…だっけ」
「…棒読み感は少し薄らいできてはいる」
「本当?やった!」
「薄らいでいる、だけでまだまだだが」
「………」
行冥の褒める言葉に喜んだのも束の間、続いた言葉に高揚した気分はすぐさま地面に叩きつけられた。
思わずじろりと睨み付けてみるものの、隣の人物は前方を向いたまま飄々とした横顔をするばかりだった。
そんなまだ肌寒さの残る道を歩きながら、私はその人から畏まった場面での挨拶の言葉を学んでいたのだった。
柱合会議等でお館様と面会する場面は多々あるのに、いつまでたっても砕けた物言いをするのも如何なものかと思い、こうして彼から教わっているものの、中々使い慣れない言葉ばかりで丁寧な言葉遣いを習得するのが難航していた。
そして今もこうして共に挨拶に行くのも、私が「お館様達への挨拶に不安があるから助けてほしい」と泣きつき頼み込んだからで、相手はその申し出を受け入れてくれた。
「うーん、やっぱり堅苦しい挨拶は苦手だなぁ…」
ため息混じりにそうぼやくと、隣の人物は気遣ってくれているのか労いの言葉をかけてくれた。
「真尋が学びに対する真摯な心がけがあるのならば、やがては習得することも可能だろう…それまでは、日々精進すると良い」
「うん、柱なのにいつまで経ってもちゃんとした挨拶が出来ないのは示しがつかないからね。よし、頑張ろ…!」
ふん、と意気込む私を見て、行冥はまるで子供の成長を見守るかのような雰囲気で隣を歩いていた。
まるで保護者みたいだな、と思いつつも、彼からそれを学び成長した姿を見せたいのもまた事実である。
私は再度、挨拶の言葉を復唱した。
─────
そうして屋敷に辿り着いたのだが、やはり習ったばかりの挨拶をいざ実践するとなると緊張してしまう。
無意識に体が強ばるのを感じつつも、隠の人の案内を受けて屋敷の内部へと通された。
お館様がいる座敷に通され、私は行冥と横並びで座し一礼する。
「この度、ご内儀様がご快復なされたことを謹んで御祝い申し上げますと共に、御子息様、御息女様のお健やかな成長を心よりお祈り申し上げます」
やった、噛まずに言えた!と内心喜んでいると、お館様の優しい声が返ってきた。
「ありがとう、真尋も言葉遣いが上手くなってきたね。行冥のおかげかな?」
「はい!今もここに来る途中で教わってきました!」
元気にそう返答すると、隣から諌めるような声がぼそりと聞こえてきた。
「……真尋」
「あ」
行冥の声色と気配で、ここに来る直前まで指導を受けていた事実についてつい口を滑らせたことに気がついた。が、もう言ってしまったものは仕方がない。
私は完全に開き直った気分でいると、前方にいるお館様は楽しげに笑う表情を見せていた。
「ふふ、良い影響を受けているみたいだね。行冥、今後も彼女のことを宜しく頼んだよ」
「…御意」
お館様も咎めずに笑ってくれているようだし、問題無し!大丈夫!といった気持ちで隣の人物をちらりと見たが、向こうは何だか不安げな表情で一瞥するような様子ばかりだった。