5.恋詠
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柱となってからは、まるで憑き物が落ちたかのように晴れやかな心で、戦いも訓練も、鴉の育成すら順風満帆だった。
隊服も、柱になった暁に一新した。
腕は三節刀を振るいやすいように袖をなくし、上腕まで長く伸縮性のある密着型の腕ぬきを身に着ける衣装を設計してくれた。
下は袴をそのままで裾を絞らずに、空気抵抗を受けやすいようにと考案してくれた。
ちなみにこの隊服に落ち着く前には、やけに胸元が開いた上着や丈の短い袴なども試着したが、縫製係の隠が「解釈違いだ…!!」と何やら頭を抱え、現状に落ち着いた不可思議な経歴がある。
果たして彼の言う解釈違いが何なのかは、最後まで分からなかったが。
…ともかく、鳥柱として活動しやすいように隊服を考えてくれたのは非常に有難かった。
しかし私は一つだけ、設計を練る際にわがままを言わせてもらったのだ。
というのも、足元をブーツにしたいという要望だった。
勿論動きやすさは重視している。
ただ、皆と同じ草履ではなく西洋のその靴の方が、盲目故に聴覚で判断することの多いその意中の人がすぐに気付いてくれるかもしれない、という淡い期待もあったからだ。
本当の理由を話すのは照れくさいのでその事はひた隠して頼んだ所、提供されたのは想像以上に素晴らしいものだった。
柔く丈夫に鞣した革靴は、足の動きに合わせて柔軟に伸び、跳躍時も気にならない程の軽さだった。
踵部分には隠し刃を仕込んであるそうで、通常のブーツよりも足音が少し違うらしい。
(この足音で、私のものだと気付いてくれるかな…)
その靴を試着した時、脳裏に想い人を描きながら私はこつん、と踵をつき音を鳴らしてみた。
草鞋とは違うその足音は、軽やかな音色をしていた。
柱になってから変わった事はまだある。
師範からは「柱は老若男女問わずモテる」という話は聞いていたが、私ももれなくその一人のようだった。
戦闘時は悠然と舞う様に双刃を振るい、身のこなしが軽やかで優雅さすらある中、時折まるで猛禽類が獲物を狩る時のような鋭さと瞬発力がある、と他の隊士達はやけに褒めてくれていた。
特に弐ノ型・
そして、どうも隠の間では「男性としては麗しく、女性としては凛々しい」というのが総評で、何事もそつなくこなす様子や、隊士や隠にも分け隔てなく気さくに話したり平等に接する所からして「爽やかで凛としている、紳士的な人」といった印象が、最早様々な尾ひれがつきながら独り歩きしているらしい。
特に女性隊士や隠の人達からは、何やら熱の篭った眼差しを向けられることが増えた気がする。
(そんな人間じゃないんだけどな…)
そうは思うものの、褒められたがりな私の性は変わらないもので。
それらの印象を崩さないように立ち振る舞い、皆の夢や憧れを壊さないようにと心がけたところ、おかげでその皆が抱く幻想は確固としたものになって行ってしまった。