4.孵化
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手当てが終わり、未だに麻痺毒が抜けない私を行冥は背負ってくれた。
鎹鴉の絶佳に、他の隊士に無事鬼の討伐と私の保護の伝達を頼み、後はこのまま医務室まで運んでくれるそうだ。
田舎道なので傍らの叢には薄が風に
そんな秋の道の中で、私は背負ってくれている人物の温もりを感じていた。
行冥の背中は広く、鍛えられているのが隊服と羽織の上からでも分かった。
頼りがいのある背中だな、と思っていると、不意にその人物に声をかけられた。
「……先程『置いて行かれる』と言っていたが…」
「?うん」
「…私は、君を置いて行くようなことはしない」
そう話す声は、どこか独り言のようにも感じられた。
そしてその口振りのまま、言葉を続ける。
「それでも真尋がその考えが拭えずにいるのならば…君が追いついてくるまで、私はずっと待ち続ける、ということだけは覚えていてほしい」
「……ん」
そうだ、行冥はそういう人だ。
どこまでも優しいこの人物が、誰かの想いや培った絆を蔑ろにする訳が無いのだ。
それなのに、私は何を疑っていたのだろう。
何故、信じられずにいたのだろうか。
勝手な思い込みで焦燥感に駆られ、周りが見えなくなり我武者羅になっていた事に、愚かさすら感じる。
今更ながら、自身の数々の浅慮具合を恥じた。
少し冷えた風が吹き、虫の声だけがする夜道はひどく穏やかで、いつしか私はその人物の背中で眠気に襲われてしまっていた。
鬼との戦いで疲弊したのか、日々の疲労が一気に来たのかは分からないが、眠気に蝕まれた私はそっとその背に頭を
「…眠いのならば、眠ると良い。それも自身の労りの一つだろう」
行冥の顔は見えないけれども、声色からして優しい表情を滲ませているのだろうと予測できる。
先程泣いた所為なのか、はたまた内に秘めていた思いを吐露したおかげなのかは分からないが、今の私はひどく穏やかで胸のすくような心地でいた。
そんな澄んだ気持ちの中に、確りとした想いが一つ存在していた。
─私は、この人が好きだ。
はっきりと恋心を自覚したが、そこには恥じらいも戸惑いもなく、この時の私は素直にそれを受け止めていた。
その愛おしく暖かな気持ちを抱いたまま、私の意識は微睡みに融けた。