3.鳳声
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最終選別は、六日目に突入した。
昨日は結局鬼を倒したのは一体で、以降は全く気配すら無かった。
「残すところあと一日かー…鬼にも全然遭遇しなくなったし、最終選別も無事に終わりそうだね」
そう悠長なことを行冥に話していた時だった。
上空から、ばさばさと羽ばたく音が一つ。
「伝令、伝令ー!!」
「うわーーッ!?」
突如喋る烏が現れ、私は大いに驚いてしまった。
実は私は鳥の声が理解できる、不思議な能力がある。
それでも、耳から聞こえるのはしっかりとした鳥の声で、頭にその鳥が伝えたい事が響くというものなのだが。
こうしてはっきりと人語を話す鳥は見たことが無かった。
行冥も少々驚いている様子だったが、烏が話す次の言葉に意識を持っていかれた。
「最終選別、終了!今カラ導ク場所ニ、着イテ来ルヨウニ!!」
「…え?」
最終選別終了と聞こえた気がする。…まだあと一日残っているのに?
その考えはどうやら行冥も同じだったようで、二人で顔を見合せるばかりだった。
その喋る烏に導かれて、私達は山道を進んで行った。
そして拓けた先にいたのは、選別開始前に説明をしていた隠の人がいた。
「お二人共、おめでとうございます。ご無事で何よりです」
「あの…七日間って聞いていたけど?」
一日数え間違ったかな、と思いながら訊ねると、隠しの人はその問いに答えてくれた。
「はい。七日間の予定でしたが、山にいる鬼がほぼ全滅状態となったため、一日早く切上げとなりました」
「……え!?」
後半になると、鬼と全然遭遇しないと思っていたけれども、まさかそんなに倒していたとは。
詳しく聞けば、この藤襲山にいる鬼は残りあと一体らしい。
鬼を生きたまま捕えてこの山まで引っ張って来るのは中々困難のため、全て全滅させてまたゼロから集めるのは骨の折れる作業なのだそうだ。
その事実に私が愕然としていると、隣にいた行冥も彼に訊ねる。
「…最終選別に来ていた他の者たちは」
「残念ながら、ご存命なのはあなた方お二人のみです」
「そうか…」
二十人以上はいたというのに、生き残ったのは私達だけらしい。その返答に、行冥は合掌し涙を流して南無阿弥陀仏を唱えていた。
しかし隠の人の様子は淡々としていて、次に私達が何をすべきか説明をしてくれた。
まずは隊服の支給と階級の説明、刀作成の為の石の選別について話してくれたが、階級については今回私と行冥については特別な事情があるようだった。
「お二人は、お館様より有望な隊士と才能が見初められたためそれぞれ岩柱、風柱の継子となっていただくそうです」
「!」
有望、才能という嬉しい言葉に私の褒められたがりの心が疼き、思わず「やったー!」と拳を掲げて叫びそうになるのを、ぐっと堪える。
恐らく勘の鋭い隣の人物には気取られている予感はするが、それでも私は必死で真面目な顔付きを保っていた。
「現在の階級は癸ですが、お館様は"二人ならばすぐに級が上がり柱を継ぐことが出来るだろう"とのことでした。本来ですとこの後任務にあたって頂くのですが、お二人には今からそれぞれの柱の元へと赴いていただきます」
その柱達の元に道中を案内する役割として、今から鎹鴉というものをそれぞれつけてくれるそうだ。
隠の人が手を叩くと、程なくして二羽の鴉がこちらに向かって飛んで来るのが朝焼けに染まる空の中に見えた。
行冥の鴉の名前は「絶佳」、私の鴉の名前は「冬暁」というそうで、その私につく子が留まりやすいようにと左手を差し出した時だった。
カァ!と一際大きい声で鳴くと、慌てた様子で私から離れて隠の人の影に隠れてしまった。
様子のおかしいその子を見て、私を含めその場にいた全員が不思議な顔をする。
「敵!敵ノニオイ!!」
「え、敵?」
どこかに鬼の返り血でも着いてるのかな、と思ったのだが、そうではなかったらしい。
「鷲!鷲ノニオイガスル!!」
その言葉にピンときた。
私が子供の頃に雛から育て上げた、イヌワシの颯のことだろう。
そのにおいが手袋の餌掛けについており、それに反応したということか。
烏にとって鷹や鷲は天敵だ、"敵"と発言したのも合点が行く。
「あの、鷲というのは…」
「私の相棒のことだろうね、今呼ぶよ」
右手で指笛を鳴らすと、それは山に反響して大きな音となった。
すると遥か上空から、颯は悠然と大きな羽を広げて舞い降りて来た。
私の左手に留まると、颯は甘えた声で鳴いて頭を擦り付けてくる。
"真尋、ご飯"
「ご飯はちょっと後にして欲しいかな…」
甘えた声の鳴き声の中に、頭にはその意味が響く。
右手で胸元の羽を撫でながら、約一週間ぶりの相棒を宥めた。
私に付くはずの鎹鴉は、相変わらず陰に隠れながらこちらを覗き見し、小刻みに震えていた。