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前略、トレイ先輩が女の子になった。もちろん今日中には治るとは言っていたものの、目の前にいるトレイ先輩は綺麗な女の人にしか見えなかった。ウルフカットの髪はボーイッシュなシルエットを形取っていて、それを不思議そうに撫でる指はしなやかで細いものに変わっていた。何より「困ったな」と言葉を零す、そのふっくらとした唇から私は目が離せなくなっていた。
「どうした? 俺の顔、そんなに見て」
心地よいアルトボイスが彼女から発せられる。いや元は彼だったか。自分よりも大きい胸の主張と、少し自分に近づいた身長が、やはり可愛らしく見えてたまらなかったのだ。
「……綺麗すぎる。罪なんですよ、先輩の顔は」
「おだてても何も出ないぞ?」
「お世辞じゃないです………本当に」
掌の隙間からトレイ先輩の顔をちらりと盗み見て、そう息を溢す。鳴き声のように「かわいい」だとか「綺麗」と言った言葉を呟く私を見かねて、トレイ先輩は呆れたように笑った。
「本当に見るだけでいいのか? ほら、曲がりなりにも恋人同士だろう」
トレイ先輩は腕を広げ、いつものように私から抱きしめるよう促す。やっぱり、変わらずずるい人じゃないか、と唇を甘噛みした。しかしまた、彼のペースにのまれるがままに私はその腕の中へ飛び込んだ。
ぎゅ、と抱きしめた瞬間香るのは、柔軟剤の香りと、少し甘い匂いだった。トレイ先輩は昔、その香りを「ただのお菓子の残り香だ」と言っていた。だが、今その匂いは心なしか強まっているように感じる。
「なんか、不思議な感じです」
歯切れの悪い答えではあったが、要するに友達とハグした時のような感覚を覚えた、ということである。この世界に来てからというもの、そんな機会は久しくなかったので、不思議だと形容した。
ふっと上体を起こし、今は自分と近い背丈のトレイ先輩ともう一度瞳を合わせる。いつもの覆われるような、包まれるような抱擁も勿論好きだが、今みたいに肩を合わせるようなハグも良い。同じ高さで目線がかち合った時、そう感じた。
「これまでは下から見上げるばっかりでしたけど、今日はトレイ先輩と一緒の目線なので。ちょっと近くなった感じがします」
そう微笑むと、トレイ先輩も口元を緩ませた。
「ああ、確かに。お前との距離が近くなったと思えば、これも悪くないのかもな。……こんなことも、できるわけだし」
にぃ、と瞳が細められたかと思えば、次の瞬間にはトレイ先輩の唇へと顔が引き寄せられていた。いつもなら、トレイ先輩が屈むまでの間に目ぐらいは閉じることができた。しかし、相手の顔との距離が近い今、瞳を閉じることさえ叶わなず、いつのまにか上へずらされた眼鏡とトレイ先輩の得意げな目を交互に見つめる他なかった。
妙に響くリップ音の後、呆然とする私へトレイ先輩はこう続けた。
「確かに、お前を安心させることも恋人としては重要だと思うよ。でも、それだけなら友達でもできるだろ?」
俺はお前に、恋人として意識してもらいたいだけなんだよ。
そうも熱っぽい視線で見つめられては、否応無しに意識せざるおえない。ばくばくと一つの挙動だけで忙しなく動く心臓が、それを物語っていた。
「もう一度、キスしていいか?」
眼鏡を外し、もう一度自分を見つめてくる恋人を見て、私はうなずくしかなかった。
「どうした? 俺の顔、そんなに見て」
心地よいアルトボイスが彼女から発せられる。いや元は彼だったか。自分よりも大きい胸の主張と、少し自分に近づいた身長が、やはり可愛らしく見えてたまらなかったのだ。
「……綺麗すぎる。罪なんですよ、先輩の顔は」
「おだてても何も出ないぞ?」
「お世辞じゃないです………本当に」
掌の隙間からトレイ先輩の顔をちらりと盗み見て、そう息を溢す。鳴き声のように「かわいい」だとか「綺麗」と言った言葉を呟く私を見かねて、トレイ先輩は呆れたように笑った。
「本当に見るだけでいいのか? ほら、曲がりなりにも恋人同士だろう」
トレイ先輩は腕を広げ、いつものように私から抱きしめるよう促す。やっぱり、変わらずずるい人じゃないか、と唇を甘噛みした。しかしまた、彼のペースにのまれるがままに私はその腕の中へ飛び込んだ。
ぎゅ、と抱きしめた瞬間香るのは、柔軟剤の香りと、少し甘い匂いだった。トレイ先輩は昔、その香りを「ただのお菓子の残り香だ」と言っていた。だが、今その匂いは心なしか強まっているように感じる。
「なんか、不思議な感じです」
歯切れの悪い答えではあったが、要するに友達とハグした時のような感覚を覚えた、ということである。この世界に来てからというもの、そんな機会は久しくなかったので、不思議だと形容した。
ふっと上体を起こし、今は自分と近い背丈のトレイ先輩ともう一度瞳を合わせる。いつもの覆われるような、包まれるような抱擁も勿論好きだが、今みたいに肩を合わせるようなハグも良い。同じ高さで目線がかち合った時、そう感じた。
「これまでは下から見上げるばっかりでしたけど、今日はトレイ先輩と一緒の目線なので。ちょっと近くなった感じがします」
そう微笑むと、トレイ先輩も口元を緩ませた。
「ああ、確かに。お前との距離が近くなったと思えば、これも悪くないのかもな。……こんなことも、できるわけだし」
にぃ、と瞳が細められたかと思えば、次の瞬間にはトレイ先輩の唇へと顔が引き寄せられていた。いつもなら、トレイ先輩が屈むまでの間に目ぐらいは閉じることができた。しかし、相手の顔との距離が近い今、瞳を閉じることさえ叶わなず、いつのまにか上へずらされた眼鏡とトレイ先輩の得意げな目を交互に見つめる他なかった。
妙に響くリップ音の後、呆然とする私へトレイ先輩はこう続けた。
「確かに、お前を安心させることも恋人としては重要だと思うよ。でも、それだけなら友達でもできるだろ?」
俺はお前に、恋人として意識してもらいたいだけなんだよ。
そうも熱っぽい視線で見つめられては、否応無しに意識せざるおえない。ばくばくと一つの挙動だけで忙しなく動く心臓が、それを物語っていた。
「もう一度、キスしていいか?」
眼鏡を外し、もう一度自分を見つめてくる恋人を見て、私はうなずくしかなかった。