twst夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
微かに扉の向こうから聞こえる靴音。それがあの人の物だと、今では簡単に察せるようになってしまった。まるで本当の犬みたいだ、と自嘲しつつも、私の足は玄関へと進んでゆく。ひた、ひたと歩むたび、床の大理石の冷たさが皮膚へと染み込んだ。やがて木製の大きい扉の前に立った時、精神の底から冷たさを感じた。
「もう、何ヶ月経ったのかな」
あの人が帰ってくる前に、そう呟いておいた。
◇
そして、扉の先から低く響いていた靴音が止まり、扉が開いた。
「お帰りなさい」
靴音の主であり、この家の持ち主でもあるあの人へ頭を下げる。モノクロに身を包んだその人は、私の態度に満足そうに笑った。
「ああ。今帰ったぞ」
随分とお利口になったな、と微笑むあの人に手招きされて、私は床へ膝をつく。そのまま上目遣いでその人を見上げると、やがてお互いの視線がかち合った。
「物欲しそうな目で見つめるのも結構だが、お前の口は飾りではないだろう?」
首に付けられた首輪をくい、と引っ張られて、少し息が詰まる。世間ではこれをチョーカーと呼ぶらしいが、私にとっては重みのある首輪に違いない。そんなものを付けられた私は、主人とも言えるこの人の言う通りにする他なかった。
「……今日もいい子に過ごすことができたので、褒めて、ください」
そう言ってから、三秒ほど経った時。私の頬を、革の手袋に包まれた指が撫でた。喉元から顎が包み込まれ、するりするりと撫でられている感覚に、私は身を任せた。手袋は先ほどまで外気に晒されていたこともあり、ひんやりとしている。
冷たい、でも悪くない。さっきはあんなにも冷たさに怯えていたのにも関わらず、そう感じている私がいた。
「次に、一つ確認しておこう」
「…何でしょうか」
「わかりきったことを聞くなと、何回か言ったはずだが。だが、今日は大目に見てやろう」
呆れた様子のあの人の口から、あの問いが流れた。
「今、お前の目の前にいるのは誰か、言ってみろ」
その一言を聞いた瞬間、ぞくり、と脊髄に直接触れられたような感覚がした。それは、目の前の人物との関係が、教師から主人へと変わってしまったことへの背徳感からだろうか。甘やかな躾によって絆された脳ではうまく理解できなかった。
ただ、それでも決まりきった答えをいうことぐらいはできるのだった。
「……デイヴィス・クルーウェル、私の、旦那様、です」
蕩けた声でそう言うと、その人は私の左手を救い上げ、薬指に口付ける。その瞬間、冷たい銀の輪っかにほんのりと熱が移った。この感覚は、いつも慣れないけれど、愛おしいものであった。
「…いい子だ。従順な女は嫌いじゃない」
そのまま、人間特有の愛に塗れたキスをした。
「もう、何ヶ月経ったのかな」
あの人が帰ってくる前に、そう呟いておいた。
◇
そして、扉の先から低く響いていた靴音が止まり、扉が開いた。
「お帰りなさい」
靴音の主であり、この家の持ち主でもあるあの人へ頭を下げる。モノクロに身を包んだその人は、私の態度に満足そうに笑った。
「ああ。今帰ったぞ」
随分とお利口になったな、と微笑むあの人に手招きされて、私は床へ膝をつく。そのまま上目遣いでその人を見上げると、やがてお互いの視線がかち合った。
「物欲しそうな目で見つめるのも結構だが、お前の口は飾りではないだろう?」
首に付けられた首輪をくい、と引っ張られて、少し息が詰まる。世間ではこれをチョーカーと呼ぶらしいが、私にとっては重みのある首輪に違いない。そんなものを付けられた私は、主人とも言えるこの人の言う通りにする他なかった。
「……今日もいい子に過ごすことができたので、褒めて、ください」
そう言ってから、三秒ほど経った時。私の頬を、革の手袋に包まれた指が撫でた。喉元から顎が包み込まれ、するりするりと撫でられている感覚に、私は身を任せた。手袋は先ほどまで外気に晒されていたこともあり、ひんやりとしている。
冷たい、でも悪くない。さっきはあんなにも冷たさに怯えていたのにも関わらず、そう感じている私がいた。
「次に、一つ確認しておこう」
「…何でしょうか」
「わかりきったことを聞くなと、何回か言ったはずだが。だが、今日は大目に見てやろう」
呆れた様子のあの人の口から、あの問いが流れた。
「今、お前の目の前にいるのは誰か、言ってみろ」
その一言を聞いた瞬間、ぞくり、と脊髄に直接触れられたような感覚がした。それは、目の前の人物との関係が、教師から主人へと変わってしまったことへの背徳感からだろうか。甘やかな躾によって絆された脳ではうまく理解できなかった。
ただ、それでも決まりきった答えをいうことぐらいはできるのだった。
「……デイヴィス・クルーウェル、私の、旦那様、です」
蕩けた声でそう言うと、その人は私の左手を救い上げ、薬指に口付ける。その瞬間、冷たい銀の輪っかにほんのりと熱が移った。この感覚は、いつも慣れないけれど、愛おしいものであった。
「…いい子だ。従順な女は嫌いじゃない」
そのまま、人間特有の愛に塗れたキスをした。